黒沢さんと相澤さん

くま

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#4 土曜日

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せっかくの休みなのに何も手につかない。









-----------











昨日の相澤さんとの校舎裏でのキスが
脳裏にこびりついて離れない。
唇の感触も、相澤さんの甘い香水の匂いも。


この気持ちってなんだ??






「はぁ。」


今日は土曜日。
外の気温は32℃。
私はキンキンに冷えた部屋でベットに横たわっている。


目を閉じると浮かんでくる相澤さんの顔。


「ん~~~」





昨日、あれから私たちは一言も言葉は交わさず
お互い教室に戻った。
千鶴にめちゃくちゃ心配されたけど
相澤さんと一緒にいた事もキスした事も言ってない。




「…何やってんだろ、私」





あの時キスしたのは正解だったのだろうか?
それともキスなんてするべきじゃなかった??
友達になろうって言い出したのは私なのに
キスなんて友達とするもんじゃないじゃん、、、



この3日間色々と濃すぎて
処理しきれない。



「うがあああああ」


枕に顔を埋めて叫んでいると
部屋のドアが勢いよく開いて
母親の元気な声が部屋に響く。




「コラ!春!何時まで寝てるの!」

「…寝てないよ。
てか、ノックしてくれぇ~~」


「まったく、せっかくの休みなのに部屋にこもって!
健全な高校生は元気よく外へ駆り出しなさい!」


そう言って母親は私のお尻を勢いよく叩く。

パシンッ

「いでっ!!」

本当に最近痛い思いしかしてなくて泣きそう。



「昨日もケンカして帰って来たかと思えば
ご飯も食べないですぐ部屋にこもるんだから!!
何!?また、反抗期再来ですか!?お母さん泣くわよ!?」


「…そんなんじゃないって」

「全くもう。
ほら、ご飯出来てるから食べちゃいなさい!」

お母さんはそう言ってリビングへと戻っていった。

「…はぁ。」





私は重い腰をあげて、部屋からでる。
1階のリビングからはパンの焼けたいい匂いがする。




(相澤さん、なにしてんだろ)





また考えるのは相澤さんの事ばかり。
私は相澤さんの事が好きなのだろうか?
これって恋なの????











------------








リビングで朝食兼昼食を食べて
テレビを見ながらぼーっとしてると
携帯が鳴った。







(……千鶴からだ)



私は嫌な予感がしたけど
親友からの電話なので出る事にした。


『……もしもし』

『あ!出た!ハル今何してんのー??』

『何もしてないけど何の用だよ、、、』

『久しぶりに走りに行こーぜっ!』

嫌な予感は的中しました。

『は!?この暑い中わざわざなんで
走らなきゃいけなーーーー』

『じゃ!よろしく!
あと10分くらいでハルの家の前着くから!!』


『ちょ、待て!行くって言ってなーーー』

ブチッ

ツーツーツー



切りやがった。
有無を言わさず切りやがった。



まじかよ。
こんな灼熱の中走るとかどんな罰ゲームだよ、、、
昨日のケンカであちこち痛いって言うのに、、、、




千鶴がこうなったらもうどうしようもない。
私が行くまで外でずっと待っているだろう。
あいつはそういうやつだ。


「あー、、まじかよ」


私は電話に出た事を後悔するのであった。




まあ、でも何も考えないで
無心になりたい気分だし丁度良かったのかもしれない。















走りやすい格好に着替えてランニングシューズを
履いていると母親に話しかけられる。




「あら、珍しい
走りにいくの???」

「…千鶴が走りに行こうって」

「あら、いいじゃない!」

「良くないよっ!!!!!」

「あははっ、しっかり水分は摂るのよ~」

「うん。」

「若いっていいわねぇ~!!!
お母さんは昼ドラ見ながらクーラーの効いた
部屋でのんびりするわ~」

「くっ」

おほほほ~と笑いながらリビングに
さっさと戻っていく母親。



(けっ。人の気も知らないで)



心の中で悪態着いていると
玄関のインターホンが鳴り
外からでかい声で千鶴が叫んでる。




「はーるーちゃーん
あーそーぼーーー!!!」

「うるせえええええ」


私は玄関のドアを勢いよく開けて
叫び返す。





「あははっ!ほら!時間は有限だ!
さっさと行くぞ!!」



「あーーもう!
こうなったらヤケクソじゃ!!!」



私たちは川原に向かって走りだした。







---------------










別に走っている間特に話したりはしない。
ただ、ひたすら走る。
走って走って、信号待ちで呼吸を整えて
また、走る。




この繰り返しだ。
川原の土手沿いをしばらく真っ直ぐ行くと
左側に少し大きい公園が見えてくるので
そこまで行くことにした。







暑い。汗が流れ落ちる。
でも気持ちいい。





「先に公園着いた方が勝ちな」

「は??」


「負けた方は飲み物奢り」


千鶴はそう言って走るスピードをあげる。


「あ!ちょ!千鶴!抜け駆けすんな!」


私も走るスピードをあげた。
絶対負けん!!

















女2人が勢いよく走ってきて
公園に駆け込む姿は
傍から見れば何事だよって思うよね。



「「…はぁ、はぁ…」」



「ハ、、ハル
相変わらず、足、早すぎ、、、」


「…はぁ、はぁ。私の勝ちだな
飲み物よろしく」


「…くっ」

 







私達は呼吸を整えて
自販機へ向かう。

自販機へ向かう途中

空を見上げると今日も憎たらしい程に快晴で
辺りからは子供たちの元気な声とセミの鳴き声が聞こえる。




「…相澤さん、今頃なにやってんのかなぁ」



「ん?何か言った???」

「…なんでもなーい」







危ない無意識に口に出てた。







「てかさー、顧問がーーーー」

「んー、うん」

「それでさーーーー」

「んー」










結局、何をしていても考えるのは相澤さんの事ばかりで
千鶴に話しかけられているけど、半分は頭に入ってきてなくてうわの空状態で相槌をする。


ごめん、千鶴。









あー相澤さんに会いたい。






私はベンチに腰掛けながら
空を見上げて相澤さんの事ばかり考える






そんな暑い暑い夏の昼下がり






______続く
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