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第十九部・マティアスと麻衣 編

私が気持ちよくなったら、この人は喜んでくれるんだ ☆

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「んぁああ……っ! あっ、そこは……っ」

 とっさに下腹部に力を込めると、マティアスが嬉しそうに笑った。

「気持ちいいんだな? じゃあ、ここを可愛がろう」

 マティアスは指で膣壁を優しく擦りながら、親指で麻衣の肉芽を愛撫する。

「あ……っ、ぁ、あ……。ん……っ、んぁ、あぁ……」

 今までマティアスの手を見て、「大きくて綺麗な手だな」と感じていた。

 自分はバレー部出身で、体格がいいのも相まって、掌が肉厚でがっしりとした手をしている。
 香澄のように華奢な〝女性の手〟ではないと開き直っていた。

 けれどマティアスの手は、身長が高いのも相まって本当に大きい。

 彼の手と並べると、自分の手がとても小さくて〝女性の手〟に見えてしまう。

 そうすると、今まで無視してきた自分の性別を痛感させられる。

 気がつけば麻衣は、マティアスと過ごしている間、ずっと彼の手や体格を意識していた。

 その〝男の手〟が、今自分を愛撫し、指で膣内を暴いている。

(マティアスさんの手が……っ)

 あの大きく美しい手が、お世辞にも綺麗とは言いがたい場所に潜り、自分に快楽を与えてくれている。

 そう思うと、どうしてか泣きたくなった。

 膣内を愛撫されて嬌声を漏らし、切なげに開いた口からは涎が零れてしまいそうになる。

 こんな美形のドイツ人男性に愛されているなんて、いまだに信じられない。

「マ……っ、マティア、す、……っさ……っ」

 手探りで彼を求めると、額にキスをされる。

「なんだ? マイ」

 彼の名前を呼ぶと、愛しげに応えてくれる。
 その声を聞いて、胸の奥がキュウッと切なく締め付けられた。

 さらに太腿には、先ほどからずっとガチガチに強張った屹立が押しつけられていた。

(興奮してくれてる……)

 今まで〝男性が勃起する〟と聞くと、半分揶揄の籠もった感情を抱いていた。
 動画では興味半分で、リアルで聞けばドン引きしてしまう時だってある。

 それを「嬉しい」と感じる日がくるなんて、思いもしなかった。

「……す、…………す、き…………っ。…………か、かも……っ」

 震える声で告白した時、目元を覆っていた彼の手が外れた。

(まぶし……)

 バスルームは落ち着いた明るさのライトで照らされていたが、ずっと目を閉じていたので、当然眩しく感じる。

 目を瞬かせると、少しぼやけた視界の中で、マティアスがどこか呆けた顔をしているのが見えた。

 その表情がゆっくりと笑み崩れ、今まで見た事のない心からの笑顔になる。

「…………!」

 彼の笑顔を見て、胸がドキンッと高鳴った。

 そして何とも言えない感情がこみ上げ、麻衣まで泣き笑いの表情になってしまう。

「俺も好きだ。大好きだ。……愛してる」

 マティアスは幸せそうに笑い、堪らないというようにまた麻衣の唇にキスをしてきた。

「んっ、……ん、――ン」

 膣壁を擦られ、肉芽をコリコリと転がされながら、口元ではうっとりするようなキスをされ、夢見心地になる。

(幸せだ。……こんな幸せでいいのかな……)

 麻衣はそう思いながら、マティアスの舌をおずおずと舐め返し、彼の舌先にチュッとキスをする。

 お腹の奥では快楽の熾火が育ち、気を抜くと絶頂してしまいそうだ。

 けれど人の前で絶頂するなど恥ずかしく、先ほどから懸命に堪えている。

「マイ。ナカがヒクヒクしていて可愛い。気持ちいいか?」

「う……、う……ん。き……きもち、……いい」

 マティアスと目を合わせて「気持ちいい」と言うのはハードルが高く、麻衣は彼の首元に顔を埋めてボソッと返事をする。

「そうか。嬉しい。達けそうだったら、いつでも達ってくれ」

 マティアスは嬉しそうに微笑み、横を向いた麻衣の耳やこめかみ、頬にキスをしながら、なおも指を蠢かかせた。

「ん……っ、んぅ、あ、……ん……っ」

 話す事で快楽を誤魔化していたが、そろそろ我慢しきれなくなっていた。

(駄目……っ。達っちゃう……っ)

 麻衣が反射的に首を左右に振った時、彼女の耳元でマティアスが囁いた。

「気持ち良かったら、俺のために達ってくれ」

 目を開けると、マティアスのがっしりとした肩や鎖骨が見える。
 素直に美しいと思える、均整の取れた男性の肉体だ。

(綺麗な人だな……。心も、体も、全部綺麗だ……)

 そう思うと、なぜだか涙がこみ上げてくる。

(私が気持ちよくなったら、この人は喜んでくれるんだ……)

『私なんかがセックスで感じたり、あんあん声を上げても気持ち悪いだけだ』と、自分で自分を否定していた。

 けれどマティアスは、自分のすべてを求めてくれている。

(嬉しい……な……)
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