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第十九部・マティアスと麻衣 編
もっとしたい
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麻衣からの連絡は、もっと前にきている。
(やば……。新千歳着いたら連絡してって言っておきながら、エッチしてて返事できなかったなんて……)
自分のふがいなさに、香澄は溜め息をついた。
麻衣から『新千歳空港に着いたよー』と連絡が入っていたのは二十時半すぎだ。
それから荷物を受け取って快速エアポートに乗ったようで、『札幌駅だよ』と連絡があったのが二十二時すぎだ。
『この時間から、マティアスさんが泊まるホテル探すのは厳しそう。仕方ないから今日はうちに泊める』
(おや……)
その後を報告され、香澄は思わずニヤける。
(もう家について休んでる時間かな。お風呂とか入ってるのかな。でも返事できなかったお詫びぐらいはいいかな? 寝ていても明日の朝見るだろうし)
そう思い、麻衣へのメッセージをトントンと打っていく。
『ごめんなさい。ちょっと手が離せなくてこんな時間になりました。無事に着いて良かった! 飛行機揺れなかった? マティアスさんの札幌の感想とか、明日にでもゆっくり教えてね』
麻衣の家は札幌市の中を流れる豊平川という川の近くで、豊水すすきの駅という地下鉄駅から徒歩五分の場所にあった。
女性向けの1LDK賃貸マンションで、新しいシステムキッチンが決め手になった。
コンビニもすぐ近くにあり、すすきのと地名がついているが、繁華街の中ではないので割と落ち着いた場所だ。
香澄が以前に一人暮らしをしていたマンションは中島公園側にあり、お互いの家に行くのに札幌市電と徒歩で二十分ほどだった。
とはいえ、麻衣は月極駐車場に愛車を置いていたので、彼女とデートする時は車で迎えに来てくれてすぐだったが。
「マティアスさん、今日麻衣の家に泊まるんだって」
「ふぅん。まぁ、札幌に着いたのは遅い時間だろうから、宿探しは疲れるかな」
そう答えておきながら、佑はぼんやりと考える。
秘書だったマティアスが、宿の手配をしていない訳がない。
麻衣の家に上がり込みたくて、、わざと現地に着いてから「そういえば……」という体をとったのだろうと思った。
だが男として分からないでもないので、香澄には黙っておく事にした。
香澄がスマホを置こうとすると、コネクターナウの通知音がした。
「う……」
アプリを開くと、麻衣から返事があった。
『エッチしてたんでしょ(笑)? 分かってるから大丈夫! 私は疲れてるからしないけどねー! じゃあ、また明日! おやすみ!』
「ううー!」
香澄はまたモフッと枕に顔を埋め、うなる。
そして笑いながら麻衣に『おやすみなさい』と書いてあるスタンプを送った。
「スマホ終わった?」
「うん……」
香澄は手帳型のケースを閉じて枕元に置くと、佑に向き直る。
「キスさせて」
そう言ったあと頬を撫でられ、唇を親指で辿られたかと思うとキスされた。
「ん……」
今度は奪うようなキスではなく、優しくついばむキスだ。
ちゅ、ちゅ、と可愛らしい口づけを受けていると、思わず笑顔になってしまう。
香澄も佑の唇をついばみ、顔を離してからお互い笑い合った。
「もっとしたい」
甘い声音で言われ、香澄は「もー」と笑ってちょんとキスをする。
「いや、そうじゃなくて……」
スルリと香澄のお尻を撫でた佑は、歯切れ悪く言って苦笑いした。
「……セックス、もっとしたい」
あれほど激しいセックスを立て続けにしたというのに、この男はまだ満足していないらしい。
「ちょっと休ませて」
「休ませてっていう事は、していいっていう事?」
香澄の頬にキスをし、佑は耳元で囁いてくる。
低い声で耳朶をくすぐられ、背中や腰、お尻を撫でられて、ゾクゾクしてしまう。
「言っておくけど、仕事始めまで香澄を手放すつもりはないよ。『覚悟しておいて』とは言ったけど」
「う……、ん」
香澄は真っ赤になりながら、小さく頷く。
「言質は取ったからな」
佑は嬉しそうに目を細め、香澄に覆い被さった。
**
(やば……。新千歳着いたら連絡してって言っておきながら、エッチしてて返事できなかったなんて……)
自分のふがいなさに、香澄は溜め息をついた。
麻衣から『新千歳空港に着いたよー』と連絡が入っていたのは二十時半すぎだ。
それから荷物を受け取って快速エアポートに乗ったようで、『札幌駅だよ』と連絡があったのが二十二時すぎだ。
『この時間から、マティアスさんが泊まるホテル探すのは厳しそう。仕方ないから今日はうちに泊める』
(おや……)
その後を報告され、香澄は思わずニヤける。
(もう家について休んでる時間かな。お風呂とか入ってるのかな。でも返事できなかったお詫びぐらいはいいかな? 寝ていても明日の朝見るだろうし)
そう思い、麻衣へのメッセージをトントンと打っていく。
『ごめんなさい。ちょっと手が離せなくてこんな時間になりました。無事に着いて良かった! 飛行機揺れなかった? マティアスさんの札幌の感想とか、明日にでもゆっくり教えてね』
麻衣の家は札幌市の中を流れる豊平川という川の近くで、豊水すすきの駅という地下鉄駅から徒歩五分の場所にあった。
女性向けの1LDK賃貸マンションで、新しいシステムキッチンが決め手になった。
コンビニもすぐ近くにあり、すすきのと地名がついているが、繁華街の中ではないので割と落ち着いた場所だ。
香澄が以前に一人暮らしをしていたマンションは中島公園側にあり、お互いの家に行くのに札幌市電と徒歩で二十分ほどだった。
とはいえ、麻衣は月極駐車場に愛車を置いていたので、彼女とデートする時は車で迎えに来てくれてすぐだったが。
「マティアスさん、今日麻衣の家に泊まるんだって」
「ふぅん。まぁ、札幌に着いたのは遅い時間だろうから、宿探しは疲れるかな」
そう答えておきながら、佑はぼんやりと考える。
秘書だったマティアスが、宿の手配をしていない訳がない。
麻衣の家に上がり込みたくて、、わざと現地に着いてから「そういえば……」という体をとったのだろうと思った。
だが男として分からないでもないので、香澄には黙っておく事にした。
香澄がスマホを置こうとすると、コネクターナウの通知音がした。
「う……」
アプリを開くと、麻衣から返事があった。
『エッチしてたんでしょ(笑)? 分かってるから大丈夫! 私は疲れてるからしないけどねー! じゃあ、また明日! おやすみ!』
「ううー!」
香澄はまたモフッと枕に顔を埋め、うなる。
そして笑いながら麻衣に『おやすみなさい』と書いてあるスタンプを送った。
「スマホ終わった?」
「うん……」
香澄は手帳型のケースを閉じて枕元に置くと、佑に向き直る。
「キスさせて」
そう言ったあと頬を撫でられ、唇を親指で辿られたかと思うとキスされた。
「ん……」
今度は奪うようなキスではなく、優しくついばむキスだ。
ちゅ、ちゅ、と可愛らしい口づけを受けていると、思わず笑顔になってしまう。
香澄も佑の唇をついばみ、顔を離してからお互い笑い合った。
「もっとしたい」
甘い声音で言われ、香澄は「もー」と笑ってちょんとキスをする。
「いや、そうじゃなくて……」
スルリと香澄のお尻を撫でた佑は、歯切れ悪く言って苦笑いした。
「……セックス、もっとしたい」
あれほど激しいセックスを立て続けにしたというのに、この男はまだ満足していないらしい。
「ちょっと休ませて」
「休ませてっていう事は、していいっていう事?」
香澄の頬にキスをし、佑は耳元で囁いてくる。
低い声で耳朶をくすぐられ、背中や腰、お尻を撫でられて、ゾクゾクしてしまう。
「言っておくけど、仕事始めまで香澄を手放すつもりはないよ。『覚悟しておいて』とは言ったけど」
「う……、ん」
香澄は真っ赤になりながら、小さく頷く。
「言質は取ったからな」
佑は嬉しそうに目を細め、香澄に覆い被さった。
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