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第十九部・マティアスと麻衣 編
マイを愛してもいいか?
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「だからもしかしたら、女性に主導権を握られるのが苦手かもしれない。だが相手がマイなら話は異なる。好きな人になら何をされても嬉しい。しかしマイを抱けるだけでも幸せなのに、それ以上の事を望むのは強欲な気がする」
「強欲なんてそんな」
(セックスするぐらい……)
彼の事情は分かっていても、ついそう思ってしまう。
同時に、普通の事を普通にできずに過ごした彼に、憐憫の情を抱いた。
だからこそ、「私が幸せにしてあげられたら……」と願うのだ。
今後の事はまだ詳しく決まっていないが、マティアスと一緒になる覚悟は決めた。
優しくて気配りのできる彼なら、喧嘩もほぼせず、穏やかに結婚生活を送れるのではと思った。
その中で、マティアスが何かを望めば、セックスだろうが何だろうが、可能な限り応えたい。
「大丈夫。いつか〝普通〟は〝普通〟だって思えるようにしてあげるから」
濡れた手でマティアスの頬を撫でると、彼は愛しそうに目を細め、麻衣の掌にキスをした。
風呂から上がって体を拭いていると、マティアスが「俺がマイの髪を乾かしたい」と言い、そうしてもらう事にした。
美容室以外で誰かに髪を乾かしてもらうのは初めてで、気恥ずかしい。
けれど自分がとても大切に扱われていると思えて、鏡越しにマティアスの顔を見てはニヤついてしまった。
ドライヤーのスイッチが切られたあと、麻衣の髪はすっかりサラサラになった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
マティアスはそう言って、自分の髪も乾かし始める。
麻衣は〝続き〟があるのだと思うとまた緊張してしまい、ソファに戻ってウーロン茶を一口飲んだ。
(どうやって始まるんだろう)
そう思っていた時、洗面所から戻ったマティアスが提案してきた。
「ベッドに行かないか?」
「えっ? えぇっ!?」
(直接きたな!)
あまりにも直球すぎて、麻衣は心の中で思いきり突っ込んだ。
「う、うぅ、…………うん」
麻衣はうろたえつつ、ギシッギシッと人形のような歩みでベッドに向かう。
そして少し迷ったあとに、花びらでハートが描かれてあるベッドに腰かけた。
するとマティアスもベッドの上に座り、麻衣の髪をサラリと撫でてくる。
「っ!」
緊張した麻衣に、マティアスは優しく笑いかける。
「ちゃんと乾いてるな。こうやって女性の髪を乾かすのは初めてなんだ」
そう言ってマティアスは麻衣の髪をもてあそび、「コシのある髪だな」と呟く。
「マ、マティアスさんは……」
麻衣も同じように彼の髪を触ってみる。
「あれ、意外と柔らかい」
「ヨーロッパ人はアジア人と比べると、割と髪が柔らかいほうだと思う」
「そうなんだ。…………気持ちいい」
麻衣はサラサラとマティアスの髪を掻き混ぜ、自然と微笑む。
すると、その手を掴まれて、甲にキスをされた。
「……俺としては、マイの口から別の『気持ちいい』を聞きたい」
「あ……」
マティアスは手に唇を押しつけたまま、上目遣いに見つめてくる。
青い瞳に見つめられ、麻衣は動揺して視線を逸らした。
「マイ。愛してる」
そう言ってマティアスは、麻衣をゆっくり押し倒した。
そして彼女に愛を乞う。
「マイを愛してもいいか?」
「……ど、どうぞ」
おずおずと頷くと、マティアスは微笑んでキスをしてきた。
ガウンの紐が引っ張られると、風呂上がりの火照った肌に空気を感じる。
かと思うと、下着一枚の体が晒された。
彼が最初に触れたのは胸だった。
先ほどバスルームでも触られたが、水中とはまた違った感覚がする。
マティアスは麻衣の肌質を確かめるように乳房を撫で、囁いた。
「マイの肌は気持ちいいな」
そう言ってもらえて、今まで感じた事のない〝女としての喜び〟が心を満たしていく。
「ありがとう」
本当は恥ずかしいが、相手がマティアスだから素直になれる。
そのあとも彼は優しく胸を揉む。
マティアスの指が先端をかすめるたびに乳首が凝り立ち、麻衣は緊張と気持ちよさで、はぁ……と小さく吐息をついた。
「大丈夫か?」
「うん」
マティアスはいつもまっすぐに麻衣を見る。
恥ずかしい事をしているのに、そんなふうに見つめられると、もっと恥ずかしくなる。
「強欲なんてそんな」
(セックスするぐらい……)
彼の事情は分かっていても、ついそう思ってしまう。
同時に、普通の事を普通にできずに過ごした彼に、憐憫の情を抱いた。
だからこそ、「私が幸せにしてあげられたら……」と願うのだ。
今後の事はまだ詳しく決まっていないが、マティアスと一緒になる覚悟は決めた。
優しくて気配りのできる彼なら、喧嘩もほぼせず、穏やかに結婚生活を送れるのではと思った。
その中で、マティアスが何かを望めば、セックスだろうが何だろうが、可能な限り応えたい。
「大丈夫。いつか〝普通〟は〝普通〟だって思えるようにしてあげるから」
濡れた手でマティアスの頬を撫でると、彼は愛しそうに目を細め、麻衣の掌にキスをした。
風呂から上がって体を拭いていると、マティアスが「俺がマイの髪を乾かしたい」と言い、そうしてもらう事にした。
美容室以外で誰かに髪を乾かしてもらうのは初めてで、気恥ずかしい。
けれど自分がとても大切に扱われていると思えて、鏡越しにマティアスの顔を見てはニヤついてしまった。
ドライヤーのスイッチが切られたあと、麻衣の髪はすっかりサラサラになった。
「ありがとう」
「どういたしまして」
マティアスはそう言って、自分の髪も乾かし始める。
麻衣は〝続き〟があるのだと思うとまた緊張してしまい、ソファに戻ってウーロン茶を一口飲んだ。
(どうやって始まるんだろう)
そう思っていた時、洗面所から戻ったマティアスが提案してきた。
「ベッドに行かないか?」
「えっ? えぇっ!?」
(直接きたな!)
あまりにも直球すぎて、麻衣は心の中で思いきり突っ込んだ。
「う、うぅ、…………うん」
麻衣はうろたえつつ、ギシッギシッと人形のような歩みでベッドに向かう。
そして少し迷ったあとに、花びらでハートが描かれてあるベッドに腰かけた。
するとマティアスもベッドの上に座り、麻衣の髪をサラリと撫でてくる。
「っ!」
緊張した麻衣に、マティアスは優しく笑いかける。
「ちゃんと乾いてるな。こうやって女性の髪を乾かすのは初めてなんだ」
そう言ってマティアスは麻衣の髪をもてあそび、「コシのある髪だな」と呟く。
「マ、マティアスさんは……」
麻衣も同じように彼の髪を触ってみる。
「あれ、意外と柔らかい」
「ヨーロッパ人はアジア人と比べると、割と髪が柔らかいほうだと思う」
「そうなんだ。…………気持ちいい」
麻衣はサラサラとマティアスの髪を掻き混ぜ、自然と微笑む。
すると、その手を掴まれて、甲にキスをされた。
「……俺としては、マイの口から別の『気持ちいい』を聞きたい」
「あ……」
マティアスは手に唇を押しつけたまま、上目遣いに見つめてくる。
青い瞳に見つめられ、麻衣は動揺して視線を逸らした。
「マイ。愛してる」
そう言ってマティアスは、麻衣をゆっくり押し倒した。
そして彼女に愛を乞う。
「マイを愛してもいいか?」
「……ど、どうぞ」
おずおずと頷くと、マティアスは微笑んでキスをしてきた。
ガウンの紐が引っ張られると、風呂上がりの火照った肌に空気を感じる。
かと思うと、下着一枚の体が晒された。
彼が最初に触れたのは胸だった。
先ほどバスルームでも触られたが、水中とはまた違った感覚がする。
マティアスは麻衣の肌質を確かめるように乳房を撫で、囁いた。
「マイの肌は気持ちいいな」
そう言ってもらえて、今まで感じた事のない〝女としての喜び〟が心を満たしていく。
「ありがとう」
本当は恥ずかしいが、相手がマティアスだから素直になれる。
そのあとも彼は優しく胸を揉む。
マティアスの指が先端をかすめるたびに乳首が凝り立ち、麻衣は緊張と気持ちよさで、はぁ……と小さく吐息をついた。
「大丈夫か?」
「うん」
マティアスはいつもまっすぐに麻衣を見る。
恥ずかしい事をしているのに、そんなふうに見つめられると、もっと恥ずかしくなる。
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