【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
1,385 / 1,559
第二十一部・フェルナンド 編

その色じゃないといや

しおりを挟む
 プライベートジェットに乗った二人は、手を繋いだまま最後部のベッドルームに向かう。

 その前に、佑は客室乗務員に温かいココアを頼んだ。

「この格好は嫌だろうから着替えるよ。香澄も別の服に着替えたほうがいい」

 佑はクローゼットを開き、着替えを取りだす。

 いつもこのジェットに乗った時に着る、プリンパルフェのモコモコ部屋着を見た香澄は、気持ちが緩んだのを感じた。

「……シャワー……、浴びたい。……いい?」

「いいよ。嫌でなかったら、一緒に浴びよう」

 佑は着ていた物をすべてを脱ぎ、ゴミ袋に丸めて放り込んだ。

 服を大切にしている彼が、一式をためらいなく捨てた姿を見て、香澄も気持ちを決めた。

 ケープを脱ぎ、身に纏っている物をすべて脱いでポイポイとゴミ袋に入れる。

 佑はそのゴミ袋を、隣の部屋に移した。

「おいで」

 佑は両手で胸元と秘部を隠している香澄に手を差し伸べ、バスルームに向かう。

 彼は洗面所でカラーコンタクトを外し、シャワーのコックを捻るとフックにシャワーヘッドを引っかける。

 お湯を素肌に浴びると、心の中で凝っていたものが少しずつ柔らかくなっていく気がした。

 佑は「はぁ……」と息を吐いた香澄を優しく抱いて、背中を撫でてきた。

「本当にすまない。一生をかけて償う」

 彼は後悔にまみれた声で呟き、それを聞いた香澄はギュッと腕に力を込める。

「……じゃあ、一生側にいて」

「勿論だよ」

「私を……、捨てないで……」

 助けられたのがいまだ信じられず、心の奥底にはまだ絶望がべったりとこびりついている。

 自分を抱いたのは佑だと分かっていても、犯されると思った時の恐怖はなかなか拭えない。

 今と〝あの時〟は違うのに、どうしてかマティアスに偽装された時の事を思いだした。

〝あの時〟だってマティアスはうまくエミリアをごまかし、香澄を抱いてなんかいなかった。

 結果的に自分は無事なのに、なぜか心には『汚れてしまった』という感覚があり、いつ佑に嫌われ、捨てられるか分からない恐怖に包まれていた。

「捨てたりするもんか。俺のほうこそ、いつ香澄に捨てられるか心配でビクビクしてる」

「私は佑さんを捨てたりしない」

 小さな声で言った香澄は佑を抱く腕に力を込め、彼の胸元に顔をぐりぐりと押しつける。

 そのあと、涙でグシャグシャになった顔で懇願した。

「……っ、キス、……して」

 今になって恐怖が蘇ってきたのか、彼女の体は酷く震えていた。

 佑は両手で彼女の頬を包み、ヘーゼルの目で見つめてくる。

「……佑さんの目は、その色じゃないといや」

「うん」

 香澄の言葉を聞き、佑は泣きそうな表情で微笑んで優しいキスをくれた。

「もっと」

「ん」

 ザアザアとシャワーが降り注ぐなか、佑はしっかりと香澄を抱き締め、舌を絡めてくる。

「ン……、……ん、……んぅ……」

 香澄も佑を抱き返し、これ以上なく密着しているのに、もっと一つになりたいと体を押しつけた。

 香澄は口腔を探る佑の舌を吸い、自身の舌も擦りつける。

 息を吸うと、まだあの香水の匂いがしたので首を左右に振り、強張った顔で佑に言った。

「この香水、二度とつけないで」

「分かった」

 佑は香澄の要求を聞き、彼女を安心させようとする。

「……私の、もの……」

 香澄は佑を抱き締めて頬ずりし、さらにギュウギュウと体を押しつける。

「俺のすべては香澄のものだよ」

「ん……」

 目の前にいるのは佑だ。

 エイデン・アーチボルドは佑だったのに、香澄の心はまだ硬く冷えたままだ。

 両腕で思いきり佑を抱き締めて、いつものように存在を確かめても、まだまだ「足りない」と本能が彼を求める。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

処理中です...