【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
1,381 / 1,559
第二十一部・フェルナンド 編

私のヒーロー

しおりを挟む
 ホテルの玄関を抜けると、目の前に黒塗りの高級車が停まっている。

 外国人男性がドアを開き、エイデンと香澄が乗ったのを確認してから車が発進した。

(にげ……ないと……)

 後部座席に座らされた香澄は、走行中の車のドアノブに手を掛けた。

 エイデンはポケットからスマホを取りだしてどこかに連絡をしようとしていたが、香澄の行動を見てギョッとし、彼女の体を抱き寄せた。

! 駄目だ!」

 で窘められ、白く濁っていた香澄の意識が急激にクリアになる。

「…………ぇ…………?」

 香澄はノロノロとエイデンを見る。

 今聞いた彼の声は、あの耳障りな高い声ではなく、低く艶のある、とても心地いい声だ。

「……っくそ、蒸れる……っ」

 エイデンは毒づき、ネクタイを緩め、シャツのボタンを外すと、首元に両手を掛けた。

 そして、――べろんっ、とエイデンの頭部が

「………………は…………?」

 呆気にとられている香澄の目の前に現れたのは、大量の汗で髪を顔に貼り付かせている――佑だった。

「香澄……っ!」

 まだ現実を理解していない香澄を、青い目の佑が抱き締めてくる。

 痛いほどきつく抱き締められた時に、彼の体が酷く震えているのが分かった。

「……たす、…………く、………………さん?」

 まだ彼女は何が起こったのか分かっていない。

 けれどその前に、ポロッと涙が零れていた。

 一度体を離した佑は、青い目で香澄を見つめ、泣きそうな顔で笑う。

 まだその目、口元には、エイデンの顔と馴染ませていた塗料が残っていた。

「怖かったよな、ごめん。――心から謝る。俺を許さなくていい」

 佑は香澄の頭を優しく撫で、彼女の反応を窺いながら優しく唇を重ねてきた。

 いつもの彼の唇と温もりを感じ、香澄の胸に安堵が広がってゆく。

「た……っ、たすくっ、さっ? ――たすっ、――――ぅぅ、う、……っあぁあああぁああ……っ!!」

 香澄はこみ上げるものを堪えきれず、佑にしがみついて吠えるように号泣する。

 佑はブルブルと震える香澄の体を抱き締め、彼女の首元に顔を埋める。

 ――良かった。

 ――信じていて良かった。

 ――やっぱり私のヒーローは、助けに来てくれた。

 香澄は力の限り泣き、佑が着ているスーツをクシャクシャになるまで握りしめた。



 やがて香澄が落ち着きを取り戻した頃、佑が説明し始めた。

「さっき合流したのは河野だ。俺はフィグウッドの特殊メイクのアーティストに協力してもらって、エイデン・アーチボルドという架空の男になりきった」

 フィグウッドとは、ロサンゼルスに本拠地を置く映画の王国だ。

 あまりに精巧な特殊メイクで、本当に白人男性にしか見えなかった。

 それはフェルナンドも同じだろう。

「そして後始末は――これからしてもらう」

 佑はスマホを取りだし、アプリを立ち上げると音声入力をした。

『K、ド派手なフィナーレを頼む』

 すぐに通知が鳴り、『ライブ配信』というタイトルのURLが送られてきた。

「すべてを失え」

 佑は怨讐の籠もった声で呟き、香澄の肩を抱いたままURLをタップした。

 画面にはあのスイートルームが映る。

 カメラは先に部屋に来ていた佑が、事前に仕掛けたものだった。



**



『やったぞ……! これであいつを苦しめられる!』

 フェルナンドは爛々と目を光らせ、ノートパソコンを操作して香澄が犯された動画を編集していた。

 画面の中の彼女が泣き叫んでいようが、顔色を真っ青にしてすっかり放心しきっても、彼は良心の呵責を感じない。

 憎い男が大切にしている女性なので、かえって彼女が蹂躙されているのを見るのは何より気持ち良かった。

 一通り動画を確認したあと、最初と最後の会話をカットする。

 そして佑に送るのに最も効果的な演出はどうすればいいかと、ニヤニヤ笑って考えながら、もう一度動画を流していた。

 ――その時、突然画面が黒く暗転したかと思うと、音量を最適にしていたスピーカーから、最大のボリュームでエルガーの『威風堂々』第一番が流れ始めた。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

処理中です...