【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
1,384 / 1,559
第二十一部・フェルナンド 編

Kの仕事

しおりを挟む
 とはいえ、最高レベルの技術者への依頼は安くない。

 だが佑はKが大金を提示しても、支払う事をまったく躊躇わなかった。

 その思い切りの良さと決断力が、ますます気に入った。

 Kは佑との通信を終えたあと、〝仕事〟のためにひたすら手を動かした。

 佑からフェルナンドについて知っている大まかな情報を聞いたあと、Kはコネクターナウのアプリを作成した会社をクラッキングし、その中から〝F〟というハンドルネーム、そして特徴的なアイコンを持つユーザーを捜した。

 そこからコスモス・レイン社のeコミュニケーションを〝バラし〟、GPS、ブルートゥースなどを丸裸にした。

 そこまで複雑なクラッキングを素早くできるのは、彼が普段〝こういう事〟をスムーズに行えるよう、特殊なプログラムを作っているからだ。

 必要な時はお手製のプログラムに流し込み、作業を最速化する。

 そしてKは、フェルナンドを破滅に追い込むための芸術的なコードを、美しく書き上げていった。

 プログラミングのコードは、ドミノ作品に似ている。

 上手に作ればその分美しい、無駄のないコードができあがる。

 Kは正確なコードを素晴らしいスピードで書き上げ、短期間で納品する技術を持っている。

 彼はコードを書く傍ら、ダークウェブサイトに足のつかないアカウントを作り、佑に香澄を競り落とさせた。

 佑は愛する女性のためならと、金に糸目をつけずボンボンと落札金額を跳ね上げていくので、見ていて爽快なほどだった。

 現地のホテルで佑がフェルナンドに見せた偽造パスポートも、Kがアメリカ国内の知り合いに話をつけて作らせた物だ。

 佑はプライベートジェットを飛ばしてロサンゼルスに向かったあと、フィグウッドの特殊メイクアーティストの力を借り、エイデン・アーチボルドとなる準備をした。

 その用意はKには考えつかなかった事なので、『さすがタスク・ミツルギ』と感嘆したものだ。

 香澄がエイデン・アーチボルドに落札されたあとは、佑がホテルに先回りし、Kの指示通りに隠しカメラを仕掛けていく。

 フェルナンドのノートパソコンは、スマホからすでに乗っ取っり済みで、あとは香澄の身柄が無事に佑に引き渡されるまで泳がせておいた。

 ホテルの部屋から出て香澄の無事を確かめたあとは、佑から〝合図〟をもらいエンターを押すだけだ。

 ビールを用意したKは、ニヤニヤしながらカメラの向こうのフェルナンドを見守る。

 彼が焦って何か行動を起こせば、それを見越したプログラムを起動させる。

 BGMにエルガーの『威風堂々』を選んだのは、彼の好きなイギリススパイ映画で使用されていたからだ。

『あーあ、めっちゃ楽しかった』

 心の底から笑ったあと、Kは佑に別れの挨拶を送り、ビールの残りをグイッと呷った。



**



 空港には佑のプライベートジェットがあり、その前に松井と小金井、小山内が立っていた。

「赤松さん、生きていて何よりです」

 松井に言われ、香澄はクシャリと顔を歪めた。

 様々な感情、思いがこみ上げ、何一つ言葉にならない。

 その代わりに涙が溢れて頬を伝い、香澄は嗚咽し始めた。

「すっ……、すみません……っ。わた、わた、――し、……っ、何をやっても駄目で……っ」

 どれだけ迷惑を掛けたのか、考えるだけで胸が苦しくなる。

 土下座をして、迷惑料を払ってもまだ足りない。

 そういう問題ではないからだ。

 悲嘆に暮れる香澄に、松井はいつもと変わらず温厚に淡々と言い聞かせた。

「赤松さん、いいですか? この場に、誰一人としてあなたを責める人はいません。あなたは社長の唯一の弱点だという事を、誰もが分かっています。あなただけでなく、世界中にいる要人のパートナーや子供は、狙われやすいのです。あなたもその一人だっただけの話です。あなたは被害者で、何も落ち度はありません。誘拐された赤松さんは、長い間心理的負担を抱え、正常な判断を下せずにいたでしょう。その中で勇気を出して連絡をしてくださったからこそ、我々が動く事ができました」

 いつもと変わらない松井の言葉を聞いた香澄は、少し落ち着きを取り戻す。

「よく生き延びてくれました。とても怖い思いをしたでしょう」

 改めて言われ、香澄はグスッと鼻を啜って頷いた。

「これから我々は、どうしてもパリに向かわなくてはなりません。ですが社長には可能な限り赤松さんの側にいてもらうつもりです。どうかゆっくり心を癒やしてください」

 そこまで言い、松井は微笑んで香澄の肩をポンポンと叩いてきた。

「お疲れ様です。飛行機でゆっくり休んでください」

「はい……」

 また疲労感で一杯の香澄は、小さな声で返事をし頷いた。

 佑は彼女の肩を抱いて「中に入ろう」と促し、松井に「あとは任せます」と告げた。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...