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私の楽しい生贄生活 (完)
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「いいんです。なんだか今こうやって母さんを見たら、とても幸せそうだなって思えるし、私がいまエデンと一緒にいて幸せだと思っています。人を好きになる気持ちが分かったから、母さんがあなたと一緒にいたいという気持ちも分かる気がするんです」
そう言って笑ってみせると、エデンも、母さんも、ブランドンさんも、全員が嬉しそうに笑ってくれた。
「エデンさん、この子を……アメリアをどうぞよろしくお願いいたします」
母さんが頭を下げると、エデンは穏やかに微笑んでうなずく。
「こちらこそ……、アメリアを育ててくださってありがとう。アナ。これからは一人の女性として幸せな人生を。ダメな親父ですが、こちらこそよろしくお願いします」
ふふ、何だかくすぐったい。好きな人と母さんが話しているだなんて。
「エデンさんこそ、私のわがままを聴いてくれてありがとうございます。アメリアのこと、ずっと見守ってくださっていたんですよね」
「あ」
母さんのわがまま、という言葉に彼が私とあの村を見守ってくれたいきさつを思い出すと、エデンは少し照れ臭そうな顔をして紅茶を飲んでいる。
そう言えば、エデンは私のことをずっと見てくれていたと言っていたっけ……。
あの時いっていた『とある女性』というのは、母さんのことなのよね?
「エデンは魔王になるなり、アナから頼まれてあの村と孤児院を見守り始めたんだが、寂しそうにしながらも一人頑張っているアメリアさんのことを、ずいぶんと気に入ったみたいでな」
ブランドンさんは面白そうにエデンの顔をのぞき込み、赤茶色の目は楽しそうだ。
「当時まだ十二歳ぐらいのアメリアを見て、一目ぼれしたんだったな? この少女趣味」
「!!」
わっ、ブランドンさんをにらむエデンの目が、血色に戻った!
「ふふ、エデンさんは照れ屋さんなんですね」
もぉ、母さんは相変わらずおっとりしてるし。
でも、色んなことが一気に片付いて良かった。
怒涛の数日だったけれど、これから私が生きていく場所が分かったいま、幸せに暮らすビジョンがしっかり見える。
「ねぇ、エデン。私これからもここに来てもいいんですか?」
私が嬉しさを隠さず尋ねると、ブランドンさんに向かって殺気すら発していたエデンは、はたと私を見る。
「あぁ、お前の母親がここにいるのなら、城から空間を繋いで、頻繁に出入りできる扉を作るのもいいだろう」
「本当ですか!? 嬉しい!」
「やっだぁ、エデンったらアメリアちゃんに甘い~」
茶化すようなブランドンさんの声にエデンはまた目を赤く光らせる。
うぅん、確かにダメなおじさん……というか、調子のいい人なのかもしれない。
「うふふ、良かったわね。アメリア。これからは私とも一緒よ」
いつの間にか立ち上がって私の側にきた母さんがパフッと私を胸元に抱き締める。
親子ゲンカを始めるエデンとブランドンさんをよそに、私は満面の笑みで母さんに抱きつくのだった。
「私、いまとっても幸せよ!」
そうして、私の新しい生活が始まるのだ。
完
そう言って笑ってみせると、エデンも、母さんも、ブランドンさんも、全員が嬉しそうに笑ってくれた。
「エデンさん、この子を……アメリアをどうぞよろしくお願いいたします」
母さんが頭を下げると、エデンは穏やかに微笑んでうなずく。
「こちらこそ……、アメリアを育ててくださってありがとう。アナ。これからは一人の女性として幸せな人生を。ダメな親父ですが、こちらこそよろしくお願いします」
ふふ、何だかくすぐったい。好きな人と母さんが話しているだなんて。
「エデンさんこそ、私のわがままを聴いてくれてありがとうございます。アメリアのこと、ずっと見守ってくださっていたんですよね」
「あ」
母さんのわがまま、という言葉に彼が私とあの村を見守ってくれたいきさつを思い出すと、エデンは少し照れ臭そうな顔をして紅茶を飲んでいる。
そう言えば、エデンは私のことをずっと見てくれていたと言っていたっけ……。
あの時いっていた『とある女性』というのは、母さんのことなのよね?
「エデンは魔王になるなり、アナから頼まれてあの村と孤児院を見守り始めたんだが、寂しそうにしながらも一人頑張っているアメリアさんのことを、ずいぶんと気に入ったみたいでな」
ブランドンさんは面白そうにエデンの顔をのぞき込み、赤茶色の目は楽しそうだ。
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「!!」
わっ、ブランドンさんをにらむエデンの目が、血色に戻った!
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もぉ、母さんは相変わらずおっとりしてるし。
でも、色んなことが一気に片付いて良かった。
怒涛の数日だったけれど、これから私が生きていく場所が分かったいま、幸せに暮らすビジョンがしっかり見える。
「ねぇ、エデン。私これからもここに来てもいいんですか?」
私が嬉しさを隠さず尋ねると、ブランドンさんに向かって殺気すら発していたエデンは、はたと私を見る。
「あぁ、お前の母親がここにいるのなら、城から空間を繋いで、頻繁に出入りできる扉を作るのもいいだろう」
「本当ですか!? 嬉しい!」
「やっだぁ、エデンったらアメリアちゃんに甘い~」
茶化すようなブランドンさんの声にエデンはまた目を赤く光らせる。
うぅん、確かにダメなおじさん……というか、調子のいい人なのかもしれない。
「うふふ、良かったわね。アメリア。これからは私とも一緒よ」
いつの間にか立ち上がって私の側にきた母さんがパフッと私を胸元に抱き締める。
親子ゲンカを始めるエデンとブランドンさんをよそに、私は満面の笑みで母さんに抱きつくのだった。
「私、いまとっても幸せよ!」
そうして、私の新しい生活が始まるのだ。
完
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臣桜