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第二十一部・フェルナンド 編
記者会見
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「マスコミが揃っています」
ホールの様子を覗いた河野が言う。
佑は松井にネクタイや髪型などのチェックを受けていた。
その傍らには副社長の本城、顧問弁護士の剣崎、税理士の峰岸もいる。
「付き合わせてしまってすみません。諸々片付きましたら、お詫びします」
佑は欠片も緊張していない顔で、二人に微笑みかける。
「気になさらないでください。もともとこちらは何もしていないんですから」
峰岸が憤然として言い、本城と剣崎も仏頂面で頷く。
「一分前です」
河野が腕時計を確認して告げるの聞いた佑は、一瞬香澄を思う。
彼女がこの場にいたなら、「応援しています、社長」と言ってくれただろうか。
(これを終わらせたら、迎えに行くからな)
佑は目を閉じて彼女の笑顔を思い浮かべる。
そして目を開けたあとは〝御劔社長〟の顔になり、河野が開けたドアからホールに入っていった。
佑は激しくフラッシュが焚かれるなか壇上に進み、本城、峰岸と共に一礼したあと、マイクを手に取った。
「本日はご多忙な中、お集まり頂きありがとうございます。株式会社Chief Every代表取締役社長、御劔佑です」
きっちりともう一度頭を下げたあと、佑は今回の騒ぎの経緯を説明し、世間を騒がせた事を詫びた。
フラッシュは容赦なく焚かれ、光の雨のように佑たちに注ぐ。
「世間をお騒がせした事への謝罪は以上となります。また、話題になっている写真、データにつきまして説明させていただきます
佑は一礼したあとヘーゼルの目に強い光を宿す。
「今回流出した写真と裏帳簿と呼ばれているものは、百パーセント偽物です。私は写真に写っていた店に行っていません。加えてあの写真は専門家の鑑定を受けたあと、CGによる合成だと結論が出ています」
そう言ったあと、横手から芸術大学の教授が出てきて頭を下げる。
進行役からマイクを受けとったあと、彼は自己紹介をしたあと、スクリーンに映し出された写真の不自然な箇所を一つ一つ説明していった。
説明が終わったあと記者たちから質問が上がったが、教授が一つ一つ丁寧に彼らの疑問に答え、完全なガセ写真だという事実を教える。
再び、佑が話し始める。
「裏帳簿の件ですが、こちらも虚偽の情報です。現在税務署から税務調査を受けていますが、いずれ『問題ない』という発表をさせていただく事になると思います」
佑は自分を取り囲むカメラに向けて、力強く言い切る。
「この件に関しまして、税理士の先生から説明をしていただきます」
佑が言ったあと、横にいる峯岸が一礼し、淡々と説明をしていった。
記者たちはChief Everyや佑がひたすらに謝罪する会見を予想していただろうが、専門家を揃えての反撃がくると思っておらず、緊張した表情をしていた。
最後に佑が神妙な面持ちで口を開いた。
「Chief Everyは世界中のあらゆる方々に対して、友好的な、隣人のような存在でいたいと思っています。ですがそのいっぽうで、弊社や私に悪意を持つ者がいるのも事実です。今回、合成写真や、偽の帳簿が流出し、マスコミの方々が勘違いしてしまった事により、皆様に多大なご心配、ご迷惑をおかけしてしまった事に関しましては、心よりお詫び申し上げます。昨今、巧妙なフェイク画像、動画などで世間を騒がせる事件もありますから、専門的な観察眼、知識がなければ見破れない事もあるかと思います。勘違いしてしまったマスコミの方々に非はないと思っておりますが、どうか今後は何かありました場合には弊社にご確認いただけたらと思います」
佑はマスコミに罪はないと言って恩を着せたあと、見る者を魅了する笑みを浮かべた。
「テレビの前のお客様方につきましては、引き続きご安心してChief Everyをご愛顧していただけたらと思います。また、今回お騒がせしてしまったお詫びとして、これから臨時セールを行う予定がありますので、どうぞごひいきのほど宜しくお願い致します」
謝罪し、Chief Everyが被害者であると主張したあと、視聴者を一気に味方に引き入れる流れも、話し合って決めた事だ。
これもまた、佑という絶大な広告塔がいるからできる事である。
「私からは以上です」
そのあと質問に答える流れになったが、すべてがデマだと分かった以上、この件についてこれ以上深掘りしようとする記者は少なかった。
逆にChief Every、御劔佑がいかに人気で、競合する企業からライバル視されているかにスポットライトが当たり、世間の男性から憧れられ、嫉妬される独身イケメン経営者の佑の胸中は……という話題に移っていった。
一部の記者から『婚約者さんはどう思っているんですか?』という質問があったが、それについてはノーコメントを通した。
ホールの様子を覗いた河野が言う。
佑は松井にネクタイや髪型などのチェックを受けていた。
その傍らには副社長の本城、顧問弁護士の剣崎、税理士の峰岸もいる。
「付き合わせてしまってすみません。諸々片付きましたら、お詫びします」
佑は欠片も緊張していない顔で、二人に微笑みかける。
「気になさらないでください。もともとこちらは何もしていないんですから」
峰岸が憤然として言い、本城と剣崎も仏頂面で頷く。
「一分前です」
河野が腕時計を確認して告げるの聞いた佑は、一瞬香澄を思う。
彼女がこの場にいたなら、「応援しています、社長」と言ってくれただろうか。
(これを終わらせたら、迎えに行くからな)
佑は目を閉じて彼女の笑顔を思い浮かべる。
そして目を開けたあとは〝御劔社長〟の顔になり、河野が開けたドアからホールに入っていった。
佑は激しくフラッシュが焚かれるなか壇上に進み、本城、峰岸と共に一礼したあと、マイクを手に取った。
「本日はご多忙な中、お集まり頂きありがとうございます。株式会社Chief Every代表取締役社長、御劔佑です」
きっちりともう一度頭を下げたあと、佑は今回の騒ぎの経緯を説明し、世間を騒がせた事を詫びた。
フラッシュは容赦なく焚かれ、光の雨のように佑たちに注ぐ。
「世間をお騒がせした事への謝罪は以上となります。また、話題になっている写真、データにつきまして説明させていただきます
佑は一礼したあとヘーゼルの目に強い光を宿す。
「今回流出した写真と裏帳簿と呼ばれているものは、百パーセント偽物です。私は写真に写っていた店に行っていません。加えてあの写真は専門家の鑑定を受けたあと、CGによる合成だと結論が出ています」
そう言ったあと、横手から芸術大学の教授が出てきて頭を下げる。
進行役からマイクを受けとったあと、彼は自己紹介をしたあと、スクリーンに映し出された写真の不自然な箇所を一つ一つ説明していった。
説明が終わったあと記者たちから質問が上がったが、教授が一つ一つ丁寧に彼らの疑問に答え、完全なガセ写真だという事実を教える。
再び、佑が話し始める。
「裏帳簿の件ですが、こちらも虚偽の情報です。現在税務署から税務調査を受けていますが、いずれ『問題ない』という発表をさせていただく事になると思います」
佑は自分を取り囲むカメラに向けて、力強く言い切る。
「この件に関しまして、税理士の先生から説明をしていただきます」
佑が言ったあと、横にいる峯岸が一礼し、淡々と説明をしていった。
記者たちはChief Everyや佑がひたすらに謝罪する会見を予想していただろうが、専門家を揃えての反撃がくると思っておらず、緊張した表情をしていた。
最後に佑が神妙な面持ちで口を開いた。
「Chief Everyは世界中のあらゆる方々に対して、友好的な、隣人のような存在でいたいと思っています。ですがそのいっぽうで、弊社や私に悪意を持つ者がいるのも事実です。今回、合成写真や、偽の帳簿が流出し、マスコミの方々が勘違いしてしまった事により、皆様に多大なご心配、ご迷惑をおかけしてしまった事に関しましては、心よりお詫び申し上げます。昨今、巧妙なフェイク画像、動画などで世間を騒がせる事件もありますから、専門的な観察眼、知識がなければ見破れない事もあるかと思います。勘違いしてしまったマスコミの方々に非はないと思っておりますが、どうか今後は何かありました場合には弊社にご確認いただけたらと思います」
佑はマスコミに罪はないと言って恩を着せたあと、見る者を魅了する笑みを浮かべた。
「テレビの前のお客様方につきましては、引き続きご安心してChief Everyをご愛顧していただけたらと思います。また、今回お騒がせしてしまったお詫びとして、これから臨時セールを行う予定がありますので、どうぞごひいきのほど宜しくお願い致します」
謝罪し、Chief Everyが被害者であると主張したあと、視聴者を一気に味方に引き入れる流れも、話し合って決めた事だ。
これもまた、佑という絶大な広告塔がいるからできる事である。
「私からは以上です」
そのあと質問に答える流れになったが、すべてがデマだと分かった以上、この件についてこれ以上深掘りしようとする記者は少なかった。
逆にChief Every、御劔佑がいかに人気で、競合する企業からライバル視されているかにスポットライトが当たり、世間の男性から憧れられ、嫉妬される独身イケメン経営者の佑の胸中は……という話題に移っていった。
一部の記者から『婚約者さんはどう思っているんですか?』という質問があったが、それについてはノーコメントを通した。
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