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第二十二部・岐路 編

ホテルに来た双子

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 それから三日後の夜、ホテルに双子がやってきた。

 双子はいつも通りお揃いのデザインで、色違いのスーツを着こなしていた。

「「カスミ~!」」

「わっ」

 部屋のドアを開けるなり、双子がガバッと抱きついてきて、香澄は悲鳴を上げる。

「大丈夫? 怪我したって聞いたけど」

「だ、大丈夫です! わ、わ」

 双子は香澄の体をクルクルと回し、腕を上げさせ、下ろし、また体を回してくる。

「落ち着け」

 その時、呆れた佑が香澄の手を引いて抱き寄せ、双子はブーブーと文句を言う。

「お前ら、ショーの準備はいいのか?」

「いい感じだよ。っていうか、ディナー時間だし息抜きしてもいいじゃん」

「そうそう。お前に言われるまでもないし」

 双子は佑に言い返したあと、香澄にニコニコ笑いかけてくる。

「カスミ、腹減ってない? お洒落して一緒にレストラン行こうよ」

「何でも好きなもん頼んでいいよ」

「ありがとうございます」

 ロサンゼルスでの事に触れず、いつも通り接してくれるのは、双子なりの優しさなのだろう。

「香澄、着替えておいで」

「はぁい」

 佑に言われ、香澄はウォークインクローゼットに向かう。

 リビングから立ち去る辺りから、三人が小さな声で話し始めたのが聞こえた。

 積もる話があると思った香澄は、ゆっくり着替えようと思ったのだった。





《カスミ、どう?》

 アロイスにフランス語で尋ねられた佑は、溜め息をつく。

《見ての通りだ。表向きは元気を取り戻している。……だが内面はどうか分からない。俺もかなり精神的にやられている》

 双子は佑がとった手段を思い出し、気まずそうに目を逸らす。

『俺は香澄を競り落とした男、エイデン・アーチボルドになり、必要があれば彼女を抱くつもりだ』

 電話でそう告げた佑の悲愴な声を、双子はしっかり覚えている。

 だから彼らは、佑と香澄が今どういう状況になっているかを理解していた。

《……まぁ、蓋を開けたらタスクでした。ってなっても、犯された時の恐怖が帳消しになった訳じゃないからな。誘拐されてた間、どんな目に遭っていたか分からないし》

《運良くテオとソフィアがいたのは、本当に良かったよ。……それでもまた捕まっちゃった訳だけど》

《テオたちに礼を言わないといけないな。今はまだロスなのか?》

 佑は香澄を保護してくれた恩人の顔を思い浮かべる。

《西海岸で少しゆっくりしたあと、東海岸に戻るはずだ。あいつの住まいはNYだし、パリからも近い。ここでの仕事が終わったあとに、NYに行ってもいいんじゃないか?》

 クラウスがそう言うが、アロイスが首を捻る。

《でもカスミはどうかな? テオたちの事を恩人と思っていても、彼らの顔を見ると誘拐されていた時の事を思いだすかもしれない。エミリアの時みたいに記憶を失ってる訳じゃないけど、もう少し落ち着いてからでもいいんじゃない?》

《一理あるな……》

 佑は溜め息をつき、脚を組み替える。

《テオは事情を分かっているし、挨拶が遅れたぐらいで気を悪くする奴じゃないよ。そもそも、メッセージとかで一応お礼は言ったんだろ?》

 アロイスに尋ねられ、佑は頷く。

《ジェットの中から無事に救出した旨は伝えた。落ち着いたら礼をしに行くと言ったら、構わなくていいと言っていたが……。まぁ、落ち着いてからのほうがいいのかもしれないな》

 佑は知らずとまた溜め息をつく。

《なかなか落ち着かないけどさ、日本に帰ったら少しゆっくりしなよ》

 クラウスに言われ、佑は頷いた。

《そうだな。彼女と一緒に温泉でも行って、ゆっくり休養したい》

《温泉……?》

 しみじみと話していたのに、アロイスとクラウスがピクリと反応する。
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