1,544 / 1,544
第二十三部・幸せへ 編
幸せな朝食
しおりを挟む
「あれ、タスクとカスミじゃん」
その先には双子と澪がいて、朝食をとっているところだった。
ショーンから一言あったのか、彼らの周りの席は空いていて、ありがたく隣のテーブルについた。
《コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?》
ウエイターに尋ねられ、香澄は《無糖のカフェオレはできますか》と尋ねる。
すると彼はニッコリ笑って「Yes」と答え、そうしてもらうようにした。
佑はブラックコーヒーを頼み、ビュッフェの他のアラカルトメニューを持ってきてもらうよう頼む。
「澪さん、パンケーキ? 可愛い~。美味しいそう~」
澪が食べているパンケーキは何段にも重なった上、ホイップクリームやフルーツがたっぷりついている。
「あっ、どうしよう。でもしょっぱい物も食べたい」
本気で迷っていると、隣で佑が「クックック……」と笑っているのに気づく。
ハッとした香澄は、「三人に会ったら恥ずかしくてまともに話せないかもしれない」とエレベーターで言っていた事をすっかり失念しているのを思い出した。
「……あ、あの……。ええと……。うう……」
真っ赤になってポソポソ言うと、双子がケラケラ笑った。
「ま、いーんじゃない? いつも通りって事で」
「積もる話はあとから沢山できるから、今は食べたら?」
パンケーキを頬張った澪に言われ、香澄は「ソウシマス……」と小さな声で言ったのだった。
その後、香澄は佑に「食べてもいい?」と許可を得て、普通のビュッフェ以外にフルーツの載ったワッフルを頼んだ。
本当はエッグベネディクトやハムステーキも気になっていたが、さすがに自粛した。
佑はナッツの載ったアボカドトーストを頼んだようだ。
ビュッフェのほうはいつも通りという感じで、自動トースト焼き機のあるパンコーナーに、ハムやチーズ類、オムレツはシェフにオーダーして作ってもらえるので、好きな具を伝えてできたてをもらった。
他にも固めに焼いた目玉焼きにスクランブルエッグ、フルーツは林檎などが丸ごと置いてあるのがワイルドだ。
ヨーグルトなどは中身が見える冷蔵庫の中に入っていて、パックの物を一つ持ってきた。
ジュースサーバーは色鮮やかなフルーツの写真が並び、どれも飲みたくなる。
基本的にヨーロッパと似ていて、オレンジジュースにグレープフルーツジュース、クランベリージュースが主流のようだ。
あとは冷たい牛乳に水、コーヒーサーバーやティーバッグが沢山置いてある。
席についてモリモリ食べていると、双子はクスクス笑ってその様子を動画に収めていた。
「……許可なく人の婚約者を撮るのはやめてくれないか」
佑が苦言を呈すると、双子はわざとらしく目を見開いて顔を見合わせ、彼を見てヒソヒソと言う。
「やだねぇ……。ちょっと前までカスミの事をケロッと忘れていた癖に、思いだした途端、婚約者ヅラだよ?」
「一晩経って愛を確かめ合うと、人ってこんなに図々しくなるんだねぇ……」
いつもと変わらない双子の毒舌に、佑は溜め息をついて眉間に皺を寄せる。
香澄がモグモグしつつもオロオロしていると、澪はケロリとして言う。
「これぐらい言わせておいてもいいんじゃない? これからママやオーマたちにもたっぷり言われるだろうし。佑も覚悟の上よ」
妹の言葉を聞いて、佑は溜め息をついて肩を落とす。
「……まぁ、皆の怒りはもっともだから、甘んじて説教を受けるよ」
そう言いつつも、佑の顔は穏やかだ。
今まで世界中を探し回る覚悟で香澄を求めていた気持ちに比べれば、こうやって周りにチクチク言われるぐらいどうって事はない。
隣を見ると香澄が小さな口をモクモクと動かし、一生懸命朝食を味わっている。
こうやってまた「次は何を食べさせてあげよう」と思えるようになった事が、幸せでならない。
(幸せだな……)
そう思った佑は、ポケットからスマホを出すとカシャッと香澄を撮った。
「ん?」
オムレツを口に入れた香澄は、固まってこちらを見てくる。
「お気にせず、どうぞ」
ニコッと笑うと、香澄は照れて「もぉぉ……」と文句を言いながらも食事の続きにとりかかった。
「で、マティアスから連絡があったけど、マイと一緒にNYに来るって?」
アロイスが言い、佑は頷く。
「ああ。向こう二人は婚前旅行みたいな感じで、麻衣さんは結婚前に仕事を辞めたからフリーだそうだ」
佑の言葉を聞き、香澄は「麻衣といっぱい遊べる」と食べながらワクワクする。
「私はNYに戻るあたりまでは付き合うけど、あとは一足先に日本に戻るから。仕事も休んじゃってるし」
澪が言い、佑は申し訳なさそうに妹に謝った。
その先には双子と澪がいて、朝食をとっているところだった。
ショーンから一言あったのか、彼らの周りの席は空いていて、ありがたく隣のテーブルについた。
《コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?》
ウエイターに尋ねられ、香澄は《無糖のカフェオレはできますか》と尋ねる。
すると彼はニッコリ笑って「Yes」と答え、そうしてもらうようにした。
佑はブラックコーヒーを頼み、ビュッフェの他のアラカルトメニューを持ってきてもらうよう頼む。
「澪さん、パンケーキ? 可愛い~。美味しいそう~」
澪が食べているパンケーキは何段にも重なった上、ホイップクリームやフルーツがたっぷりついている。
「あっ、どうしよう。でもしょっぱい物も食べたい」
本気で迷っていると、隣で佑が「クックック……」と笑っているのに気づく。
ハッとした香澄は、「三人に会ったら恥ずかしくてまともに話せないかもしれない」とエレベーターで言っていた事をすっかり失念しているのを思い出した。
「……あ、あの……。ええと……。うう……」
真っ赤になってポソポソ言うと、双子がケラケラ笑った。
「ま、いーんじゃない? いつも通りって事で」
「積もる話はあとから沢山できるから、今は食べたら?」
パンケーキを頬張った澪に言われ、香澄は「ソウシマス……」と小さな声で言ったのだった。
その後、香澄は佑に「食べてもいい?」と許可を得て、普通のビュッフェ以外にフルーツの載ったワッフルを頼んだ。
本当はエッグベネディクトやハムステーキも気になっていたが、さすがに自粛した。
佑はナッツの載ったアボカドトーストを頼んだようだ。
ビュッフェのほうはいつも通りという感じで、自動トースト焼き機のあるパンコーナーに、ハムやチーズ類、オムレツはシェフにオーダーして作ってもらえるので、好きな具を伝えてできたてをもらった。
他にも固めに焼いた目玉焼きにスクランブルエッグ、フルーツは林檎などが丸ごと置いてあるのがワイルドだ。
ヨーグルトなどは中身が見える冷蔵庫の中に入っていて、パックの物を一つ持ってきた。
ジュースサーバーは色鮮やかなフルーツの写真が並び、どれも飲みたくなる。
基本的にヨーロッパと似ていて、オレンジジュースにグレープフルーツジュース、クランベリージュースが主流のようだ。
あとは冷たい牛乳に水、コーヒーサーバーやティーバッグが沢山置いてある。
席についてモリモリ食べていると、双子はクスクス笑ってその様子を動画に収めていた。
「……許可なく人の婚約者を撮るのはやめてくれないか」
佑が苦言を呈すると、双子はわざとらしく目を見開いて顔を見合わせ、彼を見てヒソヒソと言う。
「やだねぇ……。ちょっと前までカスミの事をケロッと忘れていた癖に、思いだした途端、婚約者ヅラだよ?」
「一晩経って愛を確かめ合うと、人ってこんなに図々しくなるんだねぇ……」
いつもと変わらない双子の毒舌に、佑は溜め息をついて眉間に皺を寄せる。
香澄がモグモグしつつもオロオロしていると、澪はケロリとして言う。
「これぐらい言わせておいてもいいんじゃない? これからママやオーマたちにもたっぷり言われるだろうし。佑も覚悟の上よ」
妹の言葉を聞いて、佑は溜め息をついて肩を落とす。
「……まぁ、皆の怒りはもっともだから、甘んじて説教を受けるよ」
そう言いつつも、佑の顔は穏やかだ。
今まで世界中を探し回る覚悟で香澄を求めていた気持ちに比べれば、こうやって周りにチクチク言われるぐらいどうって事はない。
隣を見ると香澄が小さな口をモクモクと動かし、一生懸命朝食を味わっている。
こうやってまた「次は何を食べさせてあげよう」と思えるようになった事が、幸せでならない。
(幸せだな……)
そう思った佑は、ポケットからスマホを出すとカシャッと香澄を撮った。
「ん?」
オムレツを口に入れた香澄は、固まってこちらを見てくる。
「お気にせず、どうぞ」
ニコッと笑うと、香澄は照れて「もぉぉ……」と文句を言いながらも食事の続きにとりかかった。
「で、マティアスから連絡があったけど、マイと一緒にNYに来るって?」
アロイスが言い、佑は頷く。
「ああ。向こう二人は婚前旅行みたいな感じで、麻衣さんは結婚前に仕事を辞めたからフリーだそうだ」
佑の言葉を聞き、香澄は「麻衣といっぱい遊べる」と食べながらワクワクする。
「私はNYに戻るあたりまでは付き合うけど、あとは一足先に日本に戻るから。仕事も休んじゃってるし」
澪が言い、佑は申し訳なさそうに妹に謝った。
183
お気に入りに追加
2,511
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(554件)
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
はるるん 様
🐺選手、序盤様子を見つつゆっくり、次第に本気を見せてトップスピードを出してくれるはずです😂
見守ってくださいませ~!
臣桜
かえ 様
お待たせしました!
やっと捕獲です!ニーブラ!(笑)
ポスンと籠の中に閉じ込められて、🐰はまた箱庭に戻るのです(*´ω`*)
臣桜
花招き猫 様
男・御劔佑やりました!(笑)
もう元に戻れないのかも……と半分諦めていた時に、御劔パワー全開でこられたら、そりゃポカーンとなりますよね😂
でもまた、愛の重たい男と一緒に歩んでいくのです。
ありがとうございます!
臣桜