19 / 38
恥ずかしい!
しおりを挟む
「良かった。キャンディの効果は消えているみたいだな」
「キャンディ……」
その単語を聴いて口の中に甘酸っぱい味を思い出し、私は急にめくるめく官能の時間を思い出した。
ゆでダコになるのではというぐらい体が熱くなるのを感じ、私は「あぁぁ……」と声を上げながら布団の中へフェードアウトしてゆく。
「こら、アメリア」
あああ……! 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしい!
私、こんな綺麗な人の前であられもない姿になって、変な声を出していたんだわ! あーっ!
絶叫したい声を喉に留め、私は両手で耳を塞いで布団の中でもだもだと暴れる。
エデンはしばらく沈黙していたが、羽根布団の上から優しく私をなだめてくれた。
「思い出したか? ……その、この上もなく可愛かったぞ」
ううう……! 嬉しい、けど、恥ずかしいんです!
「そうむくれるな。……そうだ、俺のわがままにつきあってくれた礼として、いいものを見せてやろう」
いいものと聞いて私は現金にも興味を示してしまい、少しためらってからモソモソと目から上だけを布団から覗かせる。
「イグニス、鏡を持ってきてくれ」
「えっ!? イグニスさんいらっしゃるんですか!?」
部屋の中にイグニスさんがいるのかとびっくりした私は、とび起きて広い室内を見まわす。
けれど、優しい色合いで統一された部屋の中には、私たち以外の気配はない。
「心配するな。今のは俺から遠く離れたイグニスに、念をこめて連絡をしただけだ。声に出したのは、事情を知らないお前が急にイグニスが訪れては驚くだろうと思ったから」
「あぁ……、そうなんですね。ありがとうございます……」
びっくりしたぁ……。けど、エデンはそうやって私のことをさりげなく気遣ってくれているの、やっぱりとても優しいな。
見つめていると震えてしまう位の美形で、私のことをお姫さまなんじゃないかと錯覚させるぐらいに優しくしてくれる。
肌を重ねて彼の熱も知ってしまって……。
気がつけば、あれほど「恐ろしい魔王」と思っていた人相手に、私はすっかり身も心も溶かされてしまっていた。
チラッと隣を盗み見すると、どこか影のある超絶美形が少し気だるげに前髪をかき上げている。
それが私の夫なのだと思うと、世界中に向かって大声で自慢したくなってしまう。
「鏡、って何ですか?」
ベッドの下に落ちてしまっていたナイトドレスを拾い上げて、何とか胸を隠しつつ頭から被ると、私はエデンに問う。
「望むものを見ることができる、万望の鏡だ」
「望むものを……」
オウム返しにつぶやき、魔王の城なのだから魔法の道具があっても不思議ではないと、私は顎に手を当てる。
私の望むもの……。
母さんの居場所。母さんが無事かどうか。それから村の様子。シスターサマンサや兄弟たちの無事。
ただ、それだけを確かめたい。
今になればエデンが残忍な魔王ではないというのは分かっているから、彼が村に危害を加えていないだろうことは承知している。
けれど……、離れてしまった故郷を見たいという願望は、誰だって抱くものだ。
「声が少しかすれている。喉は痛くないか?」
「少し……」
返事をするとエデンはベッドサイドに置いてある果物やお酒、水やジュース。その中から器用に瓶の中身を配合し、薄黄色の液体が入ったグラスを私にくれる。
「ハチミツを入れてあるから、喉にいいはずだ」
「ありがとうございます」
言われてみれば喉は少し痛くなっていて、私は受け取った飲み物をコクリと飲む。
「おいしい……」
レモンが入っているのか少し酸っぱくて、ハチミツが入っているからほんのり甘く、けれど味はそれだけじゃない。
「他は何が入っているんです?」
「さぁな? 感覚だけで混ぜたから、俺にもよく分からん」
「感覚で? 凄いですね……」
つくづく、この人は色んなことに対して器用な気がする。
魔王のお仕事って何をしているのか詳しくは分からないけれど、きっと膨大な量のお仕事を一人で片付けなくてはならないのよね。
それを思うと、頭の回転も速くて手先も器用なのは自然なことなのかとぼんやり思う。
そのときコンコンとドアをノックする音がして、イグニスさんが現れた。
「キャンディ……」
その単語を聴いて口の中に甘酸っぱい味を思い出し、私は急にめくるめく官能の時間を思い出した。
ゆでダコになるのではというぐらい体が熱くなるのを感じ、私は「あぁぁ……」と声を上げながら布団の中へフェードアウトしてゆく。
「こら、アメリア」
あああ……! 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしい!
私、こんな綺麗な人の前であられもない姿になって、変な声を出していたんだわ! あーっ!
絶叫したい声を喉に留め、私は両手で耳を塞いで布団の中でもだもだと暴れる。
エデンはしばらく沈黙していたが、羽根布団の上から優しく私をなだめてくれた。
「思い出したか? ……その、この上もなく可愛かったぞ」
ううう……! 嬉しい、けど、恥ずかしいんです!
「そうむくれるな。……そうだ、俺のわがままにつきあってくれた礼として、いいものを見せてやろう」
いいものと聞いて私は現金にも興味を示してしまい、少しためらってからモソモソと目から上だけを布団から覗かせる。
「イグニス、鏡を持ってきてくれ」
「えっ!? イグニスさんいらっしゃるんですか!?」
部屋の中にイグニスさんがいるのかとびっくりした私は、とび起きて広い室内を見まわす。
けれど、優しい色合いで統一された部屋の中には、私たち以外の気配はない。
「心配するな。今のは俺から遠く離れたイグニスに、念をこめて連絡をしただけだ。声に出したのは、事情を知らないお前が急にイグニスが訪れては驚くだろうと思ったから」
「あぁ……、そうなんですね。ありがとうございます……」
びっくりしたぁ……。けど、エデンはそうやって私のことをさりげなく気遣ってくれているの、やっぱりとても優しいな。
見つめていると震えてしまう位の美形で、私のことをお姫さまなんじゃないかと錯覚させるぐらいに優しくしてくれる。
肌を重ねて彼の熱も知ってしまって……。
気がつけば、あれほど「恐ろしい魔王」と思っていた人相手に、私はすっかり身も心も溶かされてしまっていた。
チラッと隣を盗み見すると、どこか影のある超絶美形が少し気だるげに前髪をかき上げている。
それが私の夫なのだと思うと、世界中に向かって大声で自慢したくなってしまう。
「鏡、って何ですか?」
ベッドの下に落ちてしまっていたナイトドレスを拾い上げて、何とか胸を隠しつつ頭から被ると、私はエデンに問う。
「望むものを見ることができる、万望の鏡だ」
「望むものを……」
オウム返しにつぶやき、魔王の城なのだから魔法の道具があっても不思議ではないと、私は顎に手を当てる。
私の望むもの……。
母さんの居場所。母さんが無事かどうか。それから村の様子。シスターサマンサや兄弟たちの無事。
ただ、それだけを確かめたい。
今になればエデンが残忍な魔王ではないというのは分かっているから、彼が村に危害を加えていないだろうことは承知している。
けれど……、離れてしまった故郷を見たいという願望は、誰だって抱くものだ。
「声が少しかすれている。喉は痛くないか?」
「少し……」
返事をするとエデンはベッドサイドに置いてある果物やお酒、水やジュース。その中から器用に瓶の中身を配合し、薄黄色の液体が入ったグラスを私にくれる。
「ハチミツを入れてあるから、喉にいいはずだ」
「ありがとうございます」
言われてみれば喉は少し痛くなっていて、私は受け取った飲み物をコクリと飲む。
「おいしい……」
レモンが入っているのか少し酸っぱくて、ハチミツが入っているからほんのり甘く、けれど味はそれだけじゃない。
「他は何が入っているんです?」
「さぁな? 感覚だけで混ぜたから、俺にもよく分からん」
「感覚で? 凄いですね……」
つくづく、この人は色んなことに対して器用な気がする。
魔王のお仕事って何をしているのか詳しくは分からないけれど、きっと膨大な量のお仕事を一人で片付けなくてはならないのよね。
それを思うと、頭の回転も速くて手先も器用なのは自然なことなのかとぼんやり思う。
そのときコンコンとドアをノックする音がして、イグニスさんが現れた。
0
お気に入りに追加
406
あなたにおすすめの小説

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
男装騎士はエリート騎士団長から離れられません!
Canaan
恋愛
女性騎士で伯爵令嬢のテレサは配置換えで騎士団長となった陰険エリート魔術師・エリオットに反発心を抱いていた。剣で戦わない団長なんてありえない! そんなテレサだったが、ある日、魔法薬の事故でエリオットから一定以上の距離をとろうとすると、淫らな気分に襲われる体質になってしまい!? 目の前で発情する彼女を見たエリオットは仕方なく『治療』をはじめるが、男だと思い込んでいたテレサが女性だと気が付き……。インテリ騎士の硬い指先が、火照った肌を滑る。誰にも触れられたことのない場所を優しくほぐされると、身体はとろとろに蕩けてしまって――。二十四時間離れられない二人の恋の行く末は?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる