1,523 / 1,544
第二十三部・幸せへ 編
NY観光
しおりを挟む
だから余計に、ショーンは佑と香澄の痛みを理解できるのだ。
《せっかくのイベントだから、僕もワシントンDCで待っている。本当はパリでカスミを紹介してもらう予定だったけど、今度こそちゃんと君から紹介してくれ》
『分かった。ありがとう』
そのあとショーンはワシントンDCにある自社ホテルの部屋を用意しておくと言い、少し雑談をしたあと電話を切った。
佑は溜め息をつき、胸に手を当てる。
「……やっと香澄に会える」
胸の奥でトクントクンと鼓動が高鳴り、彼女を想うだけで苦しいほど切なくなる。
「……好きだ」
たったそれだけのシンプルな言葉を呟くだけで、胸が一杯になる。
「……悲しい想いをさせてごめん。冷たくしてごめん。……必ず、会いに行って君に直接伝えるから」
目の奥を熱くさせた佑は、息を震わせて深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。
そして松井に電話をかけ、すぐワシントンDCに発てるよう支度を頼んだ。
**
NYに少し滞在している間、香澄は双子や澪、リカルドに付き合ってもらって観光名所に行った。
タイムズスクエアに行って人の多さ、ギラギラした街の活気に圧倒されつつ、澪や双子と記念撮影をする。
自由の女神像を見る時は、公式フェリーに乗って女神像があるリバティ島に上陸した。
入手が難しいだろうに、ショーンが手配を手伝ってくれ、ブロードウェイのミュージカルを見る事もできた。
しっかりした肉が挟まった存在感のあるハンバーガーを食べ、アメリカンビーフの大きなステーキを食べ、口元をケチャップとマスタードまみれにしてホットドッグを頬張った。
加えてロブスターも有名だという事で、蒸したり焼いたり色んな調理法で、ブリンブリンの身を思う存分いただく。
アメリカと言えばな食べ物は口にしたと思いきや、双子が「メキシカン行こう!」と言い、タコスやブリトーも食べた。
カジュアルな食事に満足した頃、今度は五番街でドレスを買って星付きレストランに行くというので、澪や護衛たちと必死にセントラルパークを走った。
ホテルのプールでガチ泳ぎをして筋トレをし、澪と一緒にエステで極上の施術を受ける。
「たっぷり運動した?」と双子にからかわれ、連れて行かれたのは五番街のディアールのブティックだ。
そこであれこれ着せ替え人形になったあと、レストランに着ていく用のフレアミディドレスを買い、「これ可愛いね。たまにはミニ着なよ」と、オブリークのミニドレスや、トワル・ドゥ・ジュイの精緻な絵柄のミディドレスをフィッティングしたのち、バッグやジュエリー、小物類ごとお買い上げとなった。
(……信じられない、頭がクラクラする……)
コンシェルジュから笑顔で見送られ、香澄はドレスを身に纏ったまま予約していたレストランに行く。
(詳しい値段は分からないけど、少しでも汚したら台無しになる!)
クワッと目を見開き、マナーモードかというほどプルプル震えて食事をする香澄を、双子は腹を抱えて笑って見ていた。
贅沢な日々を送ったあと、ある日双子に言われる。
「そろそろワシントンDCに移ろうか。桜祭り始まってると思うし、場所を変えて楽しもう」
双子が宿泊しているスイートでちびちびとオレンジジュースを飲んでいた香澄は、「はい」と頷く。
「それにしても、遊んでばっかりのように思えましたけど、お仕事はしていますか?」
世話になっておきながら失礼な物言いだが、心配になってしまう。
「大丈夫。ちょいちょいアロがいなかったり、僕がいない時があったでしょ。ああいう時、ちゃんとベルタと一緒にNYでの仕事をこなしていたから」
ナッツをポーンと放って口でキャッチしたクラウスに言われ、香澄はホッと安堵する。
「最近は暖かいみたいだから、桜も安心だね。朝晩はまだ冷えると思うけど、ちょっと軽めの服を着てもいいんじゃない? ヒラッとしたワンピースとか」
アロイスに言われ、香澄は身構える。
「あ、新しい服はいいですからね? お花見なら歩き回りますから、ジーンズにパーカーとか……」
「「ダメ!」」
カジュアル案を双子に却下され、香澄はシュン……と項垂れる。
「せっかくのロケーションなんだからさ、可愛い格好していこうよ。イースター時期でもあるし、桜とかうさぎとか、なんかフワッと可愛いのがいいんだよね」
うさぎと言われ、香澄はキュッと口を閉じて緊張する。
自分が佑にうさぎと言われて可愛がられているのは秘密なのに、単語が出てくるだけで反応してしまう。
《せっかくのイベントだから、僕もワシントンDCで待っている。本当はパリでカスミを紹介してもらう予定だったけど、今度こそちゃんと君から紹介してくれ》
『分かった。ありがとう』
そのあとショーンはワシントンDCにある自社ホテルの部屋を用意しておくと言い、少し雑談をしたあと電話を切った。
佑は溜め息をつき、胸に手を当てる。
「……やっと香澄に会える」
胸の奥でトクントクンと鼓動が高鳴り、彼女を想うだけで苦しいほど切なくなる。
「……好きだ」
たったそれだけのシンプルな言葉を呟くだけで、胸が一杯になる。
「……悲しい想いをさせてごめん。冷たくしてごめん。……必ず、会いに行って君に直接伝えるから」
目の奥を熱くさせた佑は、息を震わせて深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。
そして松井に電話をかけ、すぐワシントンDCに発てるよう支度を頼んだ。
**
NYに少し滞在している間、香澄は双子や澪、リカルドに付き合ってもらって観光名所に行った。
タイムズスクエアに行って人の多さ、ギラギラした街の活気に圧倒されつつ、澪や双子と記念撮影をする。
自由の女神像を見る時は、公式フェリーに乗って女神像があるリバティ島に上陸した。
入手が難しいだろうに、ショーンが手配を手伝ってくれ、ブロードウェイのミュージカルを見る事もできた。
しっかりした肉が挟まった存在感のあるハンバーガーを食べ、アメリカンビーフの大きなステーキを食べ、口元をケチャップとマスタードまみれにしてホットドッグを頬張った。
加えてロブスターも有名だという事で、蒸したり焼いたり色んな調理法で、ブリンブリンの身を思う存分いただく。
アメリカと言えばな食べ物は口にしたと思いきや、双子が「メキシカン行こう!」と言い、タコスやブリトーも食べた。
カジュアルな食事に満足した頃、今度は五番街でドレスを買って星付きレストランに行くというので、澪や護衛たちと必死にセントラルパークを走った。
ホテルのプールでガチ泳ぎをして筋トレをし、澪と一緒にエステで極上の施術を受ける。
「たっぷり運動した?」と双子にからかわれ、連れて行かれたのは五番街のディアールのブティックだ。
そこであれこれ着せ替え人形になったあと、レストランに着ていく用のフレアミディドレスを買い、「これ可愛いね。たまにはミニ着なよ」と、オブリークのミニドレスや、トワル・ドゥ・ジュイの精緻な絵柄のミディドレスをフィッティングしたのち、バッグやジュエリー、小物類ごとお買い上げとなった。
(……信じられない、頭がクラクラする……)
コンシェルジュから笑顔で見送られ、香澄はドレスを身に纏ったまま予約していたレストランに行く。
(詳しい値段は分からないけど、少しでも汚したら台無しになる!)
クワッと目を見開き、マナーモードかというほどプルプル震えて食事をする香澄を、双子は腹を抱えて笑って見ていた。
贅沢な日々を送ったあと、ある日双子に言われる。
「そろそろワシントンDCに移ろうか。桜祭り始まってると思うし、場所を変えて楽しもう」
双子が宿泊しているスイートでちびちびとオレンジジュースを飲んでいた香澄は、「はい」と頷く。
「それにしても、遊んでばっかりのように思えましたけど、お仕事はしていますか?」
世話になっておきながら失礼な物言いだが、心配になってしまう。
「大丈夫。ちょいちょいアロがいなかったり、僕がいない時があったでしょ。ああいう時、ちゃんとベルタと一緒にNYでの仕事をこなしていたから」
ナッツをポーンと放って口でキャッチしたクラウスに言われ、香澄はホッと安堵する。
「最近は暖かいみたいだから、桜も安心だね。朝晩はまだ冷えると思うけど、ちょっと軽めの服を着てもいいんじゃない? ヒラッとしたワンピースとか」
アロイスに言われ、香澄は身構える。
「あ、新しい服はいいですからね? お花見なら歩き回りますから、ジーンズにパーカーとか……」
「「ダメ!」」
カジュアル案を双子に却下され、香澄はシュン……と項垂れる。
「せっかくのロケーションなんだからさ、可愛い格好していこうよ。イースター時期でもあるし、桜とかうさぎとか、なんかフワッと可愛いのがいいんだよね」
うさぎと言われ、香澄はキュッと口を閉じて緊張する。
自分が佑にうさぎと言われて可愛がられているのは秘密なのに、単語が出てくるだけで反応してしまう。
189
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる