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眠りの姫2
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「……ディアルト。今すぐの話ではない。色んなことが落ち着いたら、王座に座るつもりはないか?」
カダンに言われ、ディアルトは曖昧に微笑む。そんな甥を勇気づけるように、カダンは更に言葉を重ねた。
「私には王としての資質がないと自覚しての提案でもある。元より私は兄上の補佐をしている時、一番能力を発揮できたと思っている。ディアルトは兄上の血を受け継いで、人を率いる能力がある。もし私にその補佐をさせてもらえるのなら、持てる力を遺憾なく発揮して支えたい」
仮にも現在王座に座っている人間が、自ら身を引いて補佐をしたいと言っている。
普通なら、叔父である男性が言うべき言葉ではないだろう。
だがカダンがそう言うのは、自分が王に向いていないというだけではない。ウィンドミドルという国のため、最良の選択を考えてのことだ。
カダンの言葉に対し、ディアルトは少しの間考えるように沈黙していた。
メインの肉を食べ終え、口直しの水を飲んで一言告げる。
「……お言葉通り、現在のゴタゴタが落ち着いた頃になったら、腰を据えて考えます。今はウィンドミドルの騎士や兵たちをねぎらうこと、国境近くの疲弊した町や村へのケア。戦争で傾いた財政を立て直し、ファイアナとのしっかりとした友好の基盤。それらが大事です。あと、個人的な事を申し上げれば、もし私が即位する時には必ずリリアンナが側にいて欲しいと思っています」
しっかりと現状を考えていることを述べ、最後にディアルトが口にしたのはやはりリリアンナのことだった。
「……リリアンナはまだ目覚めないの?」
自らがリリアンナの第一のファンだと思っているナターシャは、彼女の現状を思うと急に憂い顔になる。
「彼女の精霊は、少しずつ活発さを増しているけれどね。一度すべての精霊を手放す覚悟をし、命すらも俺に捧げようとしてくれた。その結果……。リリアンナは一瞬でも体から、精霊のほとんどを失うことになってしまった。俺も同じような状況になった五歳の時、昏倒して寝込んでしまった。でも彼女の場合、風の意志という大きすぎる力を一気に失ったから、その反動が強いんだろう」
リリアンナは現在、花の離宮で昏々と眠り続けている。
生気は失っておらず、肌つやもいい。
今にも寝言を言って浅い睡眠から覚醒しそうに見えるが、その状態がもう三か月続いている。
今日目覚めるか、明日目覚めるかと思いながら、ディアルトは暇さえあればリリアンナの所に通っていた。
「……ディアルト。彼女が目覚めて落ち着いたら、ディアルトの戴冠式と結婚式の準備をしよう」
カダンの声に、ディアルトは嬉しそうに表情を緩める。
「はい。リリアンナも今度こそ、俺の求婚に応えてくれると思っています」
「本当を言えば、リリアンナこそが終戦のきっかけを作ってくれた功労者だしな」
バレルが言い、謁見の間で堂々と王妃に逆らい声を上げたリリアンナを思い出す。
「リリアンナはディアルト兄様を想うあまり、運命に逆らってまで戦地に駆けつけようとしたんだわ。愛があってこそよ……」
ナターシャがうっとりとした顔で妄想を膨らませている。
「年齢的にディアルトの補佐は父上や兄様がするとして。ディアルトとリリアンナの子供がもし男子だったら、僕が見守りたいな」
気の早いオリオが子供の話をし、ディアルトが笑う。
「そう……なったらいいな、オリオ。リリアンナ、早く目覚めてくれないかな。世の中はもう彼女が願っていた通り、平和な世になろうとしているんだから」
「リリアンナが目覚めたら、また皆で食事をしよう。彼女が好きな鴨肉も、いつも用意しておく」
カダンの言葉にディアルトは感謝し、それにシアナも微笑んでいた。
カダンに言われ、ディアルトは曖昧に微笑む。そんな甥を勇気づけるように、カダンは更に言葉を重ねた。
「私には王としての資質がないと自覚しての提案でもある。元より私は兄上の補佐をしている時、一番能力を発揮できたと思っている。ディアルトは兄上の血を受け継いで、人を率いる能力がある。もし私にその補佐をさせてもらえるのなら、持てる力を遺憾なく発揮して支えたい」
仮にも現在王座に座っている人間が、自ら身を引いて補佐をしたいと言っている。
普通なら、叔父である男性が言うべき言葉ではないだろう。
だがカダンがそう言うのは、自分が王に向いていないというだけではない。ウィンドミドルという国のため、最良の選択を考えてのことだ。
カダンの言葉に対し、ディアルトは少しの間考えるように沈黙していた。
メインの肉を食べ終え、口直しの水を飲んで一言告げる。
「……お言葉通り、現在のゴタゴタが落ち着いた頃になったら、腰を据えて考えます。今はウィンドミドルの騎士や兵たちをねぎらうこと、国境近くの疲弊した町や村へのケア。戦争で傾いた財政を立て直し、ファイアナとのしっかりとした友好の基盤。それらが大事です。あと、個人的な事を申し上げれば、もし私が即位する時には必ずリリアンナが側にいて欲しいと思っています」
しっかりと現状を考えていることを述べ、最後にディアルトが口にしたのはやはりリリアンナのことだった。
「……リリアンナはまだ目覚めないの?」
自らがリリアンナの第一のファンだと思っているナターシャは、彼女の現状を思うと急に憂い顔になる。
「彼女の精霊は、少しずつ活発さを増しているけれどね。一度すべての精霊を手放す覚悟をし、命すらも俺に捧げようとしてくれた。その結果……。リリアンナは一瞬でも体から、精霊のほとんどを失うことになってしまった。俺も同じような状況になった五歳の時、昏倒して寝込んでしまった。でも彼女の場合、風の意志という大きすぎる力を一気に失ったから、その反動が強いんだろう」
リリアンナは現在、花の離宮で昏々と眠り続けている。
生気は失っておらず、肌つやもいい。
今にも寝言を言って浅い睡眠から覚醒しそうに見えるが、その状態がもう三か月続いている。
今日目覚めるか、明日目覚めるかと思いながら、ディアルトは暇さえあればリリアンナの所に通っていた。
「……ディアルト。彼女が目覚めて落ち着いたら、ディアルトの戴冠式と結婚式の準備をしよう」
カダンの声に、ディアルトは嬉しそうに表情を緩める。
「はい。リリアンナも今度こそ、俺の求婚に応えてくれると思っています」
「本当を言えば、リリアンナこそが終戦のきっかけを作ってくれた功労者だしな」
バレルが言い、謁見の間で堂々と王妃に逆らい声を上げたリリアンナを思い出す。
「リリアンナはディアルト兄様を想うあまり、運命に逆らってまで戦地に駆けつけようとしたんだわ。愛があってこそよ……」
ナターシャがうっとりとした顔で妄想を膨らませている。
「年齢的にディアルトの補佐は父上や兄様がするとして。ディアルトとリリアンナの子供がもし男子だったら、僕が見守りたいな」
気の早いオリオが子供の話をし、ディアルトが笑う。
「そう……なったらいいな、オリオ。リリアンナ、早く目覚めてくれないかな。世の中はもう彼女が願っていた通り、平和な世になろうとしているんだから」
「リリアンナが目覚めたら、また皆で食事をしよう。彼女が好きな鴨肉も、いつも用意しておく」
カダンの言葉にディアルトは感謝し、それにシアナも微笑んでいた。
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