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第十九部・マティアスと麻衣 編
無言の攻防
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「!」
「カスミ、またね」
そう言ってギューッと抱き締められ、チュッチュッと左右の頬にビズをされた。
かと思うと、クラウスはすぐに体を離す。
「僕も思うんだけどさ」
そして彼はアロイスの反対側から佑の肩を抱き、兄の話の続きを請け負う。
するとパッと佑から離れたアロイスが、香澄を抱き締めて左右の頬にビスをした。
「またね」
アロイスはポンポンと香澄の頭を撫で、ニッと笑う。
ボーッとしているうちに彼は佑のもとに戻り、「やっぱいーわ!」とクラウスと一緒に佑の背中をバンッと叩いた。
「てっ! 何だよ」
訳の分かっていない佑を見て、双子はケラケラ笑う。
そして「じゃーねぇ!」と立ち去っていった。
「…………何だったんだ……」
溜め息をついた佑は、困惑顔でこちらを振り向く。
香澄は慌てて「何だったんだろうね?」と笑った。
佑はキョトンとしていたが、微笑んで手を差しだしてくる。
「帰ろうか」
「うん」
二人きりで歩くのが、随分久しぶりに思える。
周囲から「御劔様だ」という声を聞きながら、じんわりと緊張してきた。
家に帰れば二人きりだ。
そして佑には、『客が帰ったあと、容赦なしに抱く』と言われている。
まさか佑が、その言葉を忘れていると思えない。
(……どうしよう)
お預けの間、指で達かせてもらった事はあったが、セックスはとても久しぶりに思える。
(……お風呂入るって言って、心の準備をさせてもらおう)
香澄は「家に帰れば抱かれてしまう」という思いに支配され、ぼんやりとしているうちに車に乗っていた。
ボーッと車窓の外を見ていると、そっと手を握られる。
ピクッと手を震わせてしまい、意識しすぎて恥ずかしくて言い訳しようと思ったものの、どう言ったらいいのか分からない。
結局そのまま、何も言わずに窓の外を見て、誤魔化してしまった。
車外の景色を見ているはずなのに、香澄は視界に入るものにはまったく反応せず、全神経を左手に集中させていた。
佑は、ツ……、と香澄の手の輪郭をなぞり、ほっそりとした指を辿ってきた。
そして指の股を優しく擦ってくる。
香澄は窓の外を見たまま、そっと息を吸う。
胸がドキドキして、もう佑の事しか考えられない。
関節をスリスリ撫でられ、性感帯でもないのにお腹の奥が甘く疼く。
(ダメだ……。皆いなくなってすぐなのに、こんな……)
手がじんわり熱くなった気がし、吐息を漏らす。
佑は香澄の太腿を撫で、スカート越しにグッと足の付け根に指を食い込ませた。
「…………っ」
(そこはダメ!)
香澄はとっさに佑の手を掴んだ。
彼を見ると、熱を孕んだ目で訴えかけている。
ネオンを背景にした彼は、いつにも増して凄艶に美しかった。
香澄は佑の手を掴んだまま、黙って首を左右に振る。
ぎゅう……と彼の手を握っていると、佑は理解してくれたらしく、太腿から手を離す。
二人は手を繋いだまま、御劔邸までを無言で過ごした。
**
小金井に挨拶して車を降り、スマホで玄関のドアを開けて「ただいま」と中に入る。
フェリシアの挨拶を聞きながら靴を脱ごうとして、屈んだ腰を捕らえられた。
「!」
ビクッとして振り向くと、佑の目と視線がかち合った。
「たす――――」
何か言いかけた香澄の顎が捉えられたかと思うと、熱い唇が重なる。
「ん……っ」
ちゅうっと強く唇を吸われ、そのあわいを舌で舐められただけで、今までずっと堪えていたメスのスイッチが入ってしまった。
本能に呑まれそうになった香澄は恐怖を覚え、とっさに彼の胸板を押して距離を取ろうとする。
「…………!」
その瞬間目にしたのは、ヘーゼルの目にギラギラと欲望を宿したオスの顔だ。
――食べられる。
「カスミ、またね」
そう言ってギューッと抱き締められ、チュッチュッと左右の頬にビズをされた。
かと思うと、クラウスはすぐに体を離す。
「僕も思うんだけどさ」
そして彼はアロイスの反対側から佑の肩を抱き、兄の話の続きを請け負う。
するとパッと佑から離れたアロイスが、香澄を抱き締めて左右の頬にビスをした。
「またね」
アロイスはポンポンと香澄の頭を撫で、ニッと笑う。
ボーッとしているうちに彼は佑のもとに戻り、「やっぱいーわ!」とクラウスと一緒に佑の背中をバンッと叩いた。
「てっ! 何だよ」
訳の分かっていない佑を見て、双子はケラケラ笑う。
そして「じゃーねぇ!」と立ち去っていった。
「…………何だったんだ……」
溜め息をついた佑は、困惑顔でこちらを振り向く。
香澄は慌てて「何だったんだろうね?」と笑った。
佑はキョトンとしていたが、微笑んで手を差しだしてくる。
「帰ろうか」
「うん」
二人きりで歩くのが、随分久しぶりに思える。
周囲から「御劔様だ」という声を聞きながら、じんわりと緊張してきた。
家に帰れば二人きりだ。
そして佑には、『客が帰ったあと、容赦なしに抱く』と言われている。
まさか佑が、その言葉を忘れていると思えない。
(……どうしよう)
お預けの間、指で達かせてもらった事はあったが、セックスはとても久しぶりに思える。
(……お風呂入るって言って、心の準備をさせてもらおう)
香澄は「家に帰れば抱かれてしまう」という思いに支配され、ぼんやりとしているうちに車に乗っていた。
ボーッと車窓の外を見ていると、そっと手を握られる。
ピクッと手を震わせてしまい、意識しすぎて恥ずかしくて言い訳しようと思ったものの、どう言ったらいいのか分からない。
結局そのまま、何も言わずに窓の外を見て、誤魔化してしまった。
車外の景色を見ているはずなのに、香澄は視界に入るものにはまったく反応せず、全神経を左手に集中させていた。
佑は、ツ……、と香澄の手の輪郭をなぞり、ほっそりとした指を辿ってきた。
そして指の股を優しく擦ってくる。
香澄は窓の外を見たまま、そっと息を吸う。
胸がドキドキして、もう佑の事しか考えられない。
関節をスリスリ撫でられ、性感帯でもないのにお腹の奥が甘く疼く。
(ダメだ……。皆いなくなってすぐなのに、こんな……)
手がじんわり熱くなった気がし、吐息を漏らす。
佑は香澄の太腿を撫で、スカート越しにグッと足の付け根に指を食い込ませた。
「…………っ」
(そこはダメ!)
香澄はとっさに佑の手を掴んだ。
彼を見ると、熱を孕んだ目で訴えかけている。
ネオンを背景にした彼は、いつにも増して凄艶に美しかった。
香澄は佑の手を掴んだまま、黙って首を左右に振る。
ぎゅう……と彼の手を握っていると、佑は理解してくれたらしく、太腿から手を離す。
二人は手を繋いだまま、御劔邸までを無言で過ごした。
**
小金井に挨拶して車を降り、スマホで玄関のドアを開けて「ただいま」と中に入る。
フェリシアの挨拶を聞きながら靴を脱ごうとして、屈んだ腰を捕らえられた。
「!」
ビクッとして振り向くと、佑の目と視線がかち合った。
「たす――――」
何か言いかけた香澄の顎が捉えられたかと思うと、熱い唇が重なる。
「ん……っ」
ちゅうっと強く唇を吸われ、そのあわいを舌で舐められただけで、今までずっと堪えていたメスのスイッチが入ってしまった。
本能に呑まれそうになった香澄は恐怖を覚え、とっさに彼の胸板を押して距離を取ろうとする。
「…………!」
その瞬間目にしたのは、ヘーゼルの目にギラギラと欲望を宿したオスの顔だ。
――食べられる。
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