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第二十部・同窓会 編

結婚指輪談義

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「欲しい結婚指輪ってどんなの? 私も参考にしたい」

 麻衣に尋ねると、彼女は「可愛いんだこれが……」と言いながらスマホを出す。

 ブックマークしていたサイトにあったのは、セミオーダーマリッジリングだ。

「この、グラデーションカラーが沢山あるの、可愛いでしょ? しかもこれ、桜柄なの」

「うそ!? すっごい可愛い!」

 画像の指輪には表面に桜と花びらが彫ってあり、彫った内側にセミオーダーで色を入れる事ができるようになっている。

 色は二十色もあり、どれも可愛い。

 ワンカラーのものもあるし、グラデーションになっているものもある。暖色の可愛いものもあるし寒色もあり、勿論シンプルな黒やシルバーも選べる。

 麻衣がアクアブルーをタップすると、リングに彫られてある桜と花びら、指輪の内側の色が変わった。

「え~!? 可愛い! 麻衣とお揃いにしたい!」

 香澄が本気で欲しがると、佑は思わず立ち上がり、ソファを回り込むと後ろから画面を覗き込んできた。

 そして香澄が画面をタップして色を変えているのを見て、「こういうのが好きなのか……」と呟いたあと、尋ねてきた。

「香澄はどの色が好きなんだ?」

「えーっとね……。うーん……。これかな? ピンク、紫、ブルーのグラデーションのやつ」

 香澄が答えると、麻衣がリングのデザインを変えた。

「桜柄の他にも色々あるよ。でも私は桜柄が好きだし、香澄の好みも似てると思うけど」

 香澄は様々なデザインを見ながら、「うんうん」と頷く。

 だが結局、最初の桜柄に辿り着いて「やっぱりこれだな~」とうなった。

「でしょー? 香澄となら結婚指輪がお揃いでもいいなぁ。私は別の色が第一候補だから、同じにはならないし」

「ねー、そうできたら素敵」

 女二人がキャッキャとしている間、佑とマティアスは無言で見つめ合う。

 彼らは「愛する女性との結婚指輪なのに、なんでこいつとお揃いになるんだ……」という顔をしている。

「その指輪も候補に入れるけど、他のも見せるから、それも見て検討してくれ」

 佑に言われた香澄は「はーい」と返事をする。

 口ではいい返事をしたものの、香澄は麻衣と体をくっつけてスマホの画面を見続けている。

 この現場に双子がいたものなら、「タスクの完全敗北」と笑われていたに違いない。





 ランチは札幌駅に直結している商業施設の、九階にあるフレンチレストランに行く。

 九階はレストランだけのフロアで、廊下にはシェフの写真や勲章などが額に飾られていた。

 奥まで進むとスタッフに迎えられ、コートを預かってもらった。

 そのあと準備ができるまでバーラウンジの前にある白いソファで待ち、ほどなくして席に案内された。

 南向きの大きな窓があるなか、白いテーブルクロスが掛かったラウンドテーブルが幾つも並んでいる。

 四人はその奥にある個室に通された。

 ギャルソンに椅子を引いてもらって座っていると、慣れていない麻衣が恥ずかしそうな表情をしていた。

 佑がコースを予約していたが、改めてアレルギーや苦手な食材がないか確認される。

 そのあとドリンクメニューを見せられ、佑とマティアスはワインを頼み、麻衣はビール、香澄はいつものように赤ぶどうジュースだ。

 乾杯のあと、香澄はワクワクする気持ちを抑えきれず、向かいに座っている麻衣に尋ねる。

「で、ご両親への挨拶はどうだったの?」

「むふんっ」

 それを聞き、ビールの二口目を飲もうとした麻衣が噎せる。

「歓迎してもらえたと思う」

 マティアスがすかさず答え、少しどや顔をする。

「信司くん、いい子だったでしょう」

「ああ。シンジキッチンは美味かった。日本の冬はナベが定番なんだな。トウニュウ……鍋? あれは美味かった」

「シメはやっぱりうどんですよね~」

 うんうんと頷くと、麻衣が「食いしん坊はすぐ飛びつくんだから」と突っ込みを入れる。

「今度誰かの家でお鍋やりたいね。それぞれ好きな具材を持ち寄るの」

 香澄が提案すると、麻衣が「いいね~」と頷く。
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