1,257 / 1,544
第十九部・マティアスと麻衣 編
そっけない部屋ですみません
しおりを挟む
「マティアスさんもお水飲みます?」
「ああ、もらおう」
麻衣はグラスに水を注ぎ、「はい」と手渡す。
「何もなくてすみません。今回、家を空けるのが長かったので、冷蔵庫を空っぽにして出かけたんです」
「いや、構わない。水は美味しい」
麻衣は相変わらずなマティアスに思わず笑ってから、部屋が散らかっていないかさり気なく確認する。
リビングには二人掛けのソファとローテーブルがある。
AV機器は少し金を掛けて、そこそこ大きな4Kテレビとブルーレイレコーダーがある。
ステレオも少しいい物だし、夜間に音楽を聴く時のヘッドフォンも凝っている。
基本的に料理をするのは好きなので、冷蔵庫は大きい物を買ったし、調味料も各種揃っている。
金があれば鍋類も良い物を揃えたいが、今はまだ集めている途中だ。
寝室にはシングルベッドがあり、量販店で買った植物柄の緑色のカバーを掛けている。
カーテンも淡い緑色で、一人暮らしをする時に「緑は心を安らげる効果があるらしい」と知って統一させた。
部屋に女子っぽい物――ぬいぐるみやアンティークな小物などは一切ない。
そこも香澄と同じで、「掃除が大変そうだもんね」で意見が一致している。
「何か……そっけない部屋ですみません。もっと可愛かったらいいんですが」
「いや? とても住み心地が良さそうだ」
「ありがとうございます。荷物を片づけるので、適当に座っていてください。テレビとか見ていていいんで」
そう言って麻衣はスーツケースを開け、洗濯物を出していく。
マティアスの前で下着を出すのは恥ずかしいので、下着が入ったビニール袋はそのままだ。
「俺も洗濯が必要だな。近くにコインランドリーはあるだろうか?」
「ん? ありますけど……。うちの洗濯機が嫌じゃなかったら、自由に使っていいですよ?」
「ありがとう。じゃあ、金を払う」
「いやいや、いいですって」
早めに洗濯をしたいが、今日は遅いので時間的に近所迷惑だ。
(明日やろう。……っていうか、マティアスさんがいるのに下着を干すのは恥ずかしいな)
香澄のように可愛くてセクシーな下着ならともかく、麻衣の下着は可愛くなく、そこそこ大きい。
(うー……)
体で隠しながら下着類をネットに入れ、麻衣は考え込む。
「マイ、同じ洗濯機で俺のパンツを洗っても、嫌じゃないか?」
「ぶふっ」
どストレートに言われ、思わず噴き出してしまった。
(ほんっと飾らない人だなぁ)
「思春期の娘じゃないんですから、そんな事言いませんよ」
「……そうか。思春期の娘はそういう事を言う可能性があるのか」
マティアスはそう言って何やら考え始める。
麻衣は彼が何を想像しているのか察して、真っ赤になった。
「まっ、まだ先の話ですからね!?」
「想像するだけタダだろう」
何とも俗っぽい事を言ってから、マティアスは手持ち無沙汰にテレビをつける。
話題が逸れたのに安堵し、麻衣は洗濯機に衣類を入れて溜め息をついた。
明日は土曜日なので、土日のうちに荷物を片付けて日曜日の夜にはゆっくり眠りたい。
「とりあえず、お風呂入って寝ましょうか」
そう言って、布団を出すべく押し入れを開ける。
「力仕事なら俺がやる」
「あ、どうも。じゃあ、お願いします」
敷き布団と羽毛布団を出してもらったあと、シーツは二人で協力してセットする。
「香澄もこの布団で寝てたんですよ。たまに母も来て寝ますけど」
「そうか。……何回も泊まりに来ていて、カスミが羨ましい」
しみじみと言ったマティアスの嫉妬がおかしくて、麻衣は羽根枕を整えながら微笑む。
そのあとお風呂が沸くまで、マティアスとたわいのない話をした。
「日本に来て一番何が印象的でした?」
「タヌキの金玉かな」
「んぶふっ」
即答したマティアスの言葉に、麻衣は思わず笑う。
その件については香澄から聞いていたので、うんうんと頷いておいた。
「ああ、もらおう」
麻衣はグラスに水を注ぎ、「はい」と手渡す。
「何もなくてすみません。今回、家を空けるのが長かったので、冷蔵庫を空っぽにして出かけたんです」
「いや、構わない。水は美味しい」
麻衣は相変わらずなマティアスに思わず笑ってから、部屋が散らかっていないかさり気なく確認する。
リビングには二人掛けのソファとローテーブルがある。
AV機器は少し金を掛けて、そこそこ大きな4Kテレビとブルーレイレコーダーがある。
ステレオも少しいい物だし、夜間に音楽を聴く時のヘッドフォンも凝っている。
基本的に料理をするのは好きなので、冷蔵庫は大きい物を買ったし、調味料も各種揃っている。
金があれば鍋類も良い物を揃えたいが、今はまだ集めている途中だ。
寝室にはシングルベッドがあり、量販店で買った植物柄の緑色のカバーを掛けている。
カーテンも淡い緑色で、一人暮らしをする時に「緑は心を安らげる効果があるらしい」と知って統一させた。
部屋に女子っぽい物――ぬいぐるみやアンティークな小物などは一切ない。
そこも香澄と同じで、「掃除が大変そうだもんね」で意見が一致している。
「何か……そっけない部屋ですみません。もっと可愛かったらいいんですが」
「いや? とても住み心地が良さそうだ」
「ありがとうございます。荷物を片づけるので、適当に座っていてください。テレビとか見ていていいんで」
そう言って麻衣はスーツケースを開け、洗濯物を出していく。
マティアスの前で下着を出すのは恥ずかしいので、下着が入ったビニール袋はそのままだ。
「俺も洗濯が必要だな。近くにコインランドリーはあるだろうか?」
「ん? ありますけど……。うちの洗濯機が嫌じゃなかったら、自由に使っていいですよ?」
「ありがとう。じゃあ、金を払う」
「いやいや、いいですって」
早めに洗濯をしたいが、今日は遅いので時間的に近所迷惑だ。
(明日やろう。……っていうか、マティアスさんがいるのに下着を干すのは恥ずかしいな)
香澄のように可愛くてセクシーな下着ならともかく、麻衣の下着は可愛くなく、そこそこ大きい。
(うー……)
体で隠しながら下着類をネットに入れ、麻衣は考え込む。
「マイ、同じ洗濯機で俺のパンツを洗っても、嫌じゃないか?」
「ぶふっ」
どストレートに言われ、思わず噴き出してしまった。
(ほんっと飾らない人だなぁ)
「思春期の娘じゃないんですから、そんな事言いませんよ」
「……そうか。思春期の娘はそういう事を言う可能性があるのか」
マティアスはそう言って何やら考え始める。
麻衣は彼が何を想像しているのか察して、真っ赤になった。
「まっ、まだ先の話ですからね!?」
「想像するだけタダだろう」
何とも俗っぽい事を言ってから、マティアスは手持ち無沙汰にテレビをつける。
話題が逸れたのに安堵し、麻衣は洗濯機に衣類を入れて溜め息をついた。
明日は土曜日なので、土日のうちに荷物を片付けて日曜日の夜にはゆっくり眠りたい。
「とりあえず、お風呂入って寝ましょうか」
そう言って、布団を出すべく押し入れを開ける。
「力仕事なら俺がやる」
「あ、どうも。じゃあ、お願いします」
敷き布団と羽毛布団を出してもらったあと、シーツは二人で協力してセットする。
「香澄もこの布団で寝てたんですよ。たまに母も来て寝ますけど」
「そうか。……何回も泊まりに来ていて、カスミが羨ましい」
しみじみと言ったマティアスの嫉妬がおかしくて、麻衣は羽根枕を整えながら微笑む。
そのあとお風呂が沸くまで、マティアスとたわいのない話をした。
「日本に来て一番何が印象的でした?」
「タヌキの金玉かな」
「んぶふっ」
即答したマティアスの言葉に、麻衣は思わず笑う。
その件については香澄から聞いていたので、うんうんと頷いておいた。
13
お気に入りに追加
2,511
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる