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第十九部・マティアスと麻衣 編
駄目な大人だなぁ
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「話が逸れたけど、高校時代に『モデルをやりたい』と言った女の子は大勢いた。でも、今言った理由で採用しなかった。俺は本気でやっているのに、恋愛を持ち込まれるのはまっぴらだ」
「そっか」
頷いて、ほんの少し自惚れてしまった。
(佑さんに『モデルになってほしい』って言われた私は、やっぱり〝特別〟って思っていいのかな?)
そう思うと嬉しくなり、香澄は窓の外を見るふりをしてニヤついた顔をごまかす。
「気になるだろうけど、香澄が想像している〝取っ替え引っ替え〟はなかったよ。女友達は厳選したし、『当分彼女はいらない』と判断した。真澄から言わせると『寂しい青春』みたいだけど」
目的の服を探し終えた佑は、ソファに腰掛けている。
「卒業式は?」
「面倒は嫌だから、すぐ帰った。だから『第二ボタンください』もなかった。真澄をはじめとする男友達は、俺の事情や考え方を理解してくれたから、スムーズに帰れるよう協力してくれたな。俺が女の子に興味を持っていないと分かったあとは、掌返すように仲良くしてくれたもんな」
聞けば現金な話なのに、佑はクスクス笑っている。
「佑さんの新年会に混ぜてもらったら、そういう事を教えてもらえるのかな?」
「あっ……」
言われて、佑は改めて思いだしたようだ。
「香澄が知りたいならいいけど……。ただ、全部昔の話だからな?」
「ふふ。分かってる」
微笑んだあと、随分話し込んでいたのに気づき、香澄は腕時計を見た。
(麻衣たちが待っているし、いつまでもゆっくりできないな)
そう思い、ソファに掛かっている服を指さした。
「それ、麻衣の〝応援〟?」
「ああ。観光で来たなら、デート用の服を持ってきてないだろうと思って。試作品でいいなら、役立ててほしいって思ったんだ」
「ありがとう。きっと喜ぶ」
微笑んだ香澄に、佑が手を差し伸べてきた。
「じゃあ、褒めて」
「わっ」
グイッと腕を引っ張られたかと思うと、香澄は佑に抱き締められていた。
「ん……っ。し、仕方ないなぁ」
香澄はもう一度「仕方ない」と言い、佑の頬を両手で包む。
「こっちは?」
「ん?」
佑は意味深に微笑んで、少し唇をすぼめた。
「~~~~もー……仕方ないなぁ……」
もう一度「仕方ない」を言い、香澄は佑の頬を両手で包む。
「目、閉じて」
そう言うと、佑は素直に目を閉じた。
「ん」
彼の睫毛は相変わらず長い。
(美人だなぁ……。お肌すべすべ。彫りが深い。……美形。ずっと見てられる)
香澄は目を伏せた佑をしげしげと見て、彼の美形具合に感心する。
「まだ?」
「ふわっ……!」
油断していたところ、お尻をさわっと撫でられて変な声がでた。
「い、今する」
そう言って香澄は顔を傾け、ちゅっと佑の唇にキスをした。
「……溜めておいて、それだけ?」
香澄の顔が離れたタイミングで佑は目を開け、不満そうに小首を傾げる。
「……んもぉ……。欲しがるなぁ」
香澄はもう一度顔を近付け、ちゅっと啄んでから舌で佑の唇を舐めた。
軽く下唇を噛んで、もう一度唇を舐める。
すると佑はぐっと彼女を抱き寄せ、さらに深く口づけてきた。
「んっ、……ん、ぁ、……ふ、……ん」
力強い舌に何度も舌や唇を舐められ、すぐにフワフワとした心地になる。
理性がとろけそうになったが、麻衣のための服を思いだした。
「むぐ、……ん。……だ、だめ」
「……え?」
佑は不服そうに目を開く。
「カフェで麻衣たちが待ってるから……。だめ」
「……どうしても?」
「どうしても」
「急な仕事が入った事には?」
「なりません」
キッパリ否定すると、佑は長くて大きな溜め息をついた。
「もー、佑さんは駄目な大人だなぁ」
香澄はよしよしと彼の背中を撫で、大きな子供を慰める。
「そっか」
頷いて、ほんの少し自惚れてしまった。
(佑さんに『モデルになってほしい』って言われた私は、やっぱり〝特別〟って思っていいのかな?)
そう思うと嬉しくなり、香澄は窓の外を見るふりをしてニヤついた顔をごまかす。
「気になるだろうけど、香澄が想像している〝取っ替え引っ替え〟はなかったよ。女友達は厳選したし、『当分彼女はいらない』と判断した。真澄から言わせると『寂しい青春』みたいだけど」
目的の服を探し終えた佑は、ソファに腰掛けている。
「卒業式は?」
「面倒は嫌だから、すぐ帰った。だから『第二ボタンください』もなかった。真澄をはじめとする男友達は、俺の事情や考え方を理解してくれたから、スムーズに帰れるよう協力してくれたな。俺が女の子に興味を持っていないと分かったあとは、掌返すように仲良くしてくれたもんな」
聞けば現金な話なのに、佑はクスクス笑っている。
「佑さんの新年会に混ぜてもらったら、そういう事を教えてもらえるのかな?」
「あっ……」
言われて、佑は改めて思いだしたようだ。
「香澄が知りたいならいいけど……。ただ、全部昔の話だからな?」
「ふふ。分かってる」
微笑んだあと、随分話し込んでいたのに気づき、香澄は腕時計を見た。
(麻衣たちが待っているし、いつまでもゆっくりできないな)
そう思い、ソファに掛かっている服を指さした。
「それ、麻衣の〝応援〟?」
「ああ。観光で来たなら、デート用の服を持ってきてないだろうと思って。試作品でいいなら、役立ててほしいって思ったんだ」
「ありがとう。きっと喜ぶ」
微笑んだ香澄に、佑が手を差し伸べてきた。
「じゃあ、褒めて」
「わっ」
グイッと腕を引っ張られたかと思うと、香澄は佑に抱き締められていた。
「ん……っ。し、仕方ないなぁ」
香澄はもう一度「仕方ない」と言い、佑の頬を両手で包む。
「こっちは?」
「ん?」
佑は意味深に微笑んで、少し唇をすぼめた。
「~~~~もー……仕方ないなぁ……」
もう一度「仕方ない」を言い、香澄は佑の頬を両手で包む。
「目、閉じて」
そう言うと、佑は素直に目を閉じた。
「ん」
彼の睫毛は相変わらず長い。
(美人だなぁ……。お肌すべすべ。彫りが深い。……美形。ずっと見てられる)
香澄は目を伏せた佑をしげしげと見て、彼の美形具合に感心する。
「まだ?」
「ふわっ……!」
油断していたところ、お尻をさわっと撫でられて変な声がでた。
「い、今する」
そう言って香澄は顔を傾け、ちゅっと佑の唇にキスをした。
「……溜めておいて、それだけ?」
香澄の顔が離れたタイミングで佑は目を開け、不満そうに小首を傾げる。
「……んもぉ……。欲しがるなぁ」
香澄はもう一度顔を近付け、ちゅっと啄んでから舌で佑の唇を舐めた。
軽く下唇を噛んで、もう一度唇を舐める。
すると佑はぐっと彼女を抱き寄せ、さらに深く口づけてきた。
「んっ、……ん、ぁ、……ふ、……ん」
力強い舌に何度も舌や唇を舐められ、すぐにフワフワとした心地になる。
理性がとろけそうになったが、麻衣のための服を思いだした。
「むぐ、……ん。……だ、だめ」
「……え?」
佑は不服そうに目を開く。
「カフェで麻衣たちが待ってるから……。だめ」
「……どうしても?」
「どうしても」
「急な仕事が入った事には?」
「なりません」
キッパリ否定すると、佑は長くて大きな溜め息をついた。
「もー、佑さんは駄目な大人だなぁ」
香澄はよしよしと彼の背中を撫で、大きな子供を慰める。
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