1,261 / 1,544
第十九部・マティアスと麻衣 編
おやすみなさい
しおりを挟む
だが世の中、絶対という言葉はない。
だからマティアスは今でも怯えているのだ。
「大丈夫だよ。地球の裏側にいるんだから、そう簡単に見つからないって」
言ってから、「あれ? 日本の裏側ってブラジルだっけ?」と舌を出す。
「……すまない。心配しすぎている自覚はある」
珍しく落ち込んでいるらしい彼の腕をポンポンと叩き、励ます。
「何かあったらその時に考えよう。ここは札幌だし、彼女はマティアスさんが札幌に来てる事すら知らないはずだよ」
笑いかけると、やっとマティアスの表情が緩んだ。
「分かった。不安になってすまない。もう気にしないようにする」
「うん。……でさ。明日、私の弟がマティアスさんに会いたいって言ってるんだけど、いい? 弟が手料理作ってくれるって。結構うまいよ、あの子」
「ああ、ぜひ会いたい」
話題が変わって、マティアスはさらに表情を柔らかくした。
「一週間後には実家に行きたいけど、その前に弟を懐柔したほうがいいかな? って思ったんだ」
「名案だ。懐柔するのに秘策はあるか?」
「うーん。あの子、人なつっこいから、特に対策は必要ないと思う。弟の作った物、『美味しい』って食べたらそれで喜ぶと思いますよ」
「分かった」
買い物も終えたし、そろそろ休みたいと思った麻衣は、自分も汗を流す事にした。
ゆっくりお湯に浸かって風呂から上がると、布団に潜ってタブレットを見ていたマティアスがこちらを見てきた。
「……な、なに?」
「風呂上がりのマイ、いいな」
「もー」
照れくささを紛らわせるために手をパタパタと振り、水を飲む。
「ひとまず、今日は寝よう。電気、消しますよ」
「ああ」
部屋の電気を消し、慣れた足取りでベッドまで向かう。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
この部屋に男性を泊めるのは初めてだな……と思いつつ、目を閉じた。
(いびきかいたらやだな)
そう思ったが、疲れ切っていてあっという間に眠ってしまった。
**
土曜日の朝。
「ぅ…………、く……」
香澄は起きようとして、体のだるさにうめいた。
あのあと佑は後半戦を始め、朝になるまで寝かせてくれなかった。
香澄もタガが外れたように感じて喘ぎ、我を忘れてしまった。
そうなると、必ず翌朝に反動を味わう。
行為が終わったら何もできず泥のように眠ってしまうが、翌日目覚めると体液でグチャグチャになったはずの体は、綺麗に清拭されている。
「佑さんに感謝しないとな」と思うのだが、当然とんでもなく申し訳なくて恥ずかしい。
「大丈夫か?」
声を掛けられ、香澄は恨みがましい目で佑を見る。
「お……起きれない……」
「どうしたい?」
「…………お、……おしっこ……」
「了解」
恥ずかしくて堪らないが、動けないので仕方がない。
下半身にスウェットズボンを穿いた佑は、香澄を抱き上げる。
そしてベッド裏にある洗面所に連れていった。
「す……すみません」
「ごゆっくり」
「もー……」
気遣われるのも恥ずかしく、パタンと閉じたドアを睨んでから両手で顔を覆った。
用足しを終えてモソモソとベッドに戻ると、佑がチュッとキスをしてきた。
「朝ご飯、食べる?」
「んー……何時?」
「十時前」
「あぁ……」
寝過ぎだ、と香澄は嘆息した。
だからマティアスは今でも怯えているのだ。
「大丈夫だよ。地球の裏側にいるんだから、そう簡単に見つからないって」
言ってから、「あれ? 日本の裏側ってブラジルだっけ?」と舌を出す。
「……すまない。心配しすぎている自覚はある」
珍しく落ち込んでいるらしい彼の腕をポンポンと叩き、励ます。
「何かあったらその時に考えよう。ここは札幌だし、彼女はマティアスさんが札幌に来てる事すら知らないはずだよ」
笑いかけると、やっとマティアスの表情が緩んだ。
「分かった。不安になってすまない。もう気にしないようにする」
「うん。……でさ。明日、私の弟がマティアスさんに会いたいって言ってるんだけど、いい? 弟が手料理作ってくれるって。結構うまいよ、あの子」
「ああ、ぜひ会いたい」
話題が変わって、マティアスはさらに表情を柔らかくした。
「一週間後には実家に行きたいけど、その前に弟を懐柔したほうがいいかな? って思ったんだ」
「名案だ。懐柔するのに秘策はあるか?」
「うーん。あの子、人なつっこいから、特に対策は必要ないと思う。弟の作った物、『美味しい』って食べたらそれで喜ぶと思いますよ」
「分かった」
買い物も終えたし、そろそろ休みたいと思った麻衣は、自分も汗を流す事にした。
ゆっくりお湯に浸かって風呂から上がると、布団に潜ってタブレットを見ていたマティアスがこちらを見てきた。
「……な、なに?」
「風呂上がりのマイ、いいな」
「もー」
照れくささを紛らわせるために手をパタパタと振り、水を飲む。
「ひとまず、今日は寝よう。電気、消しますよ」
「ああ」
部屋の電気を消し、慣れた足取りでベッドまで向かう。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
この部屋に男性を泊めるのは初めてだな……と思いつつ、目を閉じた。
(いびきかいたらやだな)
そう思ったが、疲れ切っていてあっという間に眠ってしまった。
**
土曜日の朝。
「ぅ…………、く……」
香澄は起きようとして、体のだるさにうめいた。
あのあと佑は後半戦を始め、朝になるまで寝かせてくれなかった。
香澄もタガが外れたように感じて喘ぎ、我を忘れてしまった。
そうなると、必ず翌朝に反動を味わう。
行為が終わったら何もできず泥のように眠ってしまうが、翌日目覚めると体液でグチャグチャになったはずの体は、綺麗に清拭されている。
「佑さんに感謝しないとな」と思うのだが、当然とんでもなく申し訳なくて恥ずかしい。
「大丈夫か?」
声を掛けられ、香澄は恨みがましい目で佑を見る。
「お……起きれない……」
「どうしたい?」
「…………お、……おしっこ……」
「了解」
恥ずかしくて堪らないが、動けないので仕方がない。
下半身にスウェットズボンを穿いた佑は、香澄を抱き上げる。
そしてベッド裏にある洗面所に連れていった。
「す……すみません」
「ごゆっくり」
「もー……」
気遣われるのも恥ずかしく、パタンと閉じたドアを睨んでから両手で顔を覆った。
用足しを終えてモソモソとベッドに戻ると、佑がチュッとキスをしてきた。
「朝ご飯、食べる?」
「んー……何時?」
「十時前」
「あぁ……」
寝過ぎだ、と香澄は嘆息した。
13
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる