【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
1,373 / 1,559
第二十一部・フェルナンド 編

やぁ、お帰り

しおりを挟む
『……ジョシュ?』

 それでもドアを開けない約束を守って声を掛けた時、一番聞きたくない声がした。

『ミズ・アカマツ。この少年に害を与えられたくなくば、ドアを開けろ』

 フェルナンドのボディガードの声がし、香澄は背筋を震わせる。

『お前がアルダーソン家の部屋にいたのは分かっていた。内側から開かないなら、開かせるまで。この少年が一人で歩いていた時、〝一緒に〟来てもらった』

(~~~~っ、卑怯者……っ!)

 香澄は歯噛みする。

『カスミ、ごめんね……。僕……。痛っ……』

 ジョシュアの小さな嗚咽を聞いた香澄は、深呼吸して自分を落ち着かせたあと、意を決してドアを開けた。

 するとすぐ目の前に、ジョシュアが四人の男に囲まれ目に涙を浮かべている姿が見えた。

『その子を離してください』

 男たちを睨み付けると、男の一人がジョシュアの肩を離した。

『カスミ!』

 ジョシュアは香澄に抱きつこうとしたが、その前に男の一人が彼女の腕を引っ張った。

「あっ……!」

『来い』

 とっさに足を踏ん張って抵抗したが、体重差、力の差がありズルズルと引きずられる。

『カスミ! 離せ!』

「ジョシュ!」

 香澄が悲痛な叫び声を上げるなか、彼は部屋の中に放り込まれた。

「離して! っむぐっ」

 閉じたドアに手を伸ばした香澄の口の中に、タオルが押し込まれる。

「むーっ!!」

 これだけの騒ぎがあっても、昼間は皆、各施設に赴いて楽しんでいるので、客室の廊下を通る者はいなかった。

 香澄はそのまま軽々と担ぎ上げられ、同じデッキ内にあるフェルナンドのスイートルームに運び込まれた。



**



 二度と戻りたくないと思ったスイートルームのソファに座らされると、向かいにはフェルナンドが脚を組んで座し、こちらを見ていた。

『やぁ、お帰り』

 微笑んではいるが、その茶色い目は怒りに燃えている。

 香澄は表情を強張らせ、慎重に周囲を窺う。

 ボディーガードは四人いて、出入り口の前は勿論、香澄の両側にもバルコニー側にも立っていて逃げ場がない。

(やばい……)

 窮地に立たされた香澄の鼓動は、これ以上なく速まっていた。

(殺される……? いや、でも殺さないって言ってたけど……)

 混乱と恐怖のあまり、まともに思考が動かない。

『あれを』

 フェルナンドが護衛の一人に指示を出す。

 思わずそちらを見ると、男がキャビネットの引き出しから、ピンク色のフワフワした物を出したところだ。

「な……、何……っ?」

 香澄は怯えて後ずさろうとしたが、別のボディガードが彼女の肩を押さえた。

 動けなくなった香澄は、足首にファーでできた足枷を嵌められる。

 足枷からはチェーンが長く伸び、室内のどこかに固定されているようだ。

 絶望した香澄は真っ青になり、どうしたらいいか分からず立ち尽くす。

『丁度良くワンピース姿だし、手洗いに支障はないだろう。チェーンは手洗いにもバスルームにも届くようになっている』

『もうやめてください!!』

 香澄は涙を流し、拳を握ってフェルナンドに訴える。

 一度は佑と電話ができて、もう助かったと安心していたからこそ、味わった絶望は大きかった。

 フェルナンドは無言で立ち上がり、歩いて香澄の前までくると彼女の顎を捉えた。

『〝やめてください〟? 勝手に逃げておいて、何を言っているんだ?』

 彼は激しい憎悪の込もった目で香澄を睨むと、思いきり頬を叩いてきた。

「っあぐっ……っ」

 物凄い衝撃に、目の前で火花が散ったかと思った。

 一瞬息を止めたあと、眩暈が襲ってきて香澄は一歩よろける。

『今度ふざけた真似をしたら、この場にいる全員でお前をレイプするぞ』

 フェルナンドは力の加減をせずに香澄の頬に指を食い込ませ、顔を近付けると凄む。

「っ…………っ、――――っ……」

 暴力と脅しとに、香澄の心はいとも簡単に折れた。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...