1,262 / 1,544
第十九部・マティアスと麻衣 編
香澄は麺が好きだよなぁ
しおりを挟む
「今すぐご飯は、ちょっとキツイ」
「じゃあ、もう少ししてからにしよう。食べたいものは?」
「……うう……。ラーメンかピザの宅配」
「おっ、がっつりきたな」
「やだ?」
「いいよ。何ならサイドメニューも思う存分」
「よし……。やる気出てきた」
食い気を見せる香澄を見て、佑はクスクス笑う。
「四、五十分は掛かると思うし、逆算してもう少ししたら頼もう」
「うん」
香澄は温かい羽毛布団の中で身じろぎし、佑に抱きついて顔を胸板に押しつける。
「……何か、久しぶりにゆっくり寝た」
「俺もだ」
「邪魔だったとかじゃないの。『もてなさないと』って気を張っていたというか……」
「分かるよ。俺も同じだ」
佑は香澄の頭を撫でて額にキスをし、匂いを嗅いでくる。
「非日常が続くと、日常が恋しくなるのは皆同じだ」
低い声が体越しに伝わり、彼の体温と匂いとに気持ちが安らいでいく。
「麻衣さんはともかく、双子とマティアスがずっと側にいたら、気が休まらなかっただろう」
「そんな事ないよ。マティアスさんが来てくれたから、麻衣は恋する事ができた」
親友の幸せを思うと、胸の奥がほっこりする。
「その点は良かったと思うけど」
佑はポンポンと香澄の背中を撫で、少し考えてから言う。
「もしあいつがビザを取るなら、就労ビザより配偶者ビザのほうがいいのかな」
「そう! そうだね!」
香澄は急に元気になり、スマホに手を伸ばす。
そしてマティアスにメッセージを送った。
『おはようございます。配偶者ビザオススメです』
送ってから安心し、また佑にくっついてウトウトする。
「香澄? チャーシュー麺が待ってるぞ? ピザか?」
「うう……もうちょっと……」
目を閉じて食べ物の事を考えつつ、香澄は久しぶりに安らげる時間を満喫した。
**
ブランチの時間に、ラーメンの出前がきた。
香澄は味噌チャーシュー麺で、佑は醤油チャーシュー麺の大盛りだ。
そして二人で餃子と炒飯をつつく。
「香澄って道産子だから味噌ラーメン好きなのか?」
食べ終わってお腹をさすっている時に尋ねられ、首を傾げる。
「何で? ラーメンは何でも好きだよ」
「でも札幌の味噌ラーメン、旭川の煮干しの入った醤油ラーメンとか言うじゃないか」
「あー……。確かにあるかもね。でもそんなに意識しなかったかも。時々テレビで全国の麺ベスト百とかやってるけど、札幌の味噌ラーメンが一位だったのは嬉しかったな……」
「ほら、やっぱり誇りに思ってる」
佑がクスクス笑い、お茶を淹れてくれる。
「いやー、でも博多のとんこつラーメンとか憧れてるし、長崎ちゃんぽんもすっごい好き。皿うどんとか。あれ? うどんになっちゃった」
「香澄は麺が好きだよなぁ。はい、お茶」
「ありがとう」
「俺はラーメンなら、喜多方ラーメンが好きかな」
「あー。喜多方ラーメン、スープが透き通ってて美味しそうだよね。現地で食べてみたいな。あと、香川県に行ってうどんを食べたい。私、チェーン店のうどんしか知らないけど、本場のうどんってシンプルな食べ方でも、滅茶苦茶美味しいって言うよね」
「ぶっかけな」
「そう。ぶっかけ」
話しながら、佑はふうふうとお茶を冷ましている香澄をチラッと見る。
香澄は猫舌なので、お茶が唇につく前に、スゥゥゥゥ……と息を吸いきってしまう。
そのあと息が続かず、ハー……と飲むのを諦めているのを見て、佑は静かに笑い崩れた。
「な、なに」
「いや。猫舌治らないな、って思って」
「もー。治らないよ」
「舌先につけようとするからだよ。口の奥に入れればいいんだから」
「そんな器用な事できないよ」
「舌使いは上達しただろ?」
からかうように言われて、香澄は真っ赤になる。
「じゃあ、もう少ししてからにしよう。食べたいものは?」
「……うう……。ラーメンかピザの宅配」
「おっ、がっつりきたな」
「やだ?」
「いいよ。何ならサイドメニューも思う存分」
「よし……。やる気出てきた」
食い気を見せる香澄を見て、佑はクスクス笑う。
「四、五十分は掛かると思うし、逆算してもう少ししたら頼もう」
「うん」
香澄は温かい羽毛布団の中で身じろぎし、佑に抱きついて顔を胸板に押しつける。
「……何か、久しぶりにゆっくり寝た」
「俺もだ」
「邪魔だったとかじゃないの。『もてなさないと』って気を張っていたというか……」
「分かるよ。俺も同じだ」
佑は香澄の頭を撫でて額にキスをし、匂いを嗅いでくる。
「非日常が続くと、日常が恋しくなるのは皆同じだ」
低い声が体越しに伝わり、彼の体温と匂いとに気持ちが安らいでいく。
「麻衣さんはともかく、双子とマティアスがずっと側にいたら、気が休まらなかっただろう」
「そんな事ないよ。マティアスさんが来てくれたから、麻衣は恋する事ができた」
親友の幸せを思うと、胸の奥がほっこりする。
「その点は良かったと思うけど」
佑はポンポンと香澄の背中を撫で、少し考えてから言う。
「もしあいつがビザを取るなら、就労ビザより配偶者ビザのほうがいいのかな」
「そう! そうだね!」
香澄は急に元気になり、スマホに手を伸ばす。
そしてマティアスにメッセージを送った。
『おはようございます。配偶者ビザオススメです』
送ってから安心し、また佑にくっついてウトウトする。
「香澄? チャーシュー麺が待ってるぞ? ピザか?」
「うう……もうちょっと……」
目を閉じて食べ物の事を考えつつ、香澄は久しぶりに安らげる時間を満喫した。
**
ブランチの時間に、ラーメンの出前がきた。
香澄は味噌チャーシュー麺で、佑は醤油チャーシュー麺の大盛りだ。
そして二人で餃子と炒飯をつつく。
「香澄って道産子だから味噌ラーメン好きなのか?」
食べ終わってお腹をさすっている時に尋ねられ、首を傾げる。
「何で? ラーメンは何でも好きだよ」
「でも札幌の味噌ラーメン、旭川の煮干しの入った醤油ラーメンとか言うじゃないか」
「あー……。確かにあるかもね。でもそんなに意識しなかったかも。時々テレビで全国の麺ベスト百とかやってるけど、札幌の味噌ラーメンが一位だったのは嬉しかったな……」
「ほら、やっぱり誇りに思ってる」
佑がクスクス笑い、お茶を淹れてくれる。
「いやー、でも博多のとんこつラーメンとか憧れてるし、長崎ちゃんぽんもすっごい好き。皿うどんとか。あれ? うどんになっちゃった」
「香澄は麺が好きだよなぁ。はい、お茶」
「ありがとう」
「俺はラーメンなら、喜多方ラーメンが好きかな」
「あー。喜多方ラーメン、スープが透き通ってて美味しそうだよね。現地で食べてみたいな。あと、香川県に行ってうどんを食べたい。私、チェーン店のうどんしか知らないけど、本場のうどんってシンプルな食べ方でも、滅茶苦茶美味しいって言うよね」
「ぶっかけな」
「そう。ぶっかけ」
話しながら、佑はふうふうとお茶を冷ましている香澄をチラッと見る。
香澄は猫舌なので、お茶が唇につく前に、スゥゥゥゥ……と息を吸いきってしまう。
そのあと息が続かず、ハー……と飲むのを諦めているのを見て、佑は静かに笑い崩れた。
「な、なに」
「いや。猫舌治らないな、って思って」
「もー。治らないよ」
「舌先につけようとするからだよ。口の奥に入れればいいんだから」
「そんな器用な事できないよ」
「舌使いは上達しただろ?」
からかうように言われて、香澄は真っ赤になる。
12
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる