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第二十二部・岐路 編
ショー当日
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「お正月に会った麻衣さん? 彼女はマティアスとどうなっているの?」
「あら……、あらら……。ふふふ……」
麻衣の話になり、香澄はもっとニヤニヤする。
「あの二人、結婚指輪を買ったそうです。マティアスさんは配偶者ビザを取得するらしくて、その前に東京で住む家を決めて、一度ドイツに戻って家を片づける予定みたいです」
「いいわねぇ……。自分の身の回りの人が幸せになる姿は、見ているだけで幸せになるわ」
節子が微笑んだあと、アドラーが言った。
「私にできる事があれば何でも協力すると、マティアスに伝えてくれ」
「はい……!」
そのあと、フランスと日本の食材を使った純和風の料理が順番に出され、香澄は久しぶりの和食に舌鼓を打った。
**
そしてとうとう、CEPのショー本番となった。
チュイルリー公園は普段なら一般人が歩き、ルーブル美術館からも近いため、観光客も多い場所だ。
だがこの日ばかりは警備員が大勢配置され、招待状のない者は入れないようになっている。
パリコレ会場付近は、ゲストたちによるファッションショーになっているとも言える。
世界的に有名な俳優、女優、富豪たちが会場を訪れ、この日のためにドレスアップした、とっておきの一着を見せる。
勿論、着ているのはCEPの服だ。
CEP側からバッグをはじめ様々なアイテムをプレゼントするものの、それを着るかどうかはセレブ次第となる。
とはいえ、招待されたからにはそのブランドのアイテムに身を包むのは礼儀なので、ほとんどの人が何かしらCEPのアイテムを身につけている。
また、ハイブランドのショーには、一般人が招待される事もある。
そのブランドで沢山買い物をしている贔屓客に、ブランド側が招待するのだ。
ショーの招待状を送る他、あるブランドはその他の費用は自費の場合もあるし、別のブランドは飛行機代から宿泊代、ショーを見る時のメイクアップまで手厚く面倒を見てくれるところもある。
ショーが終わったあとは展示会での服の買い付けとなるため、限られた富裕層の客しか招待されないのだが。
CEPのショーには、勿論針山夫妻も訪れている。
クラウザージャパンの社長として律と陽菜も招待され、アンネと澪も来るのだとか。
翔は律が代表として出席する代わりに、日本で仕事をしている。
衛はそのような華々しい場は苦手なので、CEPが初めてパリコレに参加した時だけ見に来たあとは、日本で普通に過ごしているようだ。
それでも息子の仕事ぶりは気になっているようなので、ショーのスタッフが撮影した映像をあとで見ているらしい。
毎回帰国したあとは御劔家で食事会をし、ショーの映像を見て感想を言い合うのが通例になっているとか。
CEPのショーには例のリアムも招待されているらしく、彼はパリで澪と再会できるのを楽しみにしているらしい。
舞台裏ではショーが始まる五時間前から、モデルが入っての準備が始まっていた。
四時間前にはメイクが終わり、二時間前にはフィッティングをして衣装の最終確認をする。
準備が終わったモデルたちは椅子に座ってスマホを弄っていて、その様子を見ていると「慣れているな」と感じられた。
しかし一流モデルでもファッションウィークの大舞台は緊張するらしい。
プロなので、目に見えた動揺を見せていないだけだ。
CEPの顔とも言える日本人モデルとチラッと話したが、こんな事を言っていた。
『一週間前ぐらいからは食事の管理も含めて、リラックスした状態で本番に臨めるように調整していますね。勿論緊張はするんですが、普段からマインドフルネスや瞑想などもルーティンに入れていて、いざという時にガチガチにならない努力はしています』
一時間前にリハーサルを行い、会場に客が入る頃には、裏手は緊迫した空気に包まれていた。
佑も朔も朝から何も食べず、忙しそうに指示を出し、確認している。
スタイリストやメイキャップアーティストたちは、スタッフと分かるように黒い服を着ていた。
佑と朔は最後に挨拶のためにステージに出るが、スーツではなくCEPのカジュアルな服に身を包んでいた。
ショーではモデルが着ている服が主役なので、デザイナーは出過ぎた印象にならないように、との事らしい。
「あら……、あらら……。ふふふ……」
麻衣の話になり、香澄はもっとニヤニヤする。
「あの二人、結婚指輪を買ったそうです。マティアスさんは配偶者ビザを取得するらしくて、その前に東京で住む家を決めて、一度ドイツに戻って家を片づける予定みたいです」
「いいわねぇ……。自分の身の回りの人が幸せになる姿は、見ているだけで幸せになるわ」
節子が微笑んだあと、アドラーが言った。
「私にできる事があれば何でも協力すると、マティアスに伝えてくれ」
「はい……!」
そのあと、フランスと日本の食材を使った純和風の料理が順番に出され、香澄は久しぶりの和食に舌鼓を打った。
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そしてとうとう、CEPのショー本番となった。
チュイルリー公園は普段なら一般人が歩き、ルーブル美術館からも近いため、観光客も多い場所だ。
だがこの日ばかりは警備員が大勢配置され、招待状のない者は入れないようになっている。
パリコレ会場付近は、ゲストたちによるファッションショーになっているとも言える。
世界的に有名な俳優、女優、富豪たちが会場を訪れ、この日のためにドレスアップした、とっておきの一着を見せる。
勿論、着ているのはCEPの服だ。
CEP側からバッグをはじめ様々なアイテムをプレゼントするものの、それを着るかどうかはセレブ次第となる。
とはいえ、招待されたからにはそのブランドのアイテムに身を包むのは礼儀なので、ほとんどの人が何かしらCEPのアイテムを身につけている。
また、ハイブランドのショーには、一般人が招待される事もある。
そのブランドで沢山買い物をしている贔屓客に、ブランド側が招待するのだ。
ショーの招待状を送る他、あるブランドはその他の費用は自費の場合もあるし、別のブランドは飛行機代から宿泊代、ショーを見る時のメイクアップまで手厚く面倒を見てくれるところもある。
ショーが終わったあとは展示会での服の買い付けとなるため、限られた富裕層の客しか招待されないのだが。
CEPのショーには、勿論針山夫妻も訪れている。
クラウザージャパンの社長として律と陽菜も招待され、アンネと澪も来るのだとか。
翔は律が代表として出席する代わりに、日本で仕事をしている。
衛はそのような華々しい場は苦手なので、CEPが初めてパリコレに参加した時だけ見に来たあとは、日本で普通に過ごしているようだ。
それでも息子の仕事ぶりは気になっているようなので、ショーのスタッフが撮影した映像をあとで見ているらしい。
毎回帰国したあとは御劔家で食事会をし、ショーの映像を見て感想を言い合うのが通例になっているとか。
CEPのショーには例のリアムも招待されているらしく、彼はパリで澪と再会できるのを楽しみにしているらしい。
舞台裏ではショーが始まる五時間前から、モデルが入っての準備が始まっていた。
四時間前にはメイクが終わり、二時間前にはフィッティングをして衣装の最終確認をする。
準備が終わったモデルたちは椅子に座ってスマホを弄っていて、その様子を見ていると「慣れているな」と感じられた。
しかし一流モデルでもファッションウィークの大舞台は緊張するらしい。
プロなので、目に見えた動揺を見せていないだけだ。
CEPの顔とも言える日本人モデルとチラッと話したが、こんな事を言っていた。
『一週間前ぐらいからは食事の管理も含めて、リラックスした状態で本番に臨めるように調整していますね。勿論緊張はするんですが、普段からマインドフルネスや瞑想などもルーティンに入れていて、いざという時にガチガチにならない努力はしています』
一時間前にリハーサルを行い、会場に客が入る頃には、裏手は緊迫した空気に包まれていた。
佑も朔も朝から何も食べず、忙しそうに指示を出し、確認している。
スタイリストやメイキャップアーティストたちは、スタッフと分かるように黒い服を着ていた。
佑と朔は最後に挨拶のためにステージに出るが、スーツではなくCEPのカジュアルな服に身を包んでいた。
ショーではモデルが着ている服が主役なので、デザイナーは出過ぎた印象にならないように、との事らしい。
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