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第二十二部・岐路 編
CEP・パリコレ秋冬コレクション
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舞台裏は香澄が考えていたよりずっと広く、どのモデルがどの服を着るのか、分かりやすく纏められた一覧表が壁に貼られてある。
アクセサリーや靴一つにしても、間違えては一大事だからだ。
他にも大勢のモデルに素早くメイクを施せるよう、メイクをする場所は広く取られている。
ファッションウィークで活躍するメイキャップアーティストは、他のハイブランドからも依頼される事があり、CEPのメイクをした人が、別の日にはディアールやダヴィア&ガッリャーノのメイクをする事もざらにある。
一つのショーは大体長くても十五分ぐらいで終わってしまうが、その裏では莫大な金が動いている。
トップクラスのモデルは、ランウェイを一往復するだけで数百万のギャラが発生するし、自らオーディションに参加して売り込む、若手モデルでも数十万は支払われる。
モデルのレベルによって扱いの差が生じるのは仕方がなく、トップクラスモデルは招待したゲストのように、飛行機代からホテル代までをCEPが負担している。
だが売り込み中の駆け出しモデルは、ブランドによっては交通費も宿泊費も自費で、おまけにランウェイを往復しても十万円しかもらえない事もあるので、雲泥の差だ。
他にもゲストへの招待状は、特別感を出すためにプロのカリグラファーを雇って制作している。
ブランドによっては革製である事もあり、招待状は如何にファッションウィークに招待される事が特別かを知らしめる物になる。
他にも会場を設営する設備費や、佑と朔のイメージを再現する照明、空間デザイナーなど、多くのプロに多額の金を払い、ようやくショーを開催できるのだ。
高価な服を買ってくれる人たちに招待状を出し、一流のモデル達を使って一流の服を見せる。
それによりCEPの名が知れて、Chief Everyの名も広まっていく。
購買層の上部をCEPで狙い、比較的安価な層にはChief Every、飲食部門や、下着部門、いずれ展開するメイク、フレグランス部門で狙っていく。
SNSによる認知度は十分に高めたので、あとはあらゆる業界に進出していくのみだ。
佑が用意した黒いワンピースを着た香澄は、邪魔にならない場所に座っていた。
会場でBGMが流れ、バックヤードにあるモニターでは客が席についている様子が確認できる。
佑たちは英語で話して確認し、モデルたちはすぐランウェイに出ていけるよう列を作っていた。
(凄い……。これが世界最高峰の舞台裏……)
自分は何も手伝いをしていないのに、現場にいるだけで胸がドキドキ高鳴って緊張してしまう。
佑の話では、御劔家の関係者の他、マルコやルカたち、他にもまだ香澄が知らない、世界中の友人が招待されたようだ。
ドキドキして胸元を押さえていると、モデルたちに合図があった。
テーマとした人生の四季に合わせ、BGMはロックテイストにしたヴィバルディの『四季』が、サビとなる場所をメインとしてミックスされている。
大きなスピーカーで重低音が鳴り、クラブさながらという音響のなか、一人目にしてクライマックスになる服を着るモデルが、ランウェイを歩き始めた。
会場では〝生命の木〟がピンクに輝いて桜を表し、トップバッターの日本人モデルが、ヒラヒラと花びらのようにたなびく、薄ピンク色のドレスを身に纏い、さっそうとランウェイを歩いていった。
コレクションとなる服には、テーマに沿った統一性がなければならない。
四季を表す上で服は変化していくが、グラデーションするように変化をつけ、モデルが歩く順番も調整した。
各季節を表す、秋冬物の服がどんどん発表され、中にはプラスサイズのモデルのグラマラスな体型を利用した、ゴージャスな一点もあった。
ラストに冬の女王をイメージした、ボリュームのあるコートが披露されたあと、会場が拍手に包まれ、佑と朔がようやく微笑んだ。
そして彼らはスタッフに促され、ライトが当たる舞台に向かった。
(佑さん! 朔さん! 凄い!)
香澄は立ちあがって猛烈な勢いで拍手し、涙ぐんでモニターの近くまで向かう。
すると、スタッフの一人が話しかけてきました。
「赤松さん、舞台袖まで行ってみますか? 上手側はもう使わないので、このタイミングでステージを見てみてはどうかと、社長が仰っていました」
「えっ?」
戸惑っている間に、香澄はスタッフに誘導されてステージの上手まで連れて行かれた。
そこからそっとステージを覗くと、観客に向けて笑いかけている佑の姿が見えた。
(あぁ……、これがCEPでの佑さんの姿なんだ)
感動してポロッと涙を流した時、佑と朔がモデルたちと一緒にランウェイを歩き始める。
(スマホで動画撮りたいなぁ……)
世界最高峰の舞台に恋人がいると思うと、誇らしくてならない。
香澄はパチパチと小さく拍手をしながら、佑がモデルたちと一緒にランウェイを歩く姿を見守った。
彼は〝生命の木〟まで行き、折り返してセンターステージに戻ってくる。
(お疲れ様……! ずっと忙しかったから、今夜はたっぷり休んでね)
佑の姿が近くなった時、彼がこちらを見て微笑んだ。――ような気がした。
香澄は彼に分かるように、一生懸命パチパチと拍手をする。
これにてCEPのショーが無事終わろうとしていた時――。
「キャアッ!」と女性の悲鳴がし、何事かと思った時、一人の男が佑に襲いかかった。
アクセサリーや靴一つにしても、間違えては一大事だからだ。
他にも大勢のモデルに素早くメイクを施せるよう、メイクをする場所は広く取られている。
ファッションウィークで活躍するメイキャップアーティストは、他のハイブランドからも依頼される事があり、CEPのメイクをした人が、別の日にはディアールやダヴィア&ガッリャーノのメイクをする事もざらにある。
一つのショーは大体長くても十五分ぐらいで終わってしまうが、その裏では莫大な金が動いている。
トップクラスのモデルは、ランウェイを一往復するだけで数百万のギャラが発生するし、自らオーディションに参加して売り込む、若手モデルでも数十万は支払われる。
モデルのレベルによって扱いの差が生じるのは仕方がなく、トップクラスモデルは招待したゲストのように、飛行機代からホテル代までをCEPが負担している。
だが売り込み中の駆け出しモデルは、ブランドによっては交通費も宿泊費も自費で、おまけにランウェイを往復しても十万円しかもらえない事もあるので、雲泥の差だ。
他にもゲストへの招待状は、特別感を出すためにプロのカリグラファーを雇って制作している。
ブランドによっては革製である事もあり、招待状は如何にファッションウィークに招待される事が特別かを知らしめる物になる。
他にも会場を設営する設備費や、佑と朔のイメージを再現する照明、空間デザイナーなど、多くのプロに多額の金を払い、ようやくショーを開催できるのだ。
高価な服を買ってくれる人たちに招待状を出し、一流のモデル達を使って一流の服を見せる。
それによりCEPの名が知れて、Chief Everyの名も広まっていく。
購買層の上部をCEPで狙い、比較的安価な層にはChief Every、飲食部門や、下着部門、いずれ展開するメイク、フレグランス部門で狙っていく。
SNSによる認知度は十分に高めたので、あとはあらゆる業界に進出していくのみだ。
佑が用意した黒いワンピースを着た香澄は、邪魔にならない場所に座っていた。
会場でBGMが流れ、バックヤードにあるモニターでは客が席についている様子が確認できる。
佑たちは英語で話して確認し、モデルたちはすぐランウェイに出ていけるよう列を作っていた。
(凄い……。これが世界最高峰の舞台裏……)
自分は何も手伝いをしていないのに、現場にいるだけで胸がドキドキ高鳴って緊張してしまう。
佑の話では、御劔家の関係者の他、マルコやルカたち、他にもまだ香澄が知らない、世界中の友人が招待されたようだ。
ドキドキして胸元を押さえていると、モデルたちに合図があった。
テーマとした人生の四季に合わせ、BGMはロックテイストにしたヴィバルディの『四季』が、サビとなる場所をメインとしてミックスされている。
大きなスピーカーで重低音が鳴り、クラブさながらという音響のなか、一人目にしてクライマックスになる服を着るモデルが、ランウェイを歩き始めた。
会場では〝生命の木〟がピンクに輝いて桜を表し、トップバッターの日本人モデルが、ヒラヒラと花びらのようにたなびく、薄ピンク色のドレスを身に纏い、さっそうとランウェイを歩いていった。
コレクションとなる服には、テーマに沿った統一性がなければならない。
四季を表す上で服は変化していくが、グラデーションするように変化をつけ、モデルが歩く順番も調整した。
各季節を表す、秋冬物の服がどんどん発表され、中にはプラスサイズのモデルのグラマラスな体型を利用した、ゴージャスな一点もあった。
ラストに冬の女王をイメージした、ボリュームのあるコートが披露されたあと、会場が拍手に包まれ、佑と朔がようやく微笑んだ。
そして彼らはスタッフに促され、ライトが当たる舞台に向かった。
(佑さん! 朔さん! 凄い!)
香澄は立ちあがって猛烈な勢いで拍手し、涙ぐんでモニターの近くまで向かう。
すると、スタッフの一人が話しかけてきました。
「赤松さん、舞台袖まで行ってみますか? 上手側はもう使わないので、このタイミングでステージを見てみてはどうかと、社長が仰っていました」
「えっ?」
戸惑っている間に、香澄はスタッフに誘導されてステージの上手まで連れて行かれた。
そこからそっとステージを覗くと、観客に向けて笑いかけている佑の姿が見えた。
(あぁ……、これがCEPでの佑さんの姿なんだ)
感動してポロッと涙を流した時、佑と朔がモデルたちと一緒にランウェイを歩き始める。
(スマホで動画撮りたいなぁ……)
世界最高峰の舞台に恋人がいると思うと、誇らしくてならない。
香澄はパチパチと小さく拍手をしながら、佑がモデルたちと一緒にランウェイを歩く姿を見守った。
彼は〝生命の木〟まで行き、折り返してセンターステージに戻ってくる。
(お疲れ様……! ずっと忙しかったから、今夜はたっぷり休んでね)
佑の姿が近くなった時、彼がこちらを見て微笑んだ。――ような気がした。
香澄は彼に分かるように、一生懸命パチパチと拍手をする。
これにてCEPのショーが無事終わろうとしていた時――。
「キャアッ!」と女性の悲鳴がし、何事かと思った時、一人の男が佑に襲いかかった。
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