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第二十一部・フェルナンド 編
結婚指輪を買いに
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いっぽうで時を少し遡り、札幌。
週末になり、麻衣は少しよそ行きの服を着てマティアスと共に出かけた。
身につけているのはすべてChief Everyのアイテムだ。
札幌にいる友人と一緒にパーソナルカラーを診断してもらうと、イエベ春と言われたので、なるべくそのカラーを選択して服を買うようにしている。
今日はやや青みがかったグレーのロングタイトスカートに、すみれ色のニットを着ている。
コートはベージュブラウンのダッフルコートで、これはもともと持っていた物だ。
マティアスは荷物の中からスーツを出し、わざわざ一度クリーニングにだし、パリッと糊が利いたワイシャツと共に身につけている。
そんな二人が向かったのは、円山エリアにある結婚指輪の店だ。
二人はかねてから目を付けていた桜模様の結婚指輪を買う事にし、デートがてらそちらに赴いたのだ。
サイズさえ合えばオンラインで購入してもいいかと思っていたのだが、偶然にも札幌に店舗があったので、予約した上で訪れる事にした。
「予約していたシュナイダーです」
マティアスが名乗ると、パンツスーツを着た女性スタッフは笑顔で「お待ちしておりました」と二人を中にいざなった。
明るくて解放感のある店内にあるショーケースには、様々なリングが展示されている。
奥にはカウンセリングのためのブースがあり、半透明のしきりで三つほどの個室が作られていた。
二人は少し店内を見させてもらったあと、個室に案内され、ご丁寧にもドリンクメニューを出され、コーヒーを頼んだ。
(お洒落な店は、サービスまでお洒落なんだなぁ……)
アクセサリーを買いに来て飲み物を出されると思わなかったので、逆にその行き届いたサービスに緊張してしまった。
「前もって購入したい商品を、オンラインで見てきたのですが」
マティアスが言い、スタッフは「ありがとうございます」と微笑む。
そのあと麻衣の指輪のサイズを確認し、希望している桜柄の物のサンプルを嵌めさせてもらった。
(わぁ……)
ずっと、指輪とは縁遠い生活をしていた。
ロングネックレスならスポッと被ればいいが、ちんまりとした留め具のネックレスや、お洒落で華奢な指輪は『着けてみよう』とすら思わなかった。
いっぽうで香澄が女性らしいアクセサリーを着けているのを見ると、人形でも見ているような気持ちになり、『可愛い、可愛い』と褒めちぎっていた。
だから、いざ自分が細いリングを嵌めるとなると、照れくさくて堪らない。
「マイ、見せてくれ」
第一希望の指輪を嵌めると、その手をマティアスが握ってくる。
(うう、うううう…………)
麻衣はふっくらした手を握られ、ジーッ見つめられて真っ赤になっていた。
「可愛い……」
なのにマティアスときたら、うっとりとした顔でそんな事を呟くので、さらに赤くなってしまう。
(綺麗なお姉さんが見てるのに! 『こんなのの、どこがいいの?』って思われてたらどうしよう)
もう迷わず彼を愛すると決めたのに、自分の容姿が関わると一気に気弱になってしまう。
「マ、マティアスさんの指輪は? ほら、カタログだと、二つ重ねて一つのデザインになる奴があって素敵だけど、男の人ってあんまりカラフルなのは嫌かな? とか、色々言ったじゃない。で、お店に行ってから決めようっていう話になって」
麻衣は必死に自分の指から、マティアスの気を逸らそうとする。
「マイはこの虹色のカラーと、桜の模様が表に見えているほうがいいんだろう?」
「う、うん。そのほうが見てて気分が上がると思うから」
「それで、カラーはこのタンザナイト……青から紫のグラデーションのを希望しているんだよな?」
「うん」
「それでは、実際にお二人でつけてみますか?」
スタッフは一度立って席を外し、すぐにマティアスの指輪を用意して戻ってきた。
(わ……)
麻衣は彼の太くて長い指に結婚指輪が嵌まる様子を見て、こっそりとドキドキしてしまう。
(この人、私の旦那さんになるんだ。お揃いの指輪をつけて……。うわあああ……)
固まって無言になって悶えている間、マティアスは自分の手をしげしげと見ている。
週末になり、麻衣は少しよそ行きの服を着てマティアスと共に出かけた。
身につけているのはすべてChief Everyのアイテムだ。
札幌にいる友人と一緒にパーソナルカラーを診断してもらうと、イエベ春と言われたので、なるべくそのカラーを選択して服を買うようにしている。
今日はやや青みがかったグレーのロングタイトスカートに、すみれ色のニットを着ている。
コートはベージュブラウンのダッフルコートで、これはもともと持っていた物だ。
マティアスは荷物の中からスーツを出し、わざわざ一度クリーニングにだし、パリッと糊が利いたワイシャツと共に身につけている。
そんな二人が向かったのは、円山エリアにある結婚指輪の店だ。
二人はかねてから目を付けていた桜模様の結婚指輪を買う事にし、デートがてらそちらに赴いたのだ。
サイズさえ合えばオンラインで購入してもいいかと思っていたのだが、偶然にも札幌に店舗があったので、予約した上で訪れる事にした。
「予約していたシュナイダーです」
マティアスが名乗ると、パンツスーツを着た女性スタッフは笑顔で「お待ちしておりました」と二人を中にいざなった。
明るくて解放感のある店内にあるショーケースには、様々なリングが展示されている。
奥にはカウンセリングのためのブースがあり、半透明のしきりで三つほどの個室が作られていた。
二人は少し店内を見させてもらったあと、個室に案内され、ご丁寧にもドリンクメニューを出され、コーヒーを頼んだ。
(お洒落な店は、サービスまでお洒落なんだなぁ……)
アクセサリーを買いに来て飲み物を出されると思わなかったので、逆にその行き届いたサービスに緊張してしまった。
「前もって購入したい商品を、オンラインで見てきたのですが」
マティアスが言い、スタッフは「ありがとうございます」と微笑む。
そのあと麻衣の指輪のサイズを確認し、希望している桜柄の物のサンプルを嵌めさせてもらった。
(わぁ……)
ずっと、指輪とは縁遠い生活をしていた。
ロングネックレスならスポッと被ればいいが、ちんまりとした留め具のネックレスや、お洒落で華奢な指輪は『着けてみよう』とすら思わなかった。
いっぽうで香澄が女性らしいアクセサリーを着けているのを見ると、人形でも見ているような気持ちになり、『可愛い、可愛い』と褒めちぎっていた。
だから、いざ自分が細いリングを嵌めるとなると、照れくさくて堪らない。
「マイ、見せてくれ」
第一希望の指輪を嵌めると、その手をマティアスが握ってくる。
(うう、うううう…………)
麻衣はふっくらした手を握られ、ジーッ見つめられて真っ赤になっていた。
「可愛い……」
なのにマティアスときたら、うっとりとした顔でそんな事を呟くので、さらに赤くなってしまう。
(綺麗なお姉さんが見てるのに! 『こんなのの、どこがいいの?』って思われてたらどうしよう)
もう迷わず彼を愛すると決めたのに、自分の容姿が関わると一気に気弱になってしまう。
「マ、マティアスさんの指輪は? ほら、カタログだと、二つ重ねて一つのデザインになる奴があって素敵だけど、男の人ってあんまりカラフルなのは嫌かな? とか、色々言ったじゃない。で、お店に行ってから決めようっていう話になって」
麻衣は必死に自分の指から、マティアスの気を逸らそうとする。
「マイはこの虹色のカラーと、桜の模様が表に見えているほうがいいんだろう?」
「う、うん。そのほうが見てて気分が上がると思うから」
「それで、カラーはこのタンザナイト……青から紫のグラデーションのを希望しているんだよな?」
「うん」
「それでは、実際にお二人でつけてみますか?」
スタッフは一度立って席を外し、すぐにマティアスの指輪を用意して戻ってきた。
(わ……)
麻衣は彼の太くて長い指に結婚指輪が嵌まる様子を見て、こっそりとドキドキしてしまう。
(この人、私の旦那さんになるんだ。お揃いの指輪をつけて……。うわあああ……)
固まって無言になって悶えている間、マティアスは自分の手をしげしげと見ている。
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