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第十九部・マティアスと麻衣 編
二人で幸せになっていきたい
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「だって、これだけ傷付けられて酷い目に遭ったのに、彼女の話をしても動揺してない。もうその人の事なんてどうでもいいぐらい、前に進んでるんだよ」
これだけの事をされながら、ここまで生き抜いた彼を褒めたい。
麻衣は彼の背中に額をつけ、ギュッと抱き締めて励ます。
「凄いよ。マティアスさんは凄い。目的を果たして自由を勝ち取った。今第二の人生を歩もうとしているあなたを、私は心から尊敬する」
「……ありがとう」
マティアスは礼を言い、腹部にまわった麻衣の手に手を重ねる。
「私はあなたを応援したい。あなたが幸せになるためにできる事があるなら、可能な限り何でもしてあげたい。この傷は醜くなんかないよ。マティアスさんが全力で戦った証だもん」
麻衣は彼を励まし、涙を零す。
――この人は幸せになるために、信じられない痛みを堪えてきたんだ。
――こんな悲壮な決意をした人に、会った事はない。
――私はこんな人に好きになってもらえて、何ができる?
自分に問いかけるものの、マティアスにあげられるものが何もなくて悲しくなった。
――あげたい。
――彼に私がもっているものをすべてあげたい。
――幸せにしてあげたい。
――一緒に幸せになりたい。
次々にこみ上げる感情が涙となり、熱い雫となって頬を流れていく。
彼の人生に触れ、心と魂が震えた。
――この人に釣り合えるよう、私も変わりたい。
――『自分なんて』って卑下するのをやめて、彼に愛される事を誇れる女性になりたい。
「……っ、――ふ、……うぅっ……」
麻衣は嗚咽し、彼の背中に縋り付く。
そして、心からの言葉を捧げた。
「……っ、ありがとう……っ」
マティアスが「なぜ」という前に、麻衣は言葉を続ける。
「今まで、諦めないで、生きていてくれてありがとう……っ。――今ここにいてくれるから、戦い続けて勝ってくれたから……っ、――私は、生まれて初めて『愛してもらえてる』って感じられてる……っ」
涙を流し、洟を啜り、それでも伝えた。
「マティアスさんにお礼を言いたいから……っ、感謝を伝えたいから……っ、私はこれから、あなたに愛される事を拒まない……っ。愛されて、愛して、――二人で幸せになっていきたい……っ」
そう言った時、マティアスが振り向いたかと思うと、強く抱き締められた。
「…………愛してる」
顔を上げると、僅かに目を潤ませているマティアスと視線がかち合う。
「……そういうマイだから、好きになった」
彼は不器用に笑い、涙を零す。
「……俺はいまだ人として半人前で、人を好きになった経験もない。マイをうまく愛せるか分からないが、何かあったら二人で話し合っていこう。気持ちを察してやれないし、ムードもない。足りないものがあったら何でも教えてほしい。マイとなら、そういう付き合い方ができると思っている」
「……っ、うん……っ」
麻衣は大きく頷き、涙を流しながら笑った。
マティアスはそんな麻衣を愛おしそうに見て、キスをしてきた。
唇をついばんでから、彼は顔を離し麻衣の表情を確認する。
そして彼は泣きそうな表情で微笑んでから、さらに深く口づけてきた。
「……っん、……ん」
何度も唇をついばまれ、頭がボーッとしてきた時、彼の舌がヌルリと侵入してきた。
「んっ……」
まだそれには慣れていない麻衣は、首をすくめ体を緊張させる。
マティアスが麻衣の背中を撫で、リラックスさせようとした時――。
ピンポーン……。
部屋のチャイムが鳴り、料理が到着したと知らせた。
「あっ……」
麻衣は一瞬にして現実に意識を引き戻され、カーッと赤くなるとマティアスから離れた。
マティアスは彼女の反応を見て、イチャつくには〝まだ〟だと理解したようだ。
「飯が来たみたいだな」
「そ、そうだね」
麻衣は返事をし、出入り口に向かった。
部屋は二重ドアになっていて、間の空間にトレーを置く棚がある。
恐らくスタッフがそこに食事を置き、廊下に出たあとにチャイムを鳴らす仕組みなのだろう。
これだけの事をされながら、ここまで生き抜いた彼を褒めたい。
麻衣は彼の背中に額をつけ、ギュッと抱き締めて励ます。
「凄いよ。マティアスさんは凄い。目的を果たして自由を勝ち取った。今第二の人生を歩もうとしているあなたを、私は心から尊敬する」
「……ありがとう」
マティアスは礼を言い、腹部にまわった麻衣の手に手を重ねる。
「私はあなたを応援したい。あなたが幸せになるためにできる事があるなら、可能な限り何でもしてあげたい。この傷は醜くなんかないよ。マティアスさんが全力で戦った証だもん」
麻衣は彼を励まし、涙を零す。
――この人は幸せになるために、信じられない痛みを堪えてきたんだ。
――こんな悲壮な決意をした人に、会った事はない。
――私はこんな人に好きになってもらえて、何ができる?
自分に問いかけるものの、マティアスにあげられるものが何もなくて悲しくなった。
――あげたい。
――彼に私がもっているものをすべてあげたい。
――幸せにしてあげたい。
――一緒に幸せになりたい。
次々にこみ上げる感情が涙となり、熱い雫となって頬を流れていく。
彼の人生に触れ、心と魂が震えた。
――この人に釣り合えるよう、私も変わりたい。
――『自分なんて』って卑下するのをやめて、彼に愛される事を誇れる女性になりたい。
「……っ、――ふ、……うぅっ……」
麻衣は嗚咽し、彼の背中に縋り付く。
そして、心からの言葉を捧げた。
「……っ、ありがとう……っ」
マティアスが「なぜ」という前に、麻衣は言葉を続ける。
「今まで、諦めないで、生きていてくれてありがとう……っ。――今ここにいてくれるから、戦い続けて勝ってくれたから……っ、――私は、生まれて初めて『愛してもらえてる』って感じられてる……っ」
涙を流し、洟を啜り、それでも伝えた。
「マティアスさんにお礼を言いたいから……っ、感謝を伝えたいから……っ、私はこれから、あなたに愛される事を拒まない……っ。愛されて、愛して、――二人で幸せになっていきたい……っ」
そう言った時、マティアスが振り向いたかと思うと、強く抱き締められた。
「…………愛してる」
顔を上げると、僅かに目を潤ませているマティアスと視線がかち合う。
「……そういうマイだから、好きになった」
彼は不器用に笑い、涙を零す。
「……俺はいまだ人として半人前で、人を好きになった経験もない。マイをうまく愛せるか分からないが、何かあったら二人で話し合っていこう。気持ちを察してやれないし、ムードもない。足りないものがあったら何でも教えてほしい。マイとなら、そういう付き合い方ができると思っている」
「……っ、うん……っ」
麻衣は大きく頷き、涙を流しながら笑った。
マティアスはそんな麻衣を愛おしそうに見て、キスをしてきた。
唇をついばんでから、彼は顔を離し麻衣の表情を確認する。
そして彼は泣きそうな表情で微笑んでから、さらに深く口づけてきた。
「……っん、……ん」
何度も唇をついばまれ、頭がボーッとしてきた時、彼の舌がヌルリと侵入してきた。
「んっ……」
まだそれには慣れていない麻衣は、首をすくめ体を緊張させる。
マティアスが麻衣の背中を撫で、リラックスさせようとした時――。
ピンポーン……。
部屋のチャイムが鳴り、料理が到着したと知らせた。
「あっ……」
麻衣は一瞬にして現実に意識を引き戻され、カーッと赤くなるとマティアスから離れた。
マティアスは彼女の反応を見て、イチャつくには〝まだ〟だと理解したようだ。
「飯が来たみたいだな」
「そ、そうだね」
麻衣は返事をし、出入り口に向かった。
部屋は二重ドアになっていて、間の空間にトレーを置く棚がある。
恐らくスタッフがそこに食事を置き、廊下に出たあとにチャイムを鳴らす仕組みなのだろう。
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