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第二十部・同窓会 編

誰かが死ぬかもしれません

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(でもどうやって、佑さんに盗聴の事を伝えたらいいんだろう。盗聴だけなら、筆談で伝えられるかもしれない。けどフェルナンドさんは、まるで見ているように私の様子を知っていた。カフェの時はスマホで行動を監視されていたとして、自宅の出来事も知られているのは……何を使ってるの?)

 離れにいる円山は、一時間に一度、滝沢か久保と組んで敷地内を歩き、異常がないか確認している。

 その際、広々とした母屋にも入り、地下から四階まで怪しい人物が侵入していないかチェックしていた。

 そんな厳重な警備をかいくぐって、誰かが家の中に盗聴機やカメラをつけるのは不可能だ。

(……探すふりもアウトかもしれない。家のネット環境も、もしかしたらウイルスか何かで見張られているかも……)

 思考に行き詰まった香澄は、小さな溜め息をついた。

(そうだ!)

 ハッと思いついた香澄は、ムクリとベッドから起き上がった。

 そしてデスクの引き出しから、誕生日に佑から贈られた、最新式のスマホを取りだす。

(このスマホは私と佑さんしか知らないはず。〝宝探し〟の時、スマホがあったのは地下のシアタールーム……)

 香澄は最新式のスマホを持ち、暗い家の中を移動して地下に向かった。

 窓のある場所は避けたいと思っての行動だ。

 そしてバーカウンターがある部屋に入って、ドアを閉めた。

 壁際のコンセントにAC電源アダプターを差し込み、床の上で三角座りをする。

 怯えた香澄は口を開いては閉じて……を繰り返し、数度深呼吸をしたあと、声を震わせながら〝彼〟の名前を呼んだ。

「フェルナンドさん」

 室内で香澄の声がしたあと、シン……と静寂が返事をする。

 そのまま香澄は息を殺し、〝何か〟が反応するのを辛抱強く待った。

 何度かフェルナンドの名前を呼び、「連絡できますか?」とコンタクトを取りたがる素振りをみせる。

 だが室内は静まりかえったままで、ブーン……と静かにモーター音が聞こえるのみだ。

(……いけるかもしれない)

 香澄はペロリと唇を舐め、ある程度充電されたスマホを起動させた。

(電話はしないでおこう。コネクターナウを使う)

 充電したままアプリを開くと、まだアイコンすら決めていないアカウントが表示される。

『佑さん。起きてますか』

 香澄は指を震わせながらトントンとスマホをタップし、佑にメッセージを送る。

 時間は深夜過ぎで、佑は起きているかもしれないし、寝ているかもしれない。

 辛抱強く待っていると、パッと既読がついた。

『どうかしたか? このアカウントでは初めてだな』

 返事があり、香澄は安堵の溜め息をついた。

 それでも、らフェルナンドにバレているかもしれない恐怖がある。

『今、窓の近くにいますか?』

『スイートのリビングにいる』

『窓のない所に移動してください』

 佑は香澄の突然の指示に疑問を抱かず、そのまま移動してくれたようだ。

 しばらく間があったあと、返事がきた。

『手洗いに入った』

『ありがとう』

 そのあとに伝える言葉を、香澄はすんなり文字にできないでいた。

 打とうとして手が震え、赤いレーザーポインターを思い出して恐怖が沸き起こる。

『香澄? どうした? 何でも話して』

 文字だけでも佑が心配そうな顔をしているのが分かり、香澄は泣きそうな顔で微笑んだ。

 そして思い切って伝えた。

『誰かが死ぬかもしれません』

 打ってから、強く強く、「誰も狙われていませんように」と祈った。

 すぐ佑から返事がくる。

『どういう事だ?』

 これ以上なく動悸が激しくなった香澄は、床に座り込んだまま、一人で荒い呼吸を繰り返す。

『一度、同行している方々の安否確認をお願いします。明日のスケジュールを確認するとか、この事は知らせない体で、自然にお願いします』

『分かった』

 香澄の切羽詰まった様子が伝わったのか、佑は短く返事をした。

 そのあと待っていたのはほんの数分なのに、長い時間が経ったように思えた。
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