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第二十三部・幸せへ 編

NY観光

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 だから余計に、ショーンは佑と香澄の痛みを理解できるのだ。

《せっかくのイベントだから、僕もワシントンDCで待っている。本当はパリでカスミを紹介してもらう予定だったけど、今度こそちゃんと君から紹介してくれ》

『分かった。ありがとう』

 そのあとショーンはワシントンDCにある自社ホテルの部屋を用意しておくと言い、少し雑談をしたあと電話を切った。

 佑は溜め息をつき、胸に手を当てる。

「……やっと香澄に会える」

 胸の奥でトクントクンと鼓動が高鳴り、彼女を想うだけで苦しいほど切なくなる。

「……好きだ」

 たったそれだけのシンプルな言葉を呟くだけで、胸が一杯になる。

「……悲しい想いをさせてごめん。冷たくしてごめん。……必ず、会いに行って君に直接伝えるから」

 目の奥を熱くさせた佑は、息を震わせて深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。

 そして松井に電話をかけ、すぐワシントンDCに発てるよう支度を頼んだ。



**



 NYに少し滞在している間、香澄は双子や澪、リカルドに付き合ってもらって観光名所に行った。

 タイムズスクエアに行って人の多さ、ギラギラした街の活気に圧倒されつつ、澪や双子と記念撮影をする。

 自由の女神像を見る時は、公式フェリーに乗って女神像があるリバティ島に上陸した。

 入手が難しいだろうに、ショーンが手配を手伝ってくれ、ブロードウェイのミュージカルを見る事もできた。

 しっかりした肉が挟まった存在感のあるハンバーガーを食べ、アメリカンビーフの大きなステーキを食べ、口元をケチャップとマスタードまみれにしてホットドッグを頬張った。

 加えてロブスターも有名だという事で、蒸したり焼いたり色んな調理法で、ブリンブリンの身を思う存分いただく。

 アメリカと言えばな食べ物は口にしたと思いきや、双子が「メキシカン行こう!」と言い、タコスやブリトーも食べた。

 カジュアルな食事に満足した頃、今度は五番街でドレスを買って星付きレストランに行くというので、澪や護衛たちと必死にセントラルパークを走った。

 ホテルのプールでガチ泳ぎをして筋トレをし、澪と一緒にエステで極上の施術を受ける。

「たっぷり運動した?」と双子にからかわれ、連れて行かれたのは五番街のディアールのブティックだ。

 そこであれこれ着せ替え人形になったあと、レストランに着ていく用のフレアミディドレスを買い、「これ可愛いね。たまにはミニ着なよ」と、オブリークのミニドレスや、トワル・ドゥ・ジュイの精緻な絵柄のミディドレスをフィッティングしたのち、バッグやジュエリー、小物類ごとお買い上げとなった。

(……信じられない、頭がクラクラする……)

 コンシェルジュから笑顔で見送られ、香澄はドレスを身に纏ったまま予約していたレストランに行く。

(詳しい値段は分からないけど、少しでも汚したら台無しになる!)

 クワッと目を見開き、マナーモードかというほどプルプル震えて食事をする香澄を、双子は腹を抱えて笑って見ていた。





 贅沢な日々を送ったあと、ある日双子に言われる。

「そろそろワシントンDCに移ろうか。桜祭り始まってると思うし、場所を変えて楽しもう」

 双子が宿泊しているスイートでちびちびとオレンジジュースを飲んでいた香澄は、「はい」と頷く。

「それにしても、遊んでばっかりのように思えましたけど、お仕事はしていますか?」

 世話になっておきながら失礼な物言いだが、心配になってしまう。

「大丈夫。ちょいちょいアロがいなかったり、僕がいない時があったでしょ。ああいう時、ちゃんとベルタと一緒にNYでの仕事をこなしていたから」

 ナッツをポーンと放って口でキャッチしたクラウスに言われ、香澄はホッと安堵する。

「最近は暖かいみたいだから、桜も安心だね。朝晩はまだ冷えると思うけど、ちょっと軽めの服を着てもいいんじゃない? ヒラッとしたワンピースとか」

 アロイスに言われ、香澄は身構える。

「あ、新しい服はいいですからね? お花見なら歩き回りますから、ジーンズにパーカーとか……」

「「ダメ!」」

 カジュアル案を双子に却下され、香澄はシュン……と項垂れる。

「せっかくのロケーションなんだからさ、可愛い格好していこうよ。イースター時期でもあるし、桜とかうさぎとか、なんかフワッと可愛いのがいいんだよね」

 うさぎと言われ、香澄はキュッと口を閉じて緊張する。

 自分が佑にうさぎと言われて可愛がられているのは秘密なのに、単語が出てくるだけで反応してしまう。
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