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第十九部・マティアスと麻衣 編
指輪まだ?
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「ドイツのビールには敵わないかもしれないけど、乾杯! マティアスさん、いつかドイツ案内してね!」
信司が缶ビールを掲げ、麻衣とマティアスの缶にぶつける。
「はい、乾杯! 何の乾杯か知らないけど」
麻衣もマティスの缶に自分の缶をぶつけ、ぐいっと呷る。
そして信司が作ってくれたつまみを食べつつ、御劔邸の写真を見せ、マティアスとのなれそめを話していく。
「香澄ちゃん、本当にあの御劔佑と一緒にいるんだなぁ……。ねーちゃんが写真撮ったなら本物だわ……」
信司はしみじみと言ってからマティアスを見て、何度も頷く。
「マティアスさんも、どうやらマジにねーちゃんが好きみたいだし。…………あーーーー……良かったぁ」
「シンジはいい弟だな」
「でしょー。自慢の弟なの。とっても優しい子だよ」
麻衣とマティアスはソファに座っていて、信司は床に座っている。
最初はマティアスが床に座ろうとしたのだが、「床に座るの慣れてないんじゃないの?」と信司が気を利かせてこうなった。
その結果マティアスが「いつか寺に座禅を組みに行きたい」と言ったのは、いつもの事だ。
「お父さんとお母さん、何て言うかな」
「うーん。親だからまず反対するだろうけど、でもマティアスさんってチャラついてないし、真剣に話せばいけるんじゃないかな? 良くも悪くも昭和の人だから、ドイツ人って聞いただけで一線引きそうだけど」
「だよねぇ……」
悩む姉と弟に、マティアスが疑問を呈する。
「日本人はドイツ人を嫌っているだろうか?」
「そうじゃないんだよね。外国人に慣れてないっていうか」
麻衣が言い、信司が頷く。
「そうそう。日本って島国だろ? 今でこそ東京には当たり前に外国人がいるし、札幌でも外国人を見るようになった。でもヨーロッパほど色んな国の人がいて当たり前の感覚じゃないと思う。札幌で白人や黒人を見ると『珍しい』って思っちゃう。悪気はないんだけど、慣れてなくて珍しいんだ。感覚が田舎だから、珍しいとつい見ちゃうし、どんな人か分からないからステレオタイプで考えようとする」
信司の説明に、マティアスはある程度納得したようだ。
「なるほど、理解した。ドイツの田舎へ行くと、アジア人への態度がそうかもしれない。恐らくヨーロッパのどこの国でも通じる現象だろう。都会、田舎と一概に言えないし、個人差もあると思う。慣れていないという問題は大きいな」
問題を肯定的に捉えたマティアスを、信司は擁護する。
「でもマティアスさんは日本語ペラペラだし、ちゃんと自己紹介できるだろ? だからそんなに心配してないんだよね。ねーちゃんがアシストして紹介するより、日本語で自分の人となりを語ったほうが、何より親も安心すると思うし」
信司は自分の作ったつまみを「我ながら美味い」と自画自賛しつつ、どんどんビールを飲んでいく。
ちなみに麻衣も酒には強いほうだ。
香澄はあまり強くないので、一緒に飲む時は自然とセーブ気味になるが、家族で飲んでいると結構量を飲む。
「フラウ・セツコに連絡したら、『娘さんを僕にください』と言うべきらしいが、それで合っているか?」
佑の祖母の名前が出て来て、麻衣は「お世話になった人だもんなぁ」と納得する。
信司は重々しく頷いた。
「多分それでいいと思う。……ってマティアスさん、指輪まだ?」
信司は、麻衣の指を見て婚約指輪の話をする。
結婚指輪の話になり、麻衣が動揺した。
「しっ、信司?」
動揺した麻衣を脇に、マティアスはいつものように淡々と答える。
「これから東京に移ったら、記念になる店で買いたいと思っている」
「うーん。俺の感覚だけど、まずプロポーズして指輪贈ってから、両親への挨拶じゃないかな」
「そうか」
マティアスは頷いてから、スマホを出して何やら調べ始める。
「わぁっ! 信司、余計な事を吹き込まなくていいってば! 婚約指輪なんていいんだって。結婚指輪さえあればいいの! 高くない奴!」
高価な物を買われそうで、麻衣は慌てて言う。
「いや、そうはいかない。大事な事を見落とすところだった。シンジ、ありがとう」
「もーっ! マティアスさんまで……」
マティアスはすっかりその気になり、札幌市内のジュエリー店を検索している。
それを見て、麻衣は項垂れて溜め息をついた。
信司と仲良くなってくれたのは嬉しいが、逆に仲良くなりすぎて二対一の図式になっている。
信司が缶ビールを掲げ、麻衣とマティアスの缶にぶつける。
「はい、乾杯! 何の乾杯か知らないけど」
麻衣もマティスの缶に自分の缶をぶつけ、ぐいっと呷る。
そして信司が作ってくれたつまみを食べつつ、御劔邸の写真を見せ、マティアスとのなれそめを話していく。
「香澄ちゃん、本当にあの御劔佑と一緒にいるんだなぁ……。ねーちゃんが写真撮ったなら本物だわ……」
信司はしみじみと言ってからマティアスを見て、何度も頷く。
「マティアスさんも、どうやらマジにねーちゃんが好きみたいだし。…………あーーーー……良かったぁ」
「シンジはいい弟だな」
「でしょー。自慢の弟なの。とっても優しい子だよ」
麻衣とマティアスはソファに座っていて、信司は床に座っている。
最初はマティアスが床に座ろうとしたのだが、「床に座るの慣れてないんじゃないの?」と信司が気を利かせてこうなった。
その結果マティアスが「いつか寺に座禅を組みに行きたい」と言ったのは、いつもの事だ。
「お父さんとお母さん、何て言うかな」
「うーん。親だからまず反対するだろうけど、でもマティアスさんってチャラついてないし、真剣に話せばいけるんじゃないかな? 良くも悪くも昭和の人だから、ドイツ人って聞いただけで一線引きそうだけど」
「だよねぇ……」
悩む姉と弟に、マティアスが疑問を呈する。
「日本人はドイツ人を嫌っているだろうか?」
「そうじゃないんだよね。外国人に慣れてないっていうか」
麻衣が言い、信司が頷く。
「そうそう。日本って島国だろ? 今でこそ東京には当たり前に外国人がいるし、札幌でも外国人を見るようになった。でもヨーロッパほど色んな国の人がいて当たり前の感覚じゃないと思う。札幌で白人や黒人を見ると『珍しい』って思っちゃう。悪気はないんだけど、慣れてなくて珍しいんだ。感覚が田舎だから、珍しいとつい見ちゃうし、どんな人か分からないからステレオタイプで考えようとする」
信司の説明に、マティアスはある程度納得したようだ。
「なるほど、理解した。ドイツの田舎へ行くと、アジア人への態度がそうかもしれない。恐らくヨーロッパのどこの国でも通じる現象だろう。都会、田舎と一概に言えないし、個人差もあると思う。慣れていないという問題は大きいな」
問題を肯定的に捉えたマティアスを、信司は擁護する。
「でもマティアスさんは日本語ペラペラだし、ちゃんと自己紹介できるだろ? だからそんなに心配してないんだよね。ねーちゃんがアシストして紹介するより、日本語で自分の人となりを語ったほうが、何より親も安心すると思うし」
信司は自分の作ったつまみを「我ながら美味い」と自画自賛しつつ、どんどんビールを飲んでいく。
ちなみに麻衣も酒には強いほうだ。
香澄はあまり強くないので、一緒に飲む時は自然とセーブ気味になるが、家族で飲んでいると結構量を飲む。
「フラウ・セツコに連絡したら、『娘さんを僕にください』と言うべきらしいが、それで合っているか?」
佑の祖母の名前が出て来て、麻衣は「お世話になった人だもんなぁ」と納得する。
信司は重々しく頷いた。
「多分それでいいと思う。……ってマティアスさん、指輪まだ?」
信司は、麻衣の指を見て婚約指輪の話をする。
結婚指輪の話になり、麻衣が動揺した。
「しっ、信司?」
動揺した麻衣を脇に、マティアスはいつものように淡々と答える。
「これから東京に移ったら、記念になる店で買いたいと思っている」
「うーん。俺の感覚だけど、まずプロポーズして指輪贈ってから、両親への挨拶じゃないかな」
「そうか」
マティアスは頷いてから、スマホを出して何やら調べ始める。
「わぁっ! 信司、余計な事を吹き込まなくていいってば! 婚約指輪なんていいんだって。結婚指輪さえあればいいの! 高くない奴!」
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「いや、そうはいかない。大事な事を見落とすところだった。シンジ、ありがとう」
「もーっ! マティアスさんまで……」
マティアスはすっかりその気になり、札幌市内のジュエリー店を検索している。
それを見て、麻衣は項垂れて溜め息をついた。
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