タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

71,バスカルヴィー一家

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「それでは皆様、ごゆるりとご堪能ください」

  バスカルヴィーさんは段を下りると、そのまままっすぐ私たちのところへ歩いてきた。どこから来たのか、いつの間にか屋敷の前で出迎えてくれた人たちもいる。

「バスカルヴィーさん、先に他の人に挨拶とかはしなくていいんですか?」
「ええ、大丈夫です。本日の主賓は皆様ですから」
「うーん……?」

  それは大丈夫な理由になるのかな……?  いくらなんでもぽっと出の私たちより、昔から関わってる人の挨拶を優先した方がいいんじゃないのかな。パーティーに呼ぶってことはある程度親交がある人だよね。

「では、私の家族をご紹介します。妻のテレジア、そして息子のオリバーと娘のマリアとアンナです」
「お初にお目にかかります。お噂はかねがね」
「こちらこそはじめまして、冒険者のアンジュです」

  オリバーさんが代表して挨拶してくる。歳は二十歳くらいかな?  切れ長の目に鼻筋の通ったメリハリのある顔。でもかっこいいというよりは美人な感じ。
  そしてオリバーさんの一歩後ろにテレジアさん、その一歩後ろにマリアさんとアンナさんって並んでるけど、三人ともそっくりだ。マリアさんは私と同い年くらいかな?  でもすごく大人っぽい。アンナさんは多分二、三個下だ。少し幼い感じは残ってるけど、兄妹の二人と同じようにテレジアさんに似てすごい綺麗。可愛さもある美人って破壊力凄まじいなあ。
  というか、テレジアさん若いなあ。正直年の離れた姉妹でも通じるんじゃないかな。マリアさんとアンナさんは女性だから余計に似てるって思ったけど、オリバーさんもテレジアさんに似てるなあ。兄妹全員お母さん似だ。テレジアさんの遺伝子強いな。

「アンジュ様が父を諌めてくださったと聞いております。父からは既に感謝を伝えているとは聞いていますが、改めてお礼を言わせてください。ありがとうございます」
「いやいや、私はただ占いをしただけですから……」
「どうかご謙遜なさらないでください。貴女が占ってくれたからこそ、夫は道を誤らずにいられたのですから」

  ふわりと微笑むテレジアさん。道を誤るとか、そんな大げさな……。でもここでまた否定しても、認めるまで延々とこのやりとりが続きそうだし、大人しく受け入れちゃった方がいいかな。

「お役に立てたのなら幸いです」

  私がそう言うと、テレジアさんが、すっ、と顔を近づけてきた。ふわっ、と花みたいな甘い香りが鼻をくすぐる。香水か何かかな。

「夫から聞かされていた通り、とても素敵な人ね。どうかしら、この後一緒にお話しません?  私聞きたいことが色々あるのよ」
「お母様、抜けがけはずるいです。私もお話したいことがあります」
「私もです!」

  おおう、なんだこれ。なんだかわからないけどテレジアさんたちが盛り上がり始めた。聞きたいこととかはよくわからないけど、これ捕まったら絶対長いやつだよね。

「大人気だね、アンジュ。ご一緒してきたら?」
「う、うん」

  気は進まないけどレベッカに退路を絶たれちゃったし、流石にこの様子を見て断るのはなあ……。

「では落ち着いた頃にまた伺います。その時に占って頂きたい方をお連れしますね。恐らくもうしばらく解放されないでしょうから」
「あ、はい。分かりました」
「それでは行きましょうアンジュ様。甘いものは好きかしら、口に合うといいのだけれど」
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