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第二十部・同窓会 編

警察にはもう連絡を済ませてある

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(そう言えばいずれ同僚になるんだよな)

 いつか彼と麻衣がChief Every本社で働く事を考えると、楽しみで堪らない。

(その時までにはすべてに片をつけて、楽しい生活を送りたいな)

 先の目標を据えると、今がつらくても頑張れる気がした。

「聞いてほしい事がある」

 佑はそう言うと、香澄の顔を覗き込んだ。

「ん?」

「大阪のホテルで河野たちと話し合って、誰かが狙撃される可能性は極めて低いだろうという結果になった」

「本当?」

 それを聞き、フワッと心が軽くなる。

「奴が俺への復讐を目的にしているなら、レーザースコープをチラつかせて香澄を脅すより、直接を俺を狙えばいい。だがあいつはそれをしなかった。恐らくだが、直接俺を狙ってクラウザー家を敵に回すより、俺の弱点……香澄にプレッシャーを与えて俺を弱らせようという魂胆なのでは……と思っている」

「……良かった……」

 はじめに香澄の口から出た言葉は、それだった。

「良かった?」

 佑は怪訝そうに眉を寄せる。

「だって、佑さんや周りの人の命が一番大切だもん」

 安心して微笑んだ香澄を、佑は溜め息をついて抱き締めてきた。

「そういう考え方をしないでくれ。俺は何より、香澄に自分を大切にしてほしい」

「うん、佑さんのために自分も大切にする。でもね、誰かが撃たれないで済むって考えただけで、本当に嬉しいの」

「……ホントに……」

 佑はもう一度溜め息をつき、香澄の首筋に唇をつけ、カプリと囓ってくる。

「んぅ」

 香澄が小さくうめいたのを聞いて佑は微笑み、顔を離すと真剣な表情で伝えてきた。

「今、フェルナンドの素性を調べるために祖父や双子が動いてくれている。彼らのほうがヨーロッパには詳しいと思うから」

「うん」

「今後の事だが、フェルナンドが『追って指示をする』と言ったものの、いつになるのかは分からない」

「うん」

 それには香澄も同意で、コクリと頷いた。

「別途、警察には連絡を済ませてある」

「えっ!?」

 ドキッとした香澄は、思わず背筋を伸ばす。

「大丈夫だ。プロだから絶対に情報を漏らさない。もうすでに、私服警察に自宅付近のパトロールをしてもらっている」

「……ほ、本当に警察ってバレない?」

「テレビの『警察密着その瞬間』って番組知ってる?」

「あ……、えーと、あんまり得意じゃなくて」

 警察に密着して犯罪者を逮捕する瞬間の番組は、よく新聞のテレビ欄で見る。

 だが犯罪シーンや、人が逮捕されているところ、疑われているところを見ると、何だか気持ちが暗くなってしまう。

 テレビを見るなら旅番組やお笑い、グルメ番組がいいと思い、それ系の番組はあまり見ていなかった。

「そっか。潜入捜査をする私服警官は、主婦やおじさんにしか見えない姿をしている。だから香澄が見ても、まず警察だと分からないと思う。事情を知っている香澄が見て分からないなら、フェルナンドの仲間にも分からないんじゃないかな」

「なるほど」

 納得した香澄は、少し安心して何度か頷く。

「もしも香澄に呼び出しがあった時、身代わりになってくれる女性警官もいる。ダミー役だ」

「ダミー?」

 目を瞬かせると、佑は真剣な表情で顔を覗き込んでくる。

「そう、香澄の身代わりになってくれる。……ダミーは用意しているが、万が一、フェルナンドから呼び出しがあったら、途中まで香澄に応じてもらうと思う。勿論、絶対に誘拐などさせない。今言ったように香澄の周囲に大勢の人を配置して、犯人が現れたら全員で捕まえる。そのために、囮役が必要になる。……大丈夫か?」

 いつもなら香澄を真綿でくるんで、誰の目にも触れさせないようにする佑が、あえて危険にさらそうとしている。

 それだけ彼が今回の事件を重要視し、絶対にフェルナンドを叩きのめそうとしているのが分かった。

「うん、大丈夫」

 だから香澄も、躊躇いなく頷いた。

「……絶対に解決してみせる。そのあとは、気兼ねなく麻衣さんたちを呼んで楽しく過ごそう」

「うん」

 香澄が楽しみにしている事を、佑も分かってくれている。
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