1,300 / 1,559
第二十部・同窓会 編
遠く感じた彼
しおりを挟む
「長い片思いをした事ってある?」
「えっと…………。ないかもです。元彼が初めての彼氏だったんですが、その人に告白されて付き合ったので、片思いってないと思います。学生時代は恋愛とは遠い生活を送っていましたし」
正直に打ち明けると、勇斗は「そっかー」と頷く。
「……いや。俺、ずっと好きだった奴がいるんだよね。でもそいつ、ずっと他の男を好きでさ。ついこないだ、『失恋した』って連絡をもらったんだ。俺はそいつが諦めるのをずっと待ってたんだよね。……その間、我慢しきれなくてちょっと遊んだのは反省してるけど」
「付き合っていた訳じゃないし、いいんじゃないですか? これからその人に一途になればいいんですよ」
勝手に勇斗は少し軽い人なのでは……と思っていたので、一途なエピソードを聞いて何だか嬉しくなる。
「俺もあいつも長い片思いをしてたけど、そろそろ告白してもいいのかな。……っていうか、何回か告白したんだけどね。そのたびに断られても諦めてないから、俺も大概しつこいんだけど」
「でも、その女性とのご縁は続いているんでしょう? 嫌がられてないなら、脈ありなんじゃないですか?」
「『好きな人がいるから応えられない』ってだけで、『キモい』みたいな拒絶のされ方はされてないの、ちょっと救いかな」
「なら、ワンチャンありだと思います! 私ならそこまで一途に長く想ってくれるのって、素敵だなーって思います」
「そうかな?」
「そうです!」
香澄は大きく頷き、グッと拳を握ってみせた。
「よーし、頑張るかな」
「応援してます!」
香澄はニッコリ笑い、励ますように彼の背中をトントンと叩く。
「香澄ちゃんっていい子だね」
「えっ? いえ、だから普通ですって」
笑って誤魔化した香澄は、今度こそ立ち上がった。
「うまくいくといいですね」
話しながら、二人はようやく店内に入った。
「私、お手洗いに寄ってから戻ります」
「ん、分かった」
香澄は手洗いに寄り、赤くなっていた顔が大分落ち着いたのを確認した。
そして用を足してからもう一度リップを塗り直し、佑のもとに戻った。
**
(あ……)
席に戻ろうとして佑を見つけた香澄は、思わず立ち止まった。
佑は向かいの席の透子と、何かを話し笑い合っている。
勿論、同じ場には勇斗もいるのだが、佑が学友と楽しそうに過ごしている姿を見て、とても「遠い」と感じてしまった。
(声を掛けづらいし、邪魔しちゃいけないかな……。少しスマホでも弄ってようかな)
入り口近くに戻った香澄は、スマホを開いて通知をチェックした。
麻衣からは新しいメッセージは入っていない。
(何かしてるのかな。……あっ、イチャイチャしてる!? それは邪魔したら駄目だ……)
親友とマティアスの進展を想像した香澄は、にやぁ……と笑う。
(結婚の許可もらったのかぁ……。あの二人、結婚するんだ……)
考えれば考えるほど、にやつきが収まらない。
そのあと、恐ろしい数のバッジが溜まっている、双子とのトークルームを開いた。
相変わらず自由な会話が続いていて、それを見ていると「わざわざ私も入ってるトークルームで話さなくてもいいのに……」と思ってしまう。
(週末に行くバーの話をここでしなくても、二人で話せばいいのに……)
心の中で突っ込みを入れたあと、香澄は店内を見てそっと息を吐いた。
スマホ越しにいつもの人たちに癒やしてもらおうと思ったが、いま香澄は佑の同窓会に同行している。
(現実を見ないと……)
どうしてテーブルに戻りづらかったのか改めて考えると、寂しさを感じたからだ。
(佑さんが私の知らない人みたいに思えたからだよな……)
常に佑の側にいるのは自分なのに、学生時代いつも一緒だった人たちといる姿を見ると、「声をかけてはいけない」「自分はお邪魔虫」という気持ちになってしまう。
また溜め息をついた時、「香澄?」と佑の声がした。
「あ……」
顔を上げると、彼がこちらに歩み寄ってくるところだ。
「えっと…………。ないかもです。元彼が初めての彼氏だったんですが、その人に告白されて付き合ったので、片思いってないと思います。学生時代は恋愛とは遠い生活を送っていましたし」
正直に打ち明けると、勇斗は「そっかー」と頷く。
「……いや。俺、ずっと好きだった奴がいるんだよね。でもそいつ、ずっと他の男を好きでさ。ついこないだ、『失恋した』って連絡をもらったんだ。俺はそいつが諦めるのをずっと待ってたんだよね。……その間、我慢しきれなくてちょっと遊んだのは反省してるけど」
「付き合っていた訳じゃないし、いいんじゃないですか? これからその人に一途になればいいんですよ」
勝手に勇斗は少し軽い人なのでは……と思っていたので、一途なエピソードを聞いて何だか嬉しくなる。
「俺もあいつも長い片思いをしてたけど、そろそろ告白してもいいのかな。……っていうか、何回か告白したんだけどね。そのたびに断られても諦めてないから、俺も大概しつこいんだけど」
「でも、その女性とのご縁は続いているんでしょう? 嫌がられてないなら、脈ありなんじゃないですか?」
「『好きな人がいるから応えられない』ってだけで、『キモい』みたいな拒絶のされ方はされてないの、ちょっと救いかな」
「なら、ワンチャンありだと思います! 私ならそこまで一途に長く想ってくれるのって、素敵だなーって思います」
「そうかな?」
「そうです!」
香澄は大きく頷き、グッと拳を握ってみせた。
「よーし、頑張るかな」
「応援してます!」
香澄はニッコリ笑い、励ますように彼の背中をトントンと叩く。
「香澄ちゃんっていい子だね」
「えっ? いえ、だから普通ですって」
笑って誤魔化した香澄は、今度こそ立ち上がった。
「うまくいくといいですね」
話しながら、二人はようやく店内に入った。
「私、お手洗いに寄ってから戻ります」
「ん、分かった」
香澄は手洗いに寄り、赤くなっていた顔が大分落ち着いたのを確認した。
そして用を足してからもう一度リップを塗り直し、佑のもとに戻った。
**
(あ……)
席に戻ろうとして佑を見つけた香澄は、思わず立ち止まった。
佑は向かいの席の透子と、何かを話し笑い合っている。
勿論、同じ場には勇斗もいるのだが、佑が学友と楽しそうに過ごしている姿を見て、とても「遠い」と感じてしまった。
(声を掛けづらいし、邪魔しちゃいけないかな……。少しスマホでも弄ってようかな)
入り口近くに戻った香澄は、スマホを開いて通知をチェックした。
麻衣からは新しいメッセージは入っていない。
(何かしてるのかな。……あっ、イチャイチャしてる!? それは邪魔したら駄目だ……)
親友とマティアスの進展を想像した香澄は、にやぁ……と笑う。
(結婚の許可もらったのかぁ……。あの二人、結婚するんだ……)
考えれば考えるほど、にやつきが収まらない。
そのあと、恐ろしい数のバッジが溜まっている、双子とのトークルームを開いた。
相変わらず自由な会話が続いていて、それを見ていると「わざわざ私も入ってるトークルームで話さなくてもいいのに……」と思ってしまう。
(週末に行くバーの話をここでしなくても、二人で話せばいいのに……)
心の中で突っ込みを入れたあと、香澄は店内を見てそっと息を吐いた。
スマホ越しにいつもの人たちに癒やしてもらおうと思ったが、いま香澄は佑の同窓会に同行している。
(現実を見ないと……)
どうしてテーブルに戻りづらかったのか改めて考えると、寂しさを感じたからだ。
(佑さんが私の知らない人みたいに思えたからだよな……)
常に佑の側にいるのは自分なのに、学生時代いつも一緒だった人たちといる姿を見ると、「声をかけてはいけない」「自分はお邪魔虫」という気持ちになってしまう。
また溜め息をついた時、「香澄?」と佑の声がした。
「あ……」
顔を上げると、彼がこちらに歩み寄ってくるところだ。
13
お気に入りに追加
2,572
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜
青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」
三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。
一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。
「忘れたとは言わせねぇぞ?」
偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。
「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」
その溺愛からは、もう逃れられない。
*第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる