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第二十三部・幸せへ 編

特別手当と御劔プレゼント

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「色々すまなかった。澪がここまで付き合ってくれたのは、俺たちを心配してくれての事だと思っている。……ありがとうな」

 佑にお礼を言われ、澪は少し固まったあと照れて赤面し「……ふ、ふん」とそっぽを向く。

(ツンデレだ!)

 香澄は野生のツンデレを前にして感動し、ワクワクとした目で澪の反応を窺っている。

「別にお礼を言われたくてここまで来た訳じゃないけど? どうしてもって言うなら、あとで何かしてもらおっかなー」

 ツンデレのテンプレートのセリフを聞いた香澄は、感動してプルプル震えたあと、……ギュッと控えめに澪を抱き締めた。

「なっ、何よ香澄さん」

「……かわいい……」

 それを聞いた澪は、カーッと赤面して言った。

「べ……っ、別に可愛くなんてないけど!」

(きたーっ!)

 感動のあまりプルプル打ち震えた香澄は、さらに澪をギュッと抱き締める。

 そんな彼女を、佑と双子は生温かい目で見ていた。





 双子と澪は一応、朝食時にチクチク言って満足したらしく、その日はその後、自由行動という事になった。

 佑はレストランにいた護衛たちを呼び、改めて久住と佐野、瀬尾を前にし、しばらく黙る。

 三人は処分を覚悟の上で口を引き結び、緊張していたが――。

「ありがとう」

 礼を言われ、三人はキョトンと目を瞬かせる。

「まず、香澄が日本を離れる覚悟をした時点で、自分の意志で彼女について行くという選択をした事に、心から感謝する。契約通り、香澄を守ってくれてありがとう」

 佑に礼を言われ、久住と佐野、瀬尾は安堵したように息を吐く。

「俺が不甲斐なかったばかりに、お前たちの仕事を増やしてすまない。……すぐ連絡をくれなかった事については一言いいたいが、家族たちにも色々言われた手前、雇用主だからと言って、お前たちだけに当たる事はできない。任務を優先したとはいえ、個人として言いたい事はあっただろうし」

 そう言われ、三人は顔を見合わせ、代表として久住が口を開いた。

「速やかな再会にご協力できなかった事を、心よりお詫び申し上げます。ただ、どんな場合でも赤松さんを優先するというご命令は、忠実に守ったつもりでいます」

 彼の言葉を聞き、佑は頷いた。

「帰国したら休暇を楽しんでくれ。今はまだ、もう少し宜しく頼む」

「はい!」

 お咎めなしという事でホッとした様子の三人は、いつも通りビシッと返事をした。

「僕としては、当時のアンチカスミなタスクを蹴ってでも、カスミを守ろうとした訳だから、彼らにボーナスをあげたいぐらいだね」

 その様子を見ていたクラウスが言い、アロイスも「賛成」と指を上げる。

「……分かった。三人には特別手当を用意する」

 佑の言葉を聞き、三人の目がキランと輝く。

 香澄は佑の袖をツンツンと引いて言う。

「あのね、久住さんは最近手作り燻製に凝ってるんだって。佐野さんは釣りを始めてみたって。で、瀬尾さんはお子さんにランドにつれて行ってほしいって言われてるの」

 移動中、護衛たちが気持ちを〝オフ〟にしていた時の会話を聞き、香澄は彼らが今欲しそうな物を佑に囁いておく。

「……特別手当に加えて、御劔プレゼント。……駄目?」

 コソコソッと囁いて両手を合わせると、佑はクシャッと笑って頷いた。

「香澄が言うなら仕方ないな。希望に合わせて良さそうな物を手配しておく。ランドのほうもツテがあるから、きっと満足してもらえるプランを用意できる」

「ありがとう!」

 お礼を言った香澄の向こうで、三人がアタフタしていたが、双子が「受け取っておきなよ」と言ったのを聞いて恐縮しつつ黙った。





 その後、一旦部屋に戻ってから着替えをし、香澄は昨日花見をしたが、改めて佑と一緒に桜祭りデートをした。

 公園内は相変わらず大勢の人でごった返しているので、、二人はしっかり手を繋いでいる。勿論、少し離れた所には護衛たちがついていた。

「……東京でもあまり花見デートってできていなかったっけ」

 香澄が言うと、佑は微笑んで頷く。

「そうだな。ろくに花見にも連れて行けなくてすまない」

 そう言った佑の横顔は変わらず美しいのだが、幾分輪郭がシャープになったように思えた。
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