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第二十部・同窓会 編

私、嫉妬してるんだ

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「こんな所でどうしたんだ? 勇斗が『もう戻ったはずだけど』って言ってたから、探してたんだ」

「ごめん。スマホ、見てた」

「そっか」

 佑はそう言って香澄の隣に立ち、「ん……っ」と伸びをする。

「戻らないの?」

「俺も少し外の空気を吸いたいな」

「そ、そう?」

 香澄はまた店の外に出て、今度は佑と例のブロックに腰掛けた。

「勇斗と何を話してた?」

「え? ……んー、いや、特に……」

「『特に』なに?」

 佑が重ねて尋ね、肩を抱いてくる。

 勇斗と散歩をして酔いが覚めたと思ったが、佑に抱き寄せられると、ジワリと体に別の熱が灯る。

「何話してた?」

 こめかみにチュッとキスをされて尋ねられ、香澄はおずおずと答えた。

「……み、美智瑠さんの事とか……。……や、あの。……お友達に昔の事を聞きたがったとかじゃなくて、自然とそういう流れになったっていうか……」

「『嫉妬して聞いた』でもいいよ」

 佑はクスクス笑い、また香澄のこめかみにキスをしてくる。

(……なんか、テンション高いな。酔ってるのかな。酔っ払う飲み方はしないはずだけど)

 彼は日本では人前でイチャイチャしない人なので、香澄は微かな違和感を抱く。

 それを誤魔化すために、少し冗談を言った。

「さっき佑さんを見て『イケメンがバーにいると、格好良さの破壊力が上がるな』って思っちゃった」

「何だそれ」

 香澄の言葉を聞いて佑はクシャッと笑い、その笑顔を見た時に理解してしまった。

(……あ)

 ――私、嫉妬してるんだ。

 自分が抱いていた気持ちの正体が分かり、香澄はジワジワ赤面する。

(佑さんの親友なのに……。私……)

「あ…………、あぁあああぁ…………」

 香澄は両手で頭を抱え、かすれた声でうめく。

 いきなりうめき始めた香澄を見て、、佑はビクッとする。

「香澄?」

「……な、…………何でもない……」

(皆さんといるといつもと感じが違うし、別の人みたい)

 側にいるのは〝佑〟なのに、我が儘に似た感情から拒絶したくなる。

(『自分の知らない面を見せないで』なんて、傲慢だ。佑さんだって人間だから、子供時代や学生時代があって当然なのに)

 自分にも佑の知らない時期があるし、健二とも付き合っていた。

(今さら佑さんの過去を、どうこう言う権利なんてないのに……)

 自分が情けなくなり、香澄はまた溜め息をつく。

「香澄?」

 声を掛けられ、香澄はぎこちなく微笑んだ。

「戻ろう? 寒くなっちゃった」

「……ああ、そうだな。ごめん」

 佑は慌てて香澄の肩をさすり、また一緒に店内に入る。

「おー、御劔が戻ってきた」

 テーブルに戻ると、真澄と洸もいた。

「勇斗と透子がもう帰るっていうから、お開きにしようか」

「そうだな。じゃあ、会計してくる」

「御劔、ごちそーさん! 今度居酒屋で奢るから!」

 洸の明るい声がし、勇斗と透子が笑う。

 真澄は立ち上がり、佑と一緒に会計に向かった。

 その後ろ姿を見送っていると、勇斗に声を掛けられた。

「香澄ちゃん、風邪引いてない? 長く連れ回してごめんね」

「いいえ」

 微笑んで首を小さく横に振ると、透子が勇斗にもの申した。

「勇斗くんはホントになぁ……。女の子の体、冷やしたら駄目なんだからね? 香澄ちゃん、もし体調崩したら、勇斗くんに慰謝料請求していいから」

「オイ、透子」

「あはは! 大丈夫ですよ」

 人のいい佑の同級生たちの会話を聞き、香澄は自分を恥じた。

 飯山たちやエミリアの事件があり、佑の側にいる女性は全員自分にネガティブな感情を持っているのでは……と、思ってしまっていたのだ。

 なのに透子は一度も嫌な事を言わなかったし、そんな素振りも見せなかった。

(恥ずかしい……。佑さんの大切な友達なのに……)

 香澄は勇斗たちのやり取りを見て明るく笑いながら、――心の中で自分の狭量さに涙を流した。



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