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結婚式
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東京に戻って秀真に母の無事を伝え、また日々を過ごす。
衣装合わせや料理、招待客、引き出物などの最終確認をするうちに、二週間はあっという間に過ぎてしまった。
会場となる千代田区のホテルは、以前から瀬ノ尾家が御用達にしているらしい。
花音はハートネックのウエディングドレスを纏う。
胸元にはびっしりと刺繍が施され、腰から裾に向かって縦にレースの刺繍が広がってゆくデザインだ。
憧れていたので裾を引きずるタイプにし、両腕には白いロンググローブをはめている。
この日のために、春枝から真珠とダイヤモンドでできたアクセサリーを譲り受けた。
巻いて纏めた髪に、プリンセスのようなティアラが飾られる。
そして首元にはゴージャスな煌めきのネックレスが下がり、耳元には大粒のダイヤモンドが光る。
ドレスも早い段階からオーダーメイドで作ってもらい、全身で幾らするか分からず前撮りの時も緊張してしまった。
リハーサルをしたあと、控え室で家族や従姉妹たちと話したり記念撮影しているうちに、時間が迫った。
母にヴェールダウンされたあと、ウエディングプランナーに誘導され、花音はチャペルに向かう。
チャペルの扉前にはタキシードを着た父が立っていて、感慨深そうに花音を見る。
父は何か言いたげな表情をしていたが、何も言わずエスコートの腕を差し出してきた。
やがてチャペルの中からパッヘルベルの『カノン』が聞こえ、扉が開かれた。
正面に十字架が見え、柔らかな明かりがチャペル内を照らしている。
父にエスコートされ、ヴァージンロードを進む中、チラリとオルガン奏者を見れば、そこにはオルガニストとして洋子が座り、孫のために祝福の音色を奏でていた。
――お祖母ちゃん……!
初まりは、祖母の死からだった。
葬儀に遅刻してしまった自分が情けなく、後悔してもしきれない時に、祖母からの手紙を開いた。
梨理の思い入れがあるピアノの存在を知り、最初は半信半疑だったものの、実際にピアノを弾いて時を跳んだ。
それからは、秀真と出会い彼と幸せになるために必死になった半年間だった。
実際はもう一度〝やり直し〟をしたので、もっと長い時間に思えた気がする。
今は、梨理が自分に与えてくれたチャンス、奇跡に心から感謝している。
何をすれば彼女への恩返しになるかいまだ分からないけれど、彼女に誇れるよう堂々と胸を張って幸せになりたいと思っていた。
祭壇の前でシルバーのタキシードに身を包んだ秀真と、ヴェール越しに目が合った。
幸せと心地いい緊張に包まれたまま、梨理は牧師の言葉を聞き賛美歌を歌った。
オルガンの音色を聴くたびに、祖母が自分たちの結婚式の一端を担ってくれているのが堪らなく嬉しくなる。
そして牧師に問いかけられた言葉に、花音は責任と強い意志を持ってハッキリ応えた。
「誓います」
隣で秀真が微笑んでくれたのが分かった気がする。
それからこの日のために秀真がオーダーメイドで頼んでくれた結婚指輪を交換し、彼が花音のヴェールを厳かに上げた。
二人の視線が交わされ、どちらからともなく微笑み合う。
秀真の顔が傾き、花音も顔を上向けて目を閉じた。
チャペルの中で祭壇近くは天井がドーム状になっているため、目を閉じているとまるでオルガンの音色が真上から降り注いでくるように感じられた。
目を閉じたまな裏に、外から差し込む光がステンドグラスに反射し、七色に光っているのも分かる気がする。
永遠とも思える一瞬が終わったあと、二人は目を開け唇を離してまた微笑み合った。
誓約書にサインをし、牧師が二人が夫婦になった宣言をしたあと、閉式となり二人はフラワーシャワーが降り注ぐなか笑顔でチャペルをあとにした。
そのあとの披露宴も、夢のような心地のままあっという間に時間が過ぎ去った。
花音はお色直しで、鮮やかなリラ色のドレスを纏った。
元々花音がピンクや、ピンクに近い紫色を好んだ事もある上、二人が札幌で出会った時にライラックが咲き誇っていたのが印象的だったからだ。
胸元にはピンク、白、青みがかった紫の小花の刺繍が施され、ウエストから裾に向かっても、チュールにライラックとも藤とも思えるデザインで、小花が零れ落ち咲いているように刺繍が施されていた。
余興ではワンピースに着替えた洋子が優雅にお辞儀をし、披露宴会場に特別に搬入してもらったグランドピアノを演奏してくれた。
衣装合わせや料理、招待客、引き出物などの最終確認をするうちに、二週間はあっという間に過ぎてしまった。
会場となる千代田区のホテルは、以前から瀬ノ尾家が御用達にしているらしい。
花音はハートネックのウエディングドレスを纏う。
胸元にはびっしりと刺繍が施され、腰から裾に向かって縦にレースの刺繍が広がってゆくデザインだ。
憧れていたので裾を引きずるタイプにし、両腕には白いロンググローブをはめている。
この日のために、春枝から真珠とダイヤモンドでできたアクセサリーを譲り受けた。
巻いて纏めた髪に、プリンセスのようなティアラが飾られる。
そして首元にはゴージャスな煌めきのネックレスが下がり、耳元には大粒のダイヤモンドが光る。
ドレスも早い段階からオーダーメイドで作ってもらい、全身で幾らするか分からず前撮りの時も緊張してしまった。
リハーサルをしたあと、控え室で家族や従姉妹たちと話したり記念撮影しているうちに、時間が迫った。
母にヴェールダウンされたあと、ウエディングプランナーに誘導され、花音はチャペルに向かう。
チャペルの扉前にはタキシードを着た父が立っていて、感慨深そうに花音を見る。
父は何か言いたげな表情をしていたが、何も言わずエスコートの腕を差し出してきた。
やがてチャペルの中からパッヘルベルの『カノン』が聞こえ、扉が開かれた。
正面に十字架が見え、柔らかな明かりがチャペル内を照らしている。
父にエスコートされ、ヴァージンロードを進む中、チラリとオルガン奏者を見れば、そこにはオルガニストとして洋子が座り、孫のために祝福の音色を奏でていた。
――お祖母ちゃん……!
初まりは、祖母の死からだった。
葬儀に遅刻してしまった自分が情けなく、後悔してもしきれない時に、祖母からの手紙を開いた。
梨理の思い入れがあるピアノの存在を知り、最初は半信半疑だったものの、実際にピアノを弾いて時を跳んだ。
それからは、秀真と出会い彼と幸せになるために必死になった半年間だった。
実際はもう一度〝やり直し〟をしたので、もっと長い時間に思えた気がする。
今は、梨理が自分に与えてくれたチャンス、奇跡に心から感謝している。
何をすれば彼女への恩返しになるかいまだ分からないけれど、彼女に誇れるよう堂々と胸を張って幸せになりたいと思っていた。
祭壇の前でシルバーのタキシードに身を包んだ秀真と、ヴェール越しに目が合った。
幸せと心地いい緊張に包まれたまま、梨理は牧師の言葉を聞き賛美歌を歌った。
オルガンの音色を聴くたびに、祖母が自分たちの結婚式の一端を担ってくれているのが堪らなく嬉しくなる。
そして牧師に問いかけられた言葉に、花音は責任と強い意志を持ってハッキリ応えた。
「誓います」
隣で秀真が微笑んでくれたのが分かった気がする。
それからこの日のために秀真がオーダーメイドで頼んでくれた結婚指輪を交換し、彼が花音のヴェールを厳かに上げた。
二人の視線が交わされ、どちらからともなく微笑み合う。
秀真の顔が傾き、花音も顔を上向けて目を閉じた。
チャペルの中で祭壇近くは天井がドーム状になっているため、目を閉じているとまるでオルガンの音色が真上から降り注いでくるように感じられた。
目を閉じたまな裏に、外から差し込む光がステンドグラスに反射し、七色に光っているのも分かる気がする。
永遠とも思える一瞬が終わったあと、二人は目を開け唇を離してまた微笑み合った。
誓約書にサインをし、牧師が二人が夫婦になった宣言をしたあと、閉式となり二人はフラワーシャワーが降り注ぐなか笑顔でチャペルをあとにした。
そのあとの披露宴も、夢のような心地のままあっという間に時間が過ぎ去った。
花音はお色直しで、鮮やかなリラ色のドレスを纏った。
元々花音がピンクや、ピンクに近い紫色を好んだ事もある上、二人が札幌で出会った時にライラックが咲き誇っていたのが印象的だったからだ。
胸元にはピンク、白、青みがかった紫の小花の刺繍が施され、ウエストから裾に向かっても、チュールにライラックとも藤とも思えるデザインで、小花が零れ落ち咲いているように刺繍が施されていた。
余興ではワンピースに着替えた洋子が優雅にお辞儀をし、披露宴会場に特別に搬入してもらったグランドピアノを演奏してくれた。
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