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第十九部・マティアスと麻衣 編
いつから知ってたの?
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「きっと警備員さんの厚意だと思う。他意はないのは分かっている」
いきなり警備員と言われ、香澄は訳が分からなくて目を丸くする。
「何?」
佑の言いたい事が分からない香澄は、大人しく次の言葉を待った。
「……井内と話をしていたか?」
井内の名前が出て、ドキッと鼓動が跳ね上がった。
「!」
目をまん丸にして佑を見てしまったので、その反応でバレバレだった。
佑は諦めたように笑いながら息を吐き、もう一度香澄を抱き寄せた。
「怒らないし、井内にも何もしないし、言わない。だから話して」
井内にTMタワーの出入り口で告白されたのは年末の事だ。
誰にも見られていないと思っていたし、彼も自分も誰にも言わないと思っていた。
だから、佑の耳に届いていたのは想定外だ。
「……いつから知ってたの?」
逆に尋ねると、佑はすんなりと教えてくれる。
「翌日くらいかな。例の誘拐未遂のあとは、警備員さん全員に香澄の顔を認識してもらった」
香澄は少し気まずくなって、黙りこむ。
「見張っていたと思ったならすまない。ただ、また〝何か〟があったら困るから、香澄の姿を確認した時は、きちんと見守ってもらっている」
言われて、確かにその通りだと思って頷いた。
「親密な様子だったけど、特に何もせず別れたとは聞いた。何もなかったのは理解している。……でも俺は心が狭いから、何を話していたのか気になって堪らない。だから、何を話していたのか教えてほしい」
嫉妬深い佑なりに我慢してくれていたと知り、ありがたくも申し訳ない。
ここまで正直に話してくれたのなら、自分も誠実に応えようと思った。
(ごめんなさい。井内さん)
香澄は心の中で彼に謝り、口を開いた。
「……告白、された」
ストレートに言うと、佑は少し間をあけたあと息を吐いた。
「断った……だろ?」
尋ねられ、コクンと頷く。
「丁重にお断りした。しつこくされなかったし、佑さんが好きだから無理ですって伝えたら、引き下がってくれた。気持ちを伝えられたら十分っていう感じだった」
「そうか。井内が常識人で良かった」
佑は香澄を抱き締めてスゥッ……と匂いを嗅ぎ、ゆっくり吐く。
「……話してくれてありがとう」
「ん……」
「香澄をここまで魅力ある女性にしたのは俺だけど、やっぱり他の男にも抜群の効果があるな……」
「そ、そんな事ないよ。東京に来てから誰かに告白されたの、初めてだよ?」
「そうか? 俺の中では、十人ぐらいに言い寄られてたイメージだ」
「もー……」
香澄は脱力して笑い、佑の肩に顔を押しつける。
そしてポツンと呟いた。
「……告白を断るってパワーが要るね」
「かもしれないな」
「佑さんはそう思わなかった? 今まで大勢に告白されたでしょ?」
ツンツンと彼をつつくと、佑は香澄の手をキュッと握って答える。
「フラフラするのをやめて香澄と付き合うまでは、女性と付き合う事にメリットを感じなくなっていた。好意を示されてもそっけなかったと思う。そうしたら、普通なら『こいつは靡かないな』ってすぐ分かるはずだ。それでもゴリ押ししてくる人は、冷たくあしらっても何も感じなかった」
「鉄の男だね」
「ははっ、何だそれ」
彼はもう過去に告白された事を、何とも思っていないだろう。だが香澄は違う。
「…………ずるい」
「ん?」
ポツンと呟いた香澄は、佑の肩にぐり……と額を押しつける。
「井内さんに告白されておいて……だけど、佑さんの話を聞くと、嫉妬……しちゃう」
「そういうつもりじゃなかったんだけどな」
佑はふはっと気が抜けたように笑い、香澄を抱き締めてソファに寝転んだ。
香澄は仰向けになった彼に身を預け、目を閉じて彼の体温を感じる。
――と、お尻に触られたかと思うと、ギュッとスキニー越しに揉まれた。
いきなり警備員と言われ、香澄は訳が分からなくて目を丸くする。
「何?」
佑の言いたい事が分からない香澄は、大人しく次の言葉を待った。
「……井内と話をしていたか?」
井内の名前が出て、ドキッと鼓動が跳ね上がった。
「!」
目をまん丸にして佑を見てしまったので、その反応でバレバレだった。
佑は諦めたように笑いながら息を吐き、もう一度香澄を抱き寄せた。
「怒らないし、井内にも何もしないし、言わない。だから話して」
井内にTMタワーの出入り口で告白されたのは年末の事だ。
誰にも見られていないと思っていたし、彼も自分も誰にも言わないと思っていた。
だから、佑の耳に届いていたのは想定外だ。
「……いつから知ってたの?」
逆に尋ねると、佑はすんなりと教えてくれる。
「翌日くらいかな。例の誘拐未遂のあとは、警備員さん全員に香澄の顔を認識してもらった」
香澄は少し気まずくなって、黙りこむ。
「見張っていたと思ったならすまない。ただ、また〝何か〟があったら困るから、香澄の姿を確認した時は、きちんと見守ってもらっている」
言われて、確かにその通りだと思って頷いた。
「親密な様子だったけど、特に何もせず別れたとは聞いた。何もなかったのは理解している。……でも俺は心が狭いから、何を話していたのか気になって堪らない。だから、何を話していたのか教えてほしい」
嫉妬深い佑なりに我慢してくれていたと知り、ありがたくも申し訳ない。
ここまで正直に話してくれたのなら、自分も誠実に応えようと思った。
(ごめんなさい。井内さん)
香澄は心の中で彼に謝り、口を開いた。
「……告白、された」
ストレートに言うと、佑は少し間をあけたあと息を吐いた。
「断った……だろ?」
尋ねられ、コクンと頷く。
「丁重にお断りした。しつこくされなかったし、佑さんが好きだから無理ですって伝えたら、引き下がってくれた。気持ちを伝えられたら十分っていう感じだった」
「そうか。井内が常識人で良かった」
佑は香澄を抱き締めてスゥッ……と匂いを嗅ぎ、ゆっくり吐く。
「……話してくれてありがとう」
「ん……」
「香澄をここまで魅力ある女性にしたのは俺だけど、やっぱり他の男にも抜群の効果があるな……」
「そ、そんな事ないよ。東京に来てから誰かに告白されたの、初めてだよ?」
「そうか? 俺の中では、十人ぐらいに言い寄られてたイメージだ」
「もー……」
香澄は脱力して笑い、佑の肩に顔を押しつける。
そしてポツンと呟いた。
「……告白を断るってパワーが要るね」
「かもしれないな」
「佑さんはそう思わなかった? 今まで大勢に告白されたでしょ?」
ツンツンと彼をつつくと、佑は香澄の手をキュッと握って答える。
「フラフラするのをやめて香澄と付き合うまでは、女性と付き合う事にメリットを感じなくなっていた。好意を示されてもそっけなかったと思う。そうしたら、普通なら『こいつは靡かないな』ってすぐ分かるはずだ。それでもゴリ押ししてくる人は、冷たくあしらっても何も感じなかった」
「鉄の男だね」
「ははっ、何だそれ」
彼はもう過去に告白された事を、何とも思っていないだろう。だが香澄は違う。
「…………ずるい」
「ん?」
ポツンと呟いた香澄は、佑の肩にぐり……と額を押しつける。
「井内さんに告白されておいて……だけど、佑さんの話を聞くと、嫉妬……しちゃう」
「そういうつもりじゃなかったんだけどな」
佑はふはっと気が抜けたように笑い、香澄を抱き締めてソファに寝転んだ。
香澄は仰向けになった彼に身を預け、目を閉じて彼の体温を感じる。
――と、お尻に触られたかと思うと、ギュッとスキニー越しに揉まれた。
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