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第二十一部・フェルナンド 編
鉄槌
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《ダークウェブサイトで日本人の女の子をオークションに掛けていた〝F〟とは、お前だな?》
どこから調べたのか、あのオークションに参加していた何者かがフェルナンドに電話を掛けてきたのだ。
『何の事だ?』
フェルナンドはとっさに誤魔化す。
《嘘をつこうとしても無駄だ。匿名のタレコミがあって、あれはお前だという情報が出回っている。その匿名はお前の連絡先も教えてくれたぞ》
『!!』
自分の個人情報がネットに出回っていると知り、フェルナンドは思わず罵りの言葉を口にした。
《オークションの閲覧履歴や〝商品〟のデータが消えた上、今までコレクションしたデータのすべてが破壊された! 匿名が言うにはお前が原因だという事じゃないか! クラッキングプログラムを仕込んだのか!? この犯罪者め! このままタダで済むと思うなよ!》
相手は一方的にまくし立てたあと、電話を切った。
残された彼はただ、――呆然とするしかできなかった。
その時、部屋のチャイムが鳴った。
『……なんだ、畜生……』
ボディガードに出るよう促すと、部屋の出入り口に警察が立っていた。
『あなたが薬物を使って騒いでいると匿名の通報があり、ホテルから連絡を受けました。捜査のご協力をお願いします』
『な……っ、薬物など持っていない!』
ギョッとしたフェルナンドは立ち上がったが、警官に見張られたままスイートルーム内を捜索される羽目になる。
薬物など持っていないため、フェルナンドはこれも佑の差し金かとイライラしながら無駄な捜索を見守った。
(ありもしない物を探して馬鹿な警察め!)
――が、警官がベッドマットの下から小さな袋を取りだした。
その中には、白い粉が入っている。
『これに見覚えはありますか?』
目を剥いたフェルナンドは、今日何度目になるか分からない悪態をついた。
『畜生!! あいつ、ぶっ殺してやる!!』
**
香澄は佑に抱きつきながら、スマホの画面の中でフェルナンドが絶叫しているのを見ていた。
〝処刑〟が終わったあと、スマホの通知が鳴る。
佑がトンとアプリを開くと、Kという人物からメッセージが入っていた。
【あんたがオークションで払った金は、ワンクッション置いたあと、そっくりあんたの口座に戻した。残りは適当に寄付しておくよ。足がつかないようにやったから、安心しな】
彼と一緒にスマホを見ていた香澄は、佑が誰かと取り引きしたのだと察した。
佑はKに【ありがとう】と返信する。
【久しぶりに楽しいクラックができたよ。依頼の分はきっちり働いた。あとはあんたが約束を守るだけだ。関係者にもしっかり黙らせておきなよ。あとは関わらない。前に言った通り、何かあれば連絡していいよ。じゃあね!】
そのメッセージを見たあと、佑はスマホをポケットにしまった。
「……返事、……しなくていいの?」
ポツンと呟いた香澄の頭を、佑はポンポンと撫でる。
「もうすべて終わったんだ。彼も〝終わり〟と言っている」
「……そう……」
香澄は呟いて頷き、ぼんやりとしたまま佑にしがみつく。
そのまま車がロサンゼルス空港に着くまで、二人は何も言わず抱き合っていた。
**
某所、モニターが沢山並んだ部屋で、ジーンズにパーカーを着てキャップを被ったKは『あー、楽しかった』と伸びをし、ビールの瓶を開けた。
『仕事は楽しかったし、気前よく支払ってくれるし、いい仕事だったな』
知り合いのAから連絡があったと思えば、K自身も株を所有しているChief Everyの社長から依頼があって驚いた。
Kは表向き凄腕プログラマーとしてフリーランスで働いているが、その一方で〝裏〟の仕事をしていた。
〝K〟という通称は、誰かがネット上で【キングのKだ】と言っていたり、【本名の一部だ】とも言っていたが、まったく違う。
相棒とも言える、今は亡き愛犬の名前がケヴィンだったからだ。
この仕事をしていて、裏の依頼を受ける時は、大体【気に食わない奴がいるから、痛い目を見せてほしい】というものがほとんどだった。
それに引き換え、今回依頼をしてきた御劔佑は【誘拐された婚約者を救いたい】と、何ともピュアな事を言う。
彼を応援しているKとしては、ぜひとも協力してあげたいと思った。
どこから調べたのか、あのオークションに参加していた何者かがフェルナンドに電話を掛けてきたのだ。
『何の事だ?』
フェルナンドはとっさに誤魔化す。
《嘘をつこうとしても無駄だ。匿名のタレコミがあって、あれはお前だという情報が出回っている。その匿名はお前の連絡先も教えてくれたぞ》
『!!』
自分の個人情報がネットに出回っていると知り、フェルナンドは思わず罵りの言葉を口にした。
《オークションの閲覧履歴や〝商品〟のデータが消えた上、今までコレクションしたデータのすべてが破壊された! 匿名が言うにはお前が原因だという事じゃないか! クラッキングプログラムを仕込んだのか!? この犯罪者め! このままタダで済むと思うなよ!》
相手は一方的にまくし立てたあと、電話を切った。
残された彼はただ、――呆然とするしかできなかった。
その時、部屋のチャイムが鳴った。
『……なんだ、畜生……』
ボディガードに出るよう促すと、部屋の出入り口に警察が立っていた。
『あなたが薬物を使って騒いでいると匿名の通報があり、ホテルから連絡を受けました。捜査のご協力をお願いします』
『な……っ、薬物など持っていない!』
ギョッとしたフェルナンドは立ち上がったが、警官に見張られたままスイートルーム内を捜索される羽目になる。
薬物など持っていないため、フェルナンドはこれも佑の差し金かとイライラしながら無駄な捜索を見守った。
(ありもしない物を探して馬鹿な警察め!)
――が、警官がベッドマットの下から小さな袋を取りだした。
その中には、白い粉が入っている。
『これに見覚えはありますか?』
目を剥いたフェルナンドは、今日何度目になるか分からない悪態をついた。
『畜生!! あいつ、ぶっ殺してやる!!』
**
香澄は佑に抱きつきながら、スマホの画面の中でフェルナンドが絶叫しているのを見ていた。
〝処刑〟が終わったあと、スマホの通知が鳴る。
佑がトンとアプリを開くと、Kという人物からメッセージが入っていた。
【あんたがオークションで払った金は、ワンクッション置いたあと、そっくりあんたの口座に戻した。残りは適当に寄付しておくよ。足がつかないようにやったから、安心しな】
彼と一緒にスマホを見ていた香澄は、佑が誰かと取り引きしたのだと察した。
佑はKに【ありがとう】と返信する。
【久しぶりに楽しいクラックができたよ。依頼の分はきっちり働いた。あとはあんたが約束を守るだけだ。関係者にもしっかり黙らせておきなよ。あとは関わらない。前に言った通り、何かあれば連絡していいよ。じゃあね!】
そのメッセージを見たあと、佑はスマホをポケットにしまった。
「……返事、……しなくていいの?」
ポツンと呟いた香澄の頭を、佑はポンポンと撫でる。
「もうすべて終わったんだ。彼も〝終わり〟と言っている」
「……そう……」
香澄は呟いて頷き、ぼんやりとしたまま佑にしがみつく。
そのまま車がロサンゼルス空港に着くまで、二人は何も言わず抱き合っていた。
**
某所、モニターが沢山並んだ部屋で、ジーンズにパーカーを着てキャップを被ったKは『あー、楽しかった』と伸びをし、ビールの瓶を開けた。
『仕事は楽しかったし、気前よく支払ってくれるし、いい仕事だったな』
知り合いのAから連絡があったと思えば、K自身も株を所有しているChief Everyの社長から依頼があって驚いた。
Kは表向き凄腕プログラマーとしてフリーランスで働いているが、その一方で〝裏〟の仕事をしていた。
〝K〟という通称は、誰かがネット上で【キングのKだ】と言っていたり、【本名の一部だ】とも言っていたが、まったく違う。
相棒とも言える、今は亡き愛犬の名前がケヴィンだったからだ。
この仕事をしていて、裏の依頼を受ける時は、大体【気に食わない奴がいるから、痛い目を見せてほしい】というものがほとんどだった。
それに引き換え、今回依頼をしてきた御劔佑は【誘拐された婚約者を救いたい】と、何ともピュアな事を言う。
彼を応援しているKとしては、ぜひとも協力してあげたいと思った。
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