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窮地――継承される意志2
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「……あ……。あ……。でん……」
――何かの冗談ではないか?
そう思う自分がいたが、もう一人の自分が赤い血を見て「現実だ」と首を振る。
――どうしてこんなに矢が刺さってる?
自分を庇ったにしては、刺さりすぎている。おまけに自分はちゃんと障壁を張っていたはずだ。
「え……っ?」
急に膝に力が入らなくなった気がして、リリアンナはその場に膝をついた。
「やっと薬が効いたみたいだ! 野生の虎みたいな体力の女だな」
「ファイアナの人間に効果が現れるのはもっと遅いから、後は陛下と将軍だけだ!」
刺客の声が聞こえ、まだ理解していないリリアンナは自分の視界に荒野の大地が映り込んでいるのが理解できない。
いつの間にか指先まで痺れ、動くかどうか確かめるために力を入れると、ほんの少し地面を掻いた。
(……こんな所で、私は終わるの? 殿下をお守りしきれず? 母の無念を晴らせずに?)
「く……っ」
知らずと目から大粒の涙が流れ、リリアンナは渾身の力を振り絞って地を這いずっていた。
涙で歪んだ視界に、ハリネズミのようになってしまったディアルトが映っている。
(いつの間にか薬で集中力が乱され……、障壁に隙ができていた……? それを殿下が……)
最初はディアルトも防具で庇おうとしていたのか、特に腕に集中した矢が酷かった。
「でん……か……」
周囲で爆発が起き、刺客たちの悲鳴が聞こえる。
カンヅェルとアドナの怒号が聞こえ、天幕が燃える音と鼻につく臭いがする。
ディアルトの肩に触れて力を入れると、彼の体が力なく揺れた。その口から「くふっ」と息が漏れる音がする。
「……リリ……ィ、君だけでも……逃げて」
血で濡れた唇が微かに動き、轟音が聞こえる場だというのに、なぜかディアルトの声が鮮明に聞こえた。
それにリリアンナはかぶりを振り、何とか懸命に精霊に助けを乞う。
けれど集中できない現状では、彼らとて力を貸したくても動けない。
リリアンナの血が失われ、体力が奪われると同時に精霊も離れていってしまう。気力と願いで留めていた精霊は、行使する意志がなければ自然に還ってしまう。
――『あの日』母もこんな気持ちだったのだろうか。
――目の前で大切な人が命を失おうとしているのに、守り切ることができなかった。
――守りたいのに。
リリアンナの手がディアルトの手に重なり、温もりを求めるように握る。
けれど体に回った毒のせいか、思いきり握ることができなかった。
それに応えようとするディアルトの手も、ごく弱々しい。
悔しくて、悲しくて、リリアンナの目から次から次に涙が零れてゆく。
カンヅェルは頭のいい王で、本当に戦争を終わらせようとしてくれていた。
沈黙を守っていたアドナもやっと真実を話してくれて、これから両国がどう動けばいいのかやっと分かったところだったのに――。
「でん……か」
舌が痺れてうまく話せない。
こんな私を好きだと言ってくれた殿下に、ちゃんと素直に返事をしておけばよかった。
バラの本数が持つ意味まで調べてくれた殿下に、もっとロマンチックな言葉や態度を返しておけばよかった。
三百六十五本の野バラの次は、何があるのか聞いておけば良かった。
「私も好きです。あなたと結婚したいです」と伝えたかった。
弟を連れ帰って、父の目の前でウエディングドレスを着たかった。
次々に想いが溢れ、涙と共に流れてゆく。
背中に負った傷からか、体は温かな熱に包まれていた。
――いや、違う。
リリアンナと契約していた精霊たちが、彼女の元を惜しみながら離れようとしている。
彼女よりももっと、強い『意志』の元へ集おうとしていた。
**
もう薄くなった意識の中で、ディアルトは懐かしい顔を前にしていた。
目の前に立っているのは、父ウィリアとリーズベット。
亡くなったはずの二人が、微笑んでディアルトの目の前に立っていた。
『こんなことになってすまない』
ウィリアが悲しそうに言い、傷ついたような笑みを浮かべる。
「いいえ、そんなことはありません」
そう言おうとしたが、ディアルトの唇から言葉が発せられることはなかった。
けれど二人には彼の想いが伝わったようで、二人は悲しさの残る笑顔を浮かべる。
『あの日私は、お前に継承されるはずの風の意志を、リーズベットに譲ってしまった。あの場にいた私の最大の理解者に、どうしても助かって欲しいと思ってしまったのだ』
「……それは仕方のないことだと思います。父上は俺や母上を愛してくださいましたが、それとはまた別の気持ちで、リーズベットさんを大事にしていましたから」
やはりディアルトの声は言葉にならない。
『陛下から風の意志を受け取った私は、当たり前ですが……。あの大きな力に巻き込まれて死にました。ですがその力は、私が強く守りたいと思うリリアンナの元へ辿り着きました』
リーズベットの言葉に、ディアルトの意識は笑う。
「そうだと思っていました。五歳になるまで俺は神童と言われ、次の風の意志に選ばれる者だと言われていました。けれどリリアンナが生まれ、俺の力はすべて彼女に吸い取られていった。風は予知する力。次の力の発生源をあらかじめ見据え、そこに吹き溜まっているものです。十歳になるぐらいには、次の風の意志はリリアンナなのだと理解していました」
『リリアンナが生まれた時、私はまだ未来の自分が死ぬと知りません。ただ自分の娘になぜこんな強い印があったのか、不思議でなりませんでした。陛下が私を気にかけてくださり、だからリリアンナにも加護があるのかと……。そう思っていたのですが……』
意識の世界だからか、ウィリアもリーズベットもどこか実態のない雰囲気だった。
リーズベットの金髪の縁は、緩い煙のようになり揺らめいている。
ウィリアのマントも音のない風に吹かれ、煙のようになびいていた。
『精霊は我ら人よりもずっと先を視る。八年後に私とリーズベットがいなくなるのを見越して、精霊はリリアンナを庇護していた。私がリーズベットを大切に思う気持ち、リーズベットがリリアンナを大切に思う気持ち。それは先んじて伝わり、リリアンナに器を作っていった』
不可視の精霊たちが、未来を読み取ってリリアンナを大切にしていた。
精霊たちはウィリアの没後、意志の担い手がリリアンナになることを前もって知っていた。
ウィリアの息子として生まれたディアルトは、当たり前のように意志の担い手となる器を持っている。
本来なら彼がいま担い手になっていただろう。
けれどウィリアが死ぬ時、彼は「リーズベットを救って欲しい」と願ってしまった。
それが運命をねじまげ、次の担い手がリリアンナになるという現実を生んでしまったのだ。
『リリアンナは今、自分のすべてを擲(なげう)ってもいいから殿下を助けて欲しいと願っています。それに、精霊も応えようとしています』
リーズベットの言葉に、ディアルトはギクリとした。
自分の側にいたはずのリリアンナを見ようとしても、体は動かせず視界も動かない。
これは『強制的に見せられている父とリーズベットの幻影』なのだと理解した。
『ディアルト、お前はこれから風の意志の担い手となる。継承された時だけ、精霊たちは奇跡の力をふるう。傷はすべて治り、一瞬だけこの世で無敵の存在になるだろう。どうかその力を、正しいことのために使ってくれ』
ウィリアの声が不意に遠くなり、彼の姿も薄くなってゆく。
『殿下。どうか娘を頼みます。夫も子供たちも、愛していると……』
リーズベットの声も遠くなり、すべてが白い霧に包まれてゆく。
ディアルトの意識も真っ白に塗りつぶされたと思った時――、その『白』の中にキラキラと光る金の粒子が現れ、舞ってゆく。
意識を集中させると、『それ』は精霊だった。
ディアルトの金色の目に反応し、風の精霊が姿を見せ喜んでいる。
彼の意識奥深くまで入り込む精霊たちは、ディアルトの精神も体も沸き立つような喜びで満たしてゆく。
――あぁ、これは――。
――何かの冗談ではないか?
そう思う自分がいたが、もう一人の自分が赤い血を見て「現実だ」と首を振る。
――どうしてこんなに矢が刺さってる?
自分を庇ったにしては、刺さりすぎている。おまけに自分はちゃんと障壁を張っていたはずだ。
「え……っ?」
急に膝に力が入らなくなった気がして、リリアンナはその場に膝をついた。
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「ファイアナの人間に効果が現れるのはもっと遅いから、後は陛下と将軍だけだ!」
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いつの間にか指先まで痺れ、動くかどうか確かめるために力を入れると、ほんの少し地面を掻いた。
(……こんな所で、私は終わるの? 殿下をお守りしきれず? 母の無念を晴らせずに?)
「く……っ」
知らずと目から大粒の涙が流れ、リリアンナは渾身の力を振り絞って地を這いずっていた。
涙で歪んだ視界に、ハリネズミのようになってしまったディアルトが映っている。
(いつの間にか薬で集中力が乱され……、障壁に隙ができていた……? それを殿下が……)
最初はディアルトも防具で庇おうとしていたのか、特に腕に集中した矢が酷かった。
「でん……か……」
周囲で爆発が起き、刺客たちの悲鳴が聞こえる。
カンヅェルとアドナの怒号が聞こえ、天幕が燃える音と鼻につく臭いがする。
ディアルトの肩に触れて力を入れると、彼の体が力なく揺れた。その口から「くふっ」と息が漏れる音がする。
「……リリ……ィ、君だけでも……逃げて」
血で濡れた唇が微かに動き、轟音が聞こえる場だというのに、なぜかディアルトの声が鮮明に聞こえた。
それにリリアンナはかぶりを振り、何とか懸命に精霊に助けを乞う。
けれど集中できない現状では、彼らとて力を貸したくても動けない。
リリアンナの血が失われ、体力が奪われると同時に精霊も離れていってしまう。気力と願いで留めていた精霊は、行使する意志がなければ自然に還ってしまう。
――『あの日』母もこんな気持ちだったのだろうか。
――目の前で大切な人が命を失おうとしているのに、守り切ることができなかった。
――守りたいのに。
リリアンナの手がディアルトの手に重なり、温もりを求めるように握る。
けれど体に回った毒のせいか、思いきり握ることができなかった。
それに応えようとするディアルトの手も、ごく弱々しい。
悔しくて、悲しくて、リリアンナの目から次から次に涙が零れてゆく。
カンヅェルは頭のいい王で、本当に戦争を終わらせようとしてくれていた。
沈黙を守っていたアドナもやっと真実を話してくれて、これから両国がどう動けばいいのかやっと分かったところだったのに――。
「でん……か」
舌が痺れてうまく話せない。
こんな私を好きだと言ってくれた殿下に、ちゃんと素直に返事をしておけばよかった。
バラの本数が持つ意味まで調べてくれた殿下に、もっとロマンチックな言葉や態度を返しておけばよかった。
三百六十五本の野バラの次は、何があるのか聞いておけば良かった。
「私も好きです。あなたと結婚したいです」と伝えたかった。
弟を連れ帰って、父の目の前でウエディングドレスを着たかった。
次々に想いが溢れ、涙と共に流れてゆく。
背中に負った傷からか、体は温かな熱に包まれていた。
――いや、違う。
リリアンナと契約していた精霊たちが、彼女の元を惜しみながら離れようとしている。
彼女よりももっと、強い『意志』の元へ集おうとしていた。
**
もう薄くなった意識の中で、ディアルトは懐かしい顔を前にしていた。
目の前に立っているのは、父ウィリアとリーズベット。
亡くなったはずの二人が、微笑んでディアルトの目の前に立っていた。
『こんなことになってすまない』
ウィリアが悲しそうに言い、傷ついたような笑みを浮かべる。
「いいえ、そんなことはありません」
そう言おうとしたが、ディアルトの唇から言葉が発せられることはなかった。
けれど二人には彼の想いが伝わったようで、二人は悲しさの残る笑顔を浮かべる。
『あの日私は、お前に継承されるはずの風の意志を、リーズベットに譲ってしまった。あの場にいた私の最大の理解者に、どうしても助かって欲しいと思ってしまったのだ』
「……それは仕方のないことだと思います。父上は俺や母上を愛してくださいましたが、それとはまた別の気持ちで、リーズベットさんを大事にしていましたから」
やはりディアルトの声は言葉にならない。
『陛下から風の意志を受け取った私は、当たり前ですが……。あの大きな力に巻き込まれて死にました。ですがその力は、私が強く守りたいと思うリリアンナの元へ辿り着きました』
リーズベットの言葉に、ディアルトの意識は笑う。
「そうだと思っていました。五歳になるまで俺は神童と言われ、次の風の意志に選ばれる者だと言われていました。けれどリリアンナが生まれ、俺の力はすべて彼女に吸い取られていった。風は予知する力。次の力の発生源をあらかじめ見据え、そこに吹き溜まっているものです。十歳になるぐらいには、次の風の意志はリリアンナなのだと理解していました」
『リリアンナが生まれた時、私はまだ未来の自分が死ぬと知りません。ただ自分の娘になぜこんな強い印があったのか、不思議でなりませんでした。陛下が私を気にかけてくださり、だからリリアンナにも加護があるのかと……。そう思っていたのですが……』
意識の世界だからか、ウィリアもリーズベットもどこか実態のない雰囲気だった。
リーズベットの金髪の縁は、緩い煙のようになり揺らめいている。
ウィリアのマントも音のない風に吹かれ、煙のようになびいていた。
『精霊は我ら人よりもずっと先を視る。八年後に私とリーズベットがいなくなるのを見越して、精霊はリリアンナを庇護していた。私がリーズベットを大切に思う気持ち、リーズベットがリリアンナを大切に思う気持ち。それは先んじて伝わり、リリアンナに器を作っていった』
不可視の精霊たちが、未来を読み取ってリリアンナを大切にしていた。
精霊たちはウィリアの没後、意志の担い手がリリアンナになることを前もって知っていた。
ウィリアの息子として生まれたディアルトは、当たり前のように意志の担い手となる器を持っている。
本来なら彼がいま担い手になっていただろう。
けれどウィリアが死ぬ時、彼は「リーズベットを救って欲しい」と願ってしまった。
それが運命をねじまげ、次の担い手がリリアンナになるという現実を生んでしまったのだ。
『リリアンナは今、自分のすべてを擲(なげう)ってもいいから殿下を助けて欲しいと願っています。それに、精霊も応えようとしています』
リーズベットの言葉に、ディアルトはギクリとした。
自分の側にいたはずのリリアンナを見ようとしても、体は動かせず視界も動かない。
これは『強制的に見せられている父とリーズベットの幻影』なのだと理解した。
『ディアルト、お前はこれから風の意志の担い手となる。継承された時だけ、精霊たちは奇跡の力をふるう。傷はすべて治り、一瞬だけこの世で無敵の存在になるだろう。どうかその力を、正しいことのために使ってくれ』
ウィリアの声が不意に遠くなり、彼の姿も薄くなってゆく。
『殿下。どうか娘を頼みます。夫も子供たちも、愛していると……』
リーズベットの声も遠くなり、すべてが白い霧に包まれてゆく。
ディアルトの意識も真っ白に塗りつぶされたと思った時――、その『白』の中にキラキラと光る金の粒子が現れ、舞ってゆく。
意識を集中させると、『それ』は精霊だった。
ディアルトの金色の目に反応し、風の精霊が姿を見せ喜んでいる。
彼の意識奥深くまで入り込む精霊たちは、ディアルトの精神も体も沸き立つような喜びで満たしてゆく。
――あぁ、これは――。
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