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第二十部・同窓会 編

がっついてごめんな

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 香澄とセックスできた時点で大満足なので、自分のフィニッシュは二の次だ。

 佑は彼女を支えてバスタオルで全身を拭き、自分の体もサッと拭いてからバスローブを羽織る。

 香澄にもバスローブを着せ、ベッドまで運んでから枕にバスタオルを敷いてクリップで纏めてあった髪を解く。

 ミニバーから水のペットボトルを出してベッドサイドに置き、香澄がまだ気絶しているのを確認してから洗面所に戻った。

 きちんと全身をバスタオルで拭いて、ドライヤーで軽く髪を乾かしてから、下着を穿いてまたベッドに戻る。

 そして今度はフェイスタオルで丁寧に香澄の体を拭き、ホテルのパジャマを着せた。

(髪はドライヤーを掛けないと傷むが、そんな事を言っている場合じゃないか)

 他に自分ができる事はないか考えてから、逆上せていてはいけないと思い、ミニバーに入っていた保冷剤をタオルに包み、香澄の額の上に載せた。

 そのあとは本当に思いつかず、すっかり萎えた息子と共に落ち込んで、彼女の隣に座る。

「……ごめん」

 呟いて溜め息をつき、「うまくいかないな……」と再度溜め息をつく。

 毎回香澄を抱く時は、自分本位なセックスをしないよう、彼女を感じさせる事を重視している。

 けれど世間では早漏より遅漏のほうが嫌われるように、あまりしつこすぎても負担しかないのかもしれない。

(本当は朝までずっとやっていたいなんて言ったら、本気で引かれるんだろうな)

 とはいえ、ニセコでは完全にやってしまったし、直後のヨーロッパでも何度も求めてしまった。

(我が事ながら呆れる……。思春期のガキか)

 自分にツッコミを入れつつ、「だってなぁ……」と呟く。

 香澄は最近、ますます美しくなってきた気がする。

 本人は「平均的な一般人」を自称しているが、彼女の中の「佑さんに見合う女性になりたい」という向上心は凄まじい。

 佑は彼女にそんな事を求めておらず、毎日笑って、美味しく食事をしてくれればそれでいい。

 言ってしまえば、家事も仕事もせず食っちゃ寝していてもOKだ。

 一年前に出会った時は、ここまで骨抜きになっていなかった。

 東京に連れ帰りたいとは思ったが、「香澄が生きていてくれれば何をしていても構わない。何でも望みを叶えてあげたい」と思うほどではなかった。

 あれから濃密な一年を過ごし、今や深く愛し合っている。

 背伸びし続けた香澄は、今ではドキリとするほど魅力を増している。

 考え事をしている時の彼女の横顔を見ると、思い詰めた瞳の美しさに目を奪われる。

 もとから透明感のある大きな目だと思っていたが、切なさの籠もった眼差しを向けられれば、大抵の男はグラッとくるのではと危機感を覚えている。

 彼女がバーで一人で飲んでいたなら、絶対声を掛けられるだろう。

 そんな事を考えながら、佑は香澄の無駄毛一本ない、柔らかな陶器のような肌に触れている。

(香澄に見とれてボーッとしてる時に、『どうしたの?』なんて微笑まれた日には、襲うしかないよな……)

 そんなふうに佑の頭の中は、二十代半ばからの空白を埋めるように、香澄で一杯になり性欲もMAXだ。

「……がっついてごめんな」

 佑は濡れた香澄の髪を撫で、溜め息交じりに謝る。

「……抑えが効かないんだよなぁ……」

 大好きで愛しているからこそ、感じている姿を見たい。感じさせてあげたいと思う。

 だからつい、気が付いたら香澄に「しつこい」と怒られるほど愛撫をし、挿入しても出したいのを我慢して彼女を感じさせ続けた。

 呟いた時、意識を取り戻した香澄が「……サービス過剰……」と返事をする。

「ん、目が覚めたか? 水飲めるか?」

 佑は香澄の額にのっている保冷剤をとり、ひんやりした額を撫でる。

「……飲む」

 答えた香澄の声はガサガサで、彼女は「んンんっ」と咳払いをする。

 佑はまだ腰が立たない香澄を抱き起こし、ベッドサイドの水に手を伸ばす。

 香澄は髪が濡れているのに気づき、自分でバスタオルで髪を包んでいた。

 キャップを開けた水を渡すと、香澄は「ありがとう」と言ってコクコクと飲み、疲れ切った溜め息をつく。

「……ごめんな」

 改めて彼女の顔を覗き込んで謝ると、いつものように「仕方ない」という顔で苦笑いされた。

「……そんなにサービスしなくていいからね? 私は前戯だけで何回も達かせてもらってるから、入れたあとはそんなに長持ちしなくていいの」

「……佑の『ス』は『サービス』の『S』」

 思わずふざけると、香澄が「ぶふっ」と噴き出した。
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