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第二十三部・幸せへ 編

NYでのパーティー

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 いっぽうでNYのショーンのホテルにて、香澄たちは彼が主に過ごしているスイートルームでパーティーをしていた。

 メゾネットタイプのペントハウスは、窓から陽光がふんだんに差し込み、とても解放感がある。

 広々とした一階のキッチンではシェフがアシスタントを伴って料理を作り、リビングダイニングにご馳走が並んでいる。

 高級ワインやシャンパンも次々に開けられ、主に双子がガブガブ飲んでいた。

 十人掛けのダイニングテーブルには、香澄、双子、澪、リアム、ショーン、テオ、ソフィア、ジョシュアがついていて、シャーロットは子供用椅子に座っている。

『カスミが元気そうで良かった』

『ジョシュも元気で良かった。ほんっとうに良かった……!』

 香澄は命の恩人の少年と再会した時、思わずポロポロと涙を零して泣いてしまった。

 そのあとテオとソフィアにお礼を言い、双子に「赤べこみたい」と言われるぐらい、何度もお辞儀をしていた。

 シャンパンを飲みながら簡単なおつまみを食べ、それぞれ挨拶している間に前菜ができたようなので、皆席について食事を始めた流れだ。

『本当に香澄さんは、色んな事に巻き込まれすぎよ。神社で厄落としでもしてきたら?』

 澪が言い、綺麗なカトラリー使いでマグロのタルタルを食べる。

『日本人は困った時、すぐに神社や寺を頼るね』

 面白そうに笑ったのはリアムだ。

『その辺は日本人の魂に刻まれてる感覚だから、リアムに分かってもらおうと思わない。ね、香澄さん』

 澪に言われ、香澄は口の中にものを入れたまま、コクコクと頷いた。

(澪さん、恋人相手にハッキリものを言うんだな。さすが。私は佑さんに、こんなに……)

 そこまで考え、思考をストップさせる。

(美味しい、美味しい。皆といられて楽しい)

 香澄は自分に言い聞かせ、いつもは控えめにしているのに、少し積極的に白ワインを飲む。

『カスミさん、当ホテルは如何かな?』

 そこでショーンに尋ねられ、カスミはニコッと笑った。

『最高です! こんなに高級で素敵なホテル、初めてです』

 答えると、ショーンはニヤリと笑う。

『おや、僕は知っているよ。君はバルセロナにある僕のホテルにも泊まった。さて、どっちが素敵なホテルだったな?』

『も、もぉお……』

 意地悪をされ、香澄は困ってうなる。

 そんな彼女を見てショーンも他の皆も明るく笑った。

 初対面の人もいたが、双子がうまく全員の中継役を担ってくれたので、会話に困る事はなかった。

 それに皆できた大人で、佑について触れてくる事もない。

 一流の料理を食べ、料理に合わせたワインを飲み、上流階級の人々と英語で話す。

 いつもの自分とはまったく異なる環境に身を置いているからか、自分が本当にNYにいるのか分からなくなってくる。

 フワフワと幸せな気持ちになるなか、香澄は話しかけてきた人に笑顔で応え続けた。





 そんな香澄を見ながら、ときどき双子はコソコソとフランス語で囁き合って会話をしていた。

《さっきタスクから電話があった》

《マジか》

《すげぇ懇願されたけど、……一応蹴っといたけどね。……てか、明日ランスに行ってガブとあの女に会ってくるみたいだ。しかもオーパとオーマを連れて》

《ワァオ》

 クラウスは小さな声で言い、目だけで天井を見る。

《その結果を聞いて……だね。今度こそあの女を城に幽閉できたら、及第点を与えてやってもいいけど》

《……そしたら会わせる?》

 アロイスに尋ねられ、クラウスは首を竦める。

《会わせてやりたくないけど、あいつが思い出してるのに会わせなかったって、あとからカスミに知られたら、僕らが悪者になるもんね》

《だな……。俺たちはあいつのクズさ加減にキレてこういう手段をとった訳だけど、思い出してすべて元サヤになるなら、いつまでも怒ってる道理はないもんね。……それでも、忘れてしまったとはいえ、カスミを泣かせたのは許したくないけど》

《僕も許したくないよ。……でも、カスミの幸せはあいつといる事だ》

 アロイスはそう言って、ジョシュアと笑顔で話している香澄を見る。

《……だね。許したくないけど、二人がワンセットになれば、すべて丸く収まる。あんまりカスミを連れ回していると、俺たちがオーマに怒られるしね》

《オーマは怒らせたらやべぇわ》

 双子は頷き合い、溜め息をつく。

《……ま、再会させるなら、ちょっとドラマチックな演出でも考えておこうか》

《だね》

 そう言って双子は、テーブルの下でパンと手を打った。



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