6 / 54
雨が近付けた距離2 ☆
しおりを挟む
柔らかい唇が額に温かな印をつけていった気がし、クレハは呆然として目の前のノアを見る。
「な……なに……」
「これは君が僕に恋をするまじないだ。恋をすると女性は綺麗になるらしい。そんな君を僕は見てみたいし、君が相手ならいい恋ができそうな気がする」
恋と言われてクレハはますます目を大きく瞠り、その朱唇はわなないてしばらくまともな言葉を発することができない。
「な……なな……、だってあなたさっき私と友人にって……、それに、あなた貴族でしょう?」
すっかりノアにかき乱され、混乱しているクレハは、涙目にすらなっていた。
だが、ノアもケロリとして引かない。
「だって僕は君に恋をした。君に好いてもらいたいと思うのは、当然じゃないか」
「すっ……好い……っ」
「まったく君は面白い人だね、当然のように生娘だろうね?」
「当たり前です!」
悪びれもしないノアの言葉にとうとうクレハは爆発して大きな声を出し、必死になってソファの端まで逃げる。
「な……っ、な、何なの!? あなた!」
「僕のことなら色々教えたじゃないか。僕はノア。初めて身内以外の者……それも人間の女性に脱がされて、そんな変わった女性に恋をした、普通の男だよ」
「う……、う、……うぅ」
急に目の前の年下の少年が一気に色気を帯びたような気がして、クレハは雰囲気に呑まれていた。
今まで男性に「魅力的」だとか「好き」だとか言われたことは皆無で、ましてやこんな風に迫られたことなどないのだ。
ほんの少しだけ衣服の上から触れられた胸は、まだその部分が熱を持ってジンジンしているような気がする。
(私……、どうしちゃったのかしら……)
そんなクレハの動揺などおかまいなしに、ノアはさらに距離を詰めてこようとする。
「君は? 僕のことどう思っている? 恋人になれそうかい?」
「そっ、それはっ……、そんっ、そそそそ……あのうっ」
まともに口がまわらないクレハの顎を固定し、ノアは琥珀色の目をスッと細めて顔を寄せた。
「僕を脱がせたお詫びに、君の唇をもらおうか」
そして先ほどクレハの額におりた唇は、今度こそ彼女の唇に柔らかく重なった。
「ん……」
唇にふにゅっと柔らかいものが触れて、それだけでクレハは自分の体の奥に知らない灯が灯ったのを感じた。
(――なに、これ……)
何度も重なるノアの唇はマシュマロのようにふわふわとしていて、クレハの唇をついばむ度に頭がクラクラする。
「ふぁ……あ、あ……、ん、む」
気が付けばクレハは鼻に掛かった声を出し、必死にノアに縋り付いていた。
と、唇の間からノアの舌がチロリと出て、クレハの唇の輪郭をなぞってゆく。
「――ひっ、あ、ぁ、……あ」
ゾクゾクとした感覚が全身をはしり、クレハは無意識に腰を左右に振ってそれを解消しようとしていた。
「おや、色っぽい腰つきだ」
「や、やぁ……」
目の前で妖艶に細められる琥珀色を見つめると、もうそこから目が離すことのできない魔法にかかってしまったようだ。
トロリとした蜂蜜にも似た色で、光り輝く小麦の穂のようにも思える。とても綺麗で、幻想的で、いつまでも見ていたくなる色。
次にノアはクレハの耳を食み、丸い耳の輪郭を舌先でチロチロと舐める。
「ふ……っ、あぁ!」
耳に吐息が入り込み、クレハの唇から大きな声が漏れた。
それに加え、ノアの指はクレハの胸の先端をコリコリといじり回す。刺激を受けて、クレハの先端はすぐにプクッと膨れてしまった。
「やぁ……っ、ん。や……っ」
愛撫というものを受けたことのないクレハは、自分が出す声に驚きつつも、それを制御することができない。
いつのまにかクレハの目は濡れて、次にどんな刺激をもらえるのか期待をまとっていた。
「……ふふ、僕の肌を見た代金は支払ってもらったよ」
が、ノアはそう言ってあっさりと体を離してしまった。あとには脳天をとろけさせたクレハが、脱力してのびている。
「そんなに気持ちよかったかい?」
先ほど取り上げられてしまった彼女の三つ編みをまた手に取ると、ポンポンと弄びながらクレハの顔を覗き込む。
「な……、なに、……いまの……」
「キスを知らないかい?」
「きす!」
そう叫んでクレハは弾かれたように起き上がり、自分の唇を押さえながらまだ赤い顔でノアを盗み見する。
「どうかな、これで僕に少しは興味を持ってもらえただろうか?」
「ずるい……」
先ほどはあの琥珀色の目に吸い込まれそうだったのに、今は恥ずかしくて顔を合わせることができない。
今までの生活から一転したこの日を、なんと名付けたらいいのだろう――?
そう思いながら、クレハはそのあともノアにちょっかいをかけられては、過敏な反応をみせていた。
やがて寝る時間になると、ノアはクレハの父が使っていた部屋に通され、そこで眠るようにと言われる。
「心細くないように、少しの間ランプを点けておくわね」
チェストの上に温かなランプの光があり、ドアの向こうへクレハのシルエットが去ってゆく。
「明日、朝ご飯を食べたらちゃんと帰るのよ? 私も母さんのお見舞いに行かないとならないから。おやすみなさい」
冷静さを取り戻した頭は、また母の事故を思って頭を悩ませているようだった。
静かにドアを閉め、足音を忍ばせて自分の部屋へ向かうクレハの気配を、ノアは目を閉じてじっと感じていた。
**
「な……なに……」
「これは君が僕に恋をするまじないだ。恋をすると女性は綺麗になるらしい。そんな君を僕は見てみたいし、君が相手ならいい恋ができそうな気がする」
恋と言われてクレハはますます目を大きく瞠り、その朱唇はわなないてしばらくまともな言葉を発することができない。
「な……なな……、だってあなたさっき私と友人にって……、それに、あなた貴族でしょう?」
すっかりノアにかき乱され、混乱しているクレハは、涙目にすらなっていた。
だが、ノアもケロリとして引かない。
「だって僕は君に恋をした。君に好いてもらいたいと思うのは、当然じゃないか」
「すっ……好い……っ」
「まったく君は面白い人だね、当然のように生娘だろうね?」
「当たり前です!」
悪びれもしないノアの言葉にとうとうクレハは爆発して大きな声を出し、必死になってソファの端まで逃げる。
「な……っ、な、何なの!? あなた!」
「僕のことなら色々教えたじゃないか。僕はノア。初めて身内以外の者……それも人間の女性に脱がされて、そんな変わった女性に恋をした、普通の男だよ」
「う……、う、……うぅ」
急に目の前の年下の少年が一気に色気を帯びたような気がして、クレハは雰囲気に呑まれていた。
今まで男性に「魅力的」だとか「好き」だとか言われたことは皆無で、ましてやこんな風に迫られたことなどないのだ。
ほんの少しだけ衣服の上から触れられた胸は、まだその部分が熱を持ってジンジンしているような気がする。
(私……、どうしちゃったのかしら……)
そんなクレハの動揺などおかまいなしに、ノアはさらに距離を詰めてこようとする。
「君は? 僕のことどう思っている? 恋人になれそうかい?」
「そっ、それはっ……、そんっ、そそそそ……あのうっ」
まともに口がまわらないクレハの顎を固定し、ノアは琥珀色の目をスッと細めて顔を寄せた。
「僕を脱がせたお詫びに、君の唇をもらおうか」
そして先ほどクレハの額におりた唇は、今度こそ彼女の唇に柔らかく重なった。
「ん……」
唇にふにゅっと柔らかいものが触れて、それだけでクレハは自分の体の奥に知らない灯が灯ったのを感じた。
(――なに、これ……)
何度も重なるノアの唇はマシュマロのようにふわふわとしていて、クレハの唇をついばむ度に頭がクラクラする。
「ふぁ……あ、あ……、ん、む」
気が付けばクレハは鼻に掛かった声を出し、必死にノアに縋り付いていた。
と、唇の間からノアの舌がチロリと出て、クレハの唇の輪郭をなぞってゆく。
「――ひっ、あ、ぁ、……あ」
ゾクゾクとした感覚が全身をはしり、クレハは無意識に腰を左右に振ってそれを解消しようとしていた。
「おや、色っぽい腰つきだ」
「や、やぁ……」
目の前で妖艶に細められる琥珀色を見つめると、もうそこから目が離すことのできない魔法にかかってしまったようだ。
トロリとした蜂蜜にも似た色で、光り輝く小麦の穂のようにも思える。とても綺麗で、幻想的で、いつまでも見ていたくなる色。
次にノアはクレハの耳を食み、丸い耳の輪郭を舌先でチロチロと舐める。
「ふ……っ、あぁ!」
耳に吐息が入り込み、クレハの唇から大きな声が漏れた。
それに加え、ノアの指はクレハの胸の先端をコリコリといじり回す。刺激を受けて、クレハの先端はすぐにプクッと膨れてしまった。
「やぁ……っ、ん。や……っ」
愛撫というものを受けたことのないクレハは、自分が出す声に驚きつつも、それを制御することができない。
いつのまにかクレハの目は濡れて、次にどんな刺激をもらえるのか期待をまとっていた。
「……ふふ、僕の肌を見た代金は支払ってもらったよ」
が、ノアはそう言ってあっさりと体を離してしまった。あとには脳天をとろけさせたクレハが、脱力してのびている。
「そんなに気持ちよかったかい?」
先ほど取り上げられてしまった彼女の三つ編みをまた手に取ると、ポンポンと弄びながらクレハの顔を覗き込む。
「な……、なに、……いまの……」
「キスを知らないかい?」
「きす!」
そう叫んでクレハは弾かれたように起き上がり、自分の唇を押さえながらまだ赤い顔でノアを盗み見する。
「どうかな、これで僕に少しは興味を持ってもらえただろうか?」
「ずるい……」
先ほどはあの琥珀色の目に吸い込まれそうだったのに、今は恥ずかしくて顔を合わせることができない。
今までの生活から一転したこの日を、なんと名付けたらいいのだろう――?
そう思いながら、クレハはそのあともノアにちょっかいをかけられては、過敏な反応をみせていた。
やがて寝る時間になると、ノアはクレハの父が使っていた部屋に通され、そこで眠るようにと言われる。
「心細くないように、少しの間ランプを点けておくわね」
チェストの上に温かなランプの光があり、ドアの向こうへクレハのシルエットが去ってゆく。
「明日、朝ご飯を食べたらちゃんと帰るのよ? 私も母さんのお見舞いに行かないとならないから。おやすみなさい」
冷静さを取り戻した頭は、また母の事故を思って頭を悩ませているようだった。
静かにドアを閉め、足音を忍ばせて自分の部屋へ向かうクレハの気配を、ノアは目を閉じてじっと感じていた。
**
0
お気に入りに追加
681
あなたにおすすめの小説
憧れの童顔巨乳家庭教師といちゃいちゃラブラブにセックスするのは最高に気持ちいい
suna
恋愛
僕の家庭教師は完璧なひとだ。
かわいいと美しいだったらかわいい寄り。
美女か美少女だったら美少女寄り。
明るく元気と知的で真面目だったら後者。
お嬢様という言葉が彼女以上に似合う人間を僕はこれまて見たことがないような女性。
そのうえ、服の上からでもわかる圧倒的な巨乳。
そんな憧れの家庭教師・・・遠野栞といちゃいちゃラブラブにセックスをするだけの話。
ヒロインは丁寧語・敬語、年上家庭教師、お嬢様、ドMなどの属性・要素があります。
【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される
Lynx🐈⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。
律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。
✱♡はHシーンです。
✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。
✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】
ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。
※ムーンライトノベルにも掲載しています。
坊っちゃまの計画的犯行
あさとよる
恋愛
お仕置きセックスで処女喪失からの溺愛?そして独占欲丸出しで奪い合いの逆ハーレム♡見目麗しい榑林家の一卵性双子から寵愛を受けるこのメイド…何者?
※性的な描写が含まれます。
【R-18】SとMのおとし合い
臣桜
恋愛
明治時代、東京の侯爵家の九条西家へ嫁いだ京都からの花嫁、大御門雅。
彼女を待っていたのは甘い新婚生活ではなく、恥辱の日々だった。
執事を前にした処女検査、使用人の前で夫に犯され、夫の前で使用人に犯され、そのような辱めを受けて尚、雅が宗一郎を思う理由は……。また、宗一郎が雅を憎む理由は……。
サドな宗一郎とマゾな雅の物語。
※ ムーンライトノベルズさまにも重複投稿しています
※ 表紙はニジジャーニーで生成しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる