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第二十一部・フェルナンド 編
必ず迎えに行くから
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恐らく何かあったのだろうが、尋ねても「佑さんの負担になりたくない」と隠すに違いない。
だがダークウェブサイトの事など、本当に必要な情報は教えてくれた。
(今は香澄を信じて、必要な事だけ。あとからすべて教えてもらおう)
佑はそっと溜め息をついて自分を落ち着かせ、彼女に優しく語りかけた。
「香澄、今はテオだけが味方だ。初対面で不安かもしれないが、彼は本当に俺の友人だから心配しなくていい。テオの側を絶対に離れるんじゃない。いいね?」
《分かった》
佑は香澄の返事を聞いたあと、再度テオに代わってもらうよう伝えた。
**
香澄はテオと電話を代わり、少し離れた所にいるジョシュアのもとにいく。
『カスミってパパと友達なの?』
ジョシュアに尋ねられた香澄は、しゃがんで彼を目線を合わせる。
『ううん、初対面なの。でも私の婚約者がテオさんの友達みたい』
『カスミの婚約者って?』
『Chief Everyのタスク・ミツルギって知ってる?』
『うん、知ってる! 僕、Chief Everyの株買ってるよ』
『かぶっ』
ジョシュアが株を買っていると聞き、香澄は舌を巻く。
(さすがアルクのメンバー! 半端ない……)
そのあとも自己紹介がてら世間話をしている間、テオは佑とあれこれ打ち合わせをしていた。
やがて話が終わったらしいテオは、香澄に尋ねてくる。
『カスミさん、俺の用事は終わったけど、最後にカイと話しておく?』
『はい』
香澄は立ちあがって船室の固定電話に向かう。
受話器を耳に当て、香澄は心から佑に謝罪する。
「佑さん、本当にごめんなさい。無事に戻ったら、ちゃんと叱られます」
《ドMじゃないんだから〝叱られたい〟なんて言うんじゃない。怒る代わりに、抱き締めてキスしてたっぷり無事を確かめるから、そのつもりでいて》
「……ん、分かった」
佑の言葉を聞き、香澄は思わず笑う。
彼の冗談を聞くと気持ちが和み、随分久しぶりに笑った気がした。
《テオの言う事をしっかり聞いて》
「うん」
《愛してるよ。必ず迎えに行くから》
「うん。私も」
そのあと、受話器の向こうからチュッとキスする音が聞こえた。
《じゃあ、切るよ》
「はい」
耳元でプツッという音が聞こえたあと、ツーッツーッと佑との繋がりが切れた音がする。
香澄はノロノロと受話器を戻し、静かに溜め息をついた。
目を閉じると、まな裏に佑の姿が浮かび上がる。
(頑張るよ)
心の中で佑に語りかけた香澄は、目を開けるとテオとジョシュアに深々と頭を下げた。
『ありがとうございました。お陰で無事を伝えられました。お金が掛かってしまうのにすみません。あとできちんとお支払いします』
『いや、こちらこそ君に借りがあるから、まったく気にしなくていい』
テオに申し訳なさそうに言われるが、彼とは初対面だ。
『……どういう事ですか?』
尋ねたが、彼はぎこちなく微笑んで小さく首を横に振るだけだ。
(きっと事情があるんだろうな)
深追いするのはやめようと思った香澄は、気持ちを切り替える事にした。
テオも同じ事を思ったらしく、話題を変える。
『ジョシュの他に、妻のソフィアと二歳の娘のシャーロットがいる。二人は今出かけているから、あとから紹介しよう。カスミさんはこの部屋を出ないように過ごす工夫をしよう。不便で息苦しいかと思うが、ロサンゼルスに着くまで我慢してほしい。妻にも話して、ちゃんとベッドで眠れるようにする』
気遣われ、香澄は申し訳ない気持ちで一杯になる。
『せっかくご家族で休暇を楽しまれていたのに、すみません』
『謝らなくていい。俺はカイの友人で、君には大きな借りがある。君たちに協力できるなら、可能な限りの事をする。だから気に病まないでほしい』
テオの言う〝借り〟は分からなかったが、今は彼らの好意に甘えようと思った。
だがダークウェブサイトの事など、本当に必要な情報は教えてくれた。
(今は香澄を信じて、必要な事だけ。あとからすべて教えてもらおう)
佑はそっと溜め息をついて自分を落ち着かせ、彼女に優しく語りかけた。
「香澄、今はテオだけが味方だ。初対面で不安かもしれないが、彼は本当に俺の友人だから心配しなくていい。テオの側を絶対に離れるんじゃない。いいね?」
《分かった》
佑は香澄の返事を聞いたあと、再度テオに代わってもらうよう伝えた。
**
香澄はテオと電話を代わり、少し離れた所にいるジョシュアのもとにいく。
『カスミってパパと友達なの?』
ジョシュアに尋ねられた香澄は、しゃがんで彼を目線を合わせる。
『ううん、初対面なの。でも私の婚約者がテオさんの友達みたい』
『カスミの婚約者って?』
『Chief Everyのタスク・ミツルギって知ってる?』
『うん、知ってる! 僕、Chief Everyの株買ってるよ』
『かぶっ』
ジョシュアが株を買っていると聞き、香澄は舌を巻く。
(さすがアルクのメンバー! 半端ない……)
そのあとも自己紹介がてら世間話をしている間、テオは佑とあれこれ打ち合わせをしていた。
やがて話が終わったらしいテオは、香澄に尋ねてくる。
『カスミさん、俺の用事は終わったけど、最後にカイと話しておく?』
『はい』
香澄は立ちあがって船室の固定電話に向かう。
受話器を耳に当て、香澄は心から佑に謝罪する。
「佑さん、本当にごめんなさい。無事に戻ったら、ちゃんと叱られます」
《ドMじゃないんだから〝叱られたい〟なんて言うんじゃない。怒る代わりに、抱き締めてキスしてたっぷり無事を確かめるから、そのつもりでいて》
「……ん、分かった」
佑の言葉を聞き、香澄は思わず笑う。
彼の冗談を聞くと気持ちが和み、随分久しぶりに笑った気がした。
《テオの言う事をしっかり聞いて》
「うん」
《愛してるよ。必ず迎えに行くから》
「うん。私も」
そのあと、受話器の向こうからチュッとキスする音が聞こえた。
《じゃあ、切るよ》
「はい」
耳元でプツッという音が聞こえたあと、ツーッツーッと佑との繋がりが切れた音がする。
香澄はノロノロと受話器を戻し、静かに溜め息をついた。
目を閉じると、まな裏に佑の姿が浮かび上がる。
(頑張るよ)
心の中で佑に語りかけた香澄は、目を開けるとテオとジョシュアに深々と頭を下げた。
『ありがとうございました。お陰で無事を伝えられました。お金が掛かってしまうのにすみません。あとできちんとお支払いします』
『いや、こちらこそ君に借りがあるから、まったく気にしなくていい』
テオに申し訳なさそうに言われるが、彼とは初対面だ。
『……どういう事ですか?』
尋ねたが、彼はぎこちなく微笑んで小さく首を横に振るだけだ。
(きっと事情があるんだろうな)
深追いするのはやめようと思った香澄は、気持ちを切り替える事にした。
テオも同じ事を思ったらしく、話題を変える。
『ジョシュの他に、妻のソフィアと二歳の娘のシャーロットがいる。二人は今出かけているから、あとから紹介しよう。カスミさんはこの部屋を出ないように過ごす工夫をしよう。不便で息苦しいかと思うが、ロサンゼルスに着くまで我慢してほしい。妻にも話して、ちゃんとベッドで眠れるようにする』
気遣われ、香澄は申し訳ない気持ちで一杯になる。
『せっかくご家族で休暇を楽しまれていたのに、すみません』
『謝らなくていい。俺はカイの友人で、君には大きな借りがある。君たちに協力できるなら、可能な限りの事をする。だから気に病まないでほしい』
テオの言う〝借り〟は分からなかったが、今は彼らの好意に甘えようと思った。
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