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第十九部・マティアスと麻衣 編
ムキムキ美形ドイツ人の中、紅一点
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「ちょっ……マ、マティアスさんっ」
焦る麻衣の頭をクラウスがポンポンと撫でる。
「いーじゃん。手を繋いでてもらいなよ。札幌より人が多い上、こいつんトコのイベントってすっげぇ人だから、多分冗談じゃなくてはぐれるかもよ? ……と」
クラウスは麻衣の頭を撫でていたが、マティアスがその手を握って自分の頭を撫でさせる。
「男の頭を撫でる趣味はないよ」
香澄はげんなりとしたクラウスを見て、クスクス笑う。
そして両手で麻衣の手をギュッと握った。
「じゃあ、行ってくるね。家を出る時にフェリシアに留守番モード頼んでね。あと、施錠とかは、離れの円山さんにお願いしたら全部やってくれるから、連絡だけお願いね」
「うん、分かった」
「じゃあ、行ってきます!」
(誰かに『行ってきます』を言えるのっていいな)
香澄はそう思いながら、佑と一緒に車に乗った。
**
二人が家を出たあと、双子が相談し始める。
「何時くらいに家出るー?」
「イベントが十一時からとして、……クリスマスの時にあの混みようだったろ? 前回みたいに上階のバルコニーに陣取るなら、オープンしてすぐ入れるようにしといたほうがいいよな」
「そんなに!?」
双子の会話を聞き、麻衣は仰天する。
彼女の悲鳴を聞き、アロイスが首をすくめる。
「言っちゃえば、タスクはタレント並みの知名度があるし、他にも有名人の司会や、イベントに出演するアーティストとか、人も技も一流のもんが見られるからね。それに東京はシンプルに人口が多い。加えて初売りイベントでしょ? 開店前に整理券配って並んでる人がいるのが当たり前で、今から並んでいる人もいるんじゃないかな」
アロイスに説明され、麻衣は「ううう……」とうなる。
正直、あまり人混みが得意ではない。
今まで初売りと聞いても、体型ゆえに、着られない服が多いので無縁だった。
食べ物の福袋と聞いても、わざわざ混雑したところに買いに行くよりは、いつも飲み食いするものを都度買えばいいと思っていた。
正月休みは家でのんびりして、香澄と初詣に行ってお互いの家でまったりしていた。
「はぁ……。腹くくりましょうか。親友が働いてるところのイベントを見るなんて、そうそうできなから」
「よしきた! 整理券もらうのも並ばないといけないから、早めに出るよ」
「分かりました」
現在は八時半前だが、九時すぎには家に出てTMタワーの前に並ぶ事にした。
その後、麻衣はササッとメイクをして着替え、最低限の荷物をショルダーバッグに入れて御劔邸を出た。
当然交通機関を使うものと思っていたが、双子の運転手が御劔邸の前に車をつけていた。
「は、ハロー」
双子の運転手と護衛は全員外国人なので、麻衣は緊張しながら挨拶をする。
「!?」
その時、改めて理解した。
双子とマティアスも、運転手も護衛も、全員外国人男性だ。
クラウザー社の高級車に乗った、美形外国人に囲まれた紅一点が自分……。
(あああああああああああ……!!)
あまりに力不足で恥ずかしく、その場から遁走したくなったがもう遅い。
「どうした? マイ」
車に乗ったあと、マティアスが尋ねてくる。
ゆったり乗りたいからと、双子たちは別の車で、麻衣はマティアスと同じ車だ。
「い……いえ……。ナンデモ……」
「そうか?」
マティアスは少し微笑んでから窓の外を見て、感慨深そうに言う。
「日本の街は、クリスマスが終わるとすぐニューイヤーに切り替わるんだな」
「え? ドイツは違うんですか?」
「ドイツだと、クリスマスツリーがニューイヤーを越しても飾られてるな。あと、クリスマスの菓子が安売りされている」
「ふぅん、面白い……」
確かにクリスマスの菓子は不要になるだろうが、あからさまに安売りしているところは、あまり見ないかもしれない。
「カウントダウンでとにかく花火が上がりまくる。ネットで見た日本の花火大会のように情緒がある花火ではなく、派手に打ち上げまくる。煙で目の前が見えなくなるし、火薬臭い。……だから日本の和やかな年越しを体験して驚いた。ドイツには初売りというものもないな。一月二日から通常営業が始まる」
「なるほど……」
文化の違いに納得した麻衣は、思った事を尋ねた。
焦る麻衣の頭をクラウスがポンポンと撫でる。
「いーじゃん。手を繋いでてもらいなよ。札幌より人が多い上、こいつんトコのイベントってすっげぇ人だから、多分冗談じゃなくてはぐれるかもよ? ……と」
クラウスは麻衣の頭を撫でていたが、マティアスがその手を握って自分の頭を撫でさせる。
「男の頭を撫でる趣味はないよ」
香澄はげんなりとしたクラウスを見て、クスクス笑う。
そして両手で麻衣の手をギュッと握った。
「じゃあ、行ってくるね。家を出る時にフェリシアに留守番モード頼んでね。あと、施錠とかは、離れの円山さんにお願いしたら全部やってくれるから、連絡だけお願いね」
「うん、分かった」
「じゃあ、行ってきます!」
(誰かに『行ってきます』を言えるのっていいな)
香澄はそう思いながら、佑と一緒に車に乗った。
**
二人が家を出たあと、双子が相談し始める。
「何時くらいに家出るー?」
「イベントが十一時からとして、……クリスマスの時にあの混みようだったろ? 前回みたいに上階のバルコニーに陣取るなら、オープンしてすぐ入れるようにしといたほうがいいよな」
「そんなに!?」
双子の会話を聞き、麻衣は仰天する。
彼女の悲鳴を聞き、アロイスが首をすくめる。
「言っちゃえば、タスクはタレント並みの知名度があるし、他にも有名人の司会や、イベントに出演するアーティストとか、人も技も一流のもんが見られるからね。それに東京はシンプルに人口が多い。加えて初売りイベントでしょ? 開店前に整理券配って並んでる人がいるのが当たり前で、今から並んでいる人もいるんじゃないかな」
アロイスに説明され、麻衣は「ううう……」とうなる。
正直、あまり人混みが得意ではない。
今まで初売りと聞いても、体型ゆえに、着られない服が多いので無縁だった。
食べ物の福袋と聞いても、わざわざ混雑したところに買いに行くよりは、いつも飲み食いするものを都度買えばいいと思っていた。
正月休みは家でのんびりして、香澄と初詣に行ってお互いの家でまったりしていた。
「はぁ……。腹くくりましょうか。親友が働いてるところのイベントを見るなんて、そうそうできなから」
「よしきた! 整理券もらうのも並ばないといけないから、早めに出るよ」
「分かりました」
現在は八時半前だが、九時すぎには家に出てTMタワーの前に並ぶ事にした。
その後、麻衣はササッとメイクをして着替え、最低限の荷物をショルダーバッグに入れて御劔邸を出た。
当然交通機関を使うものと思っていたが、双子の運転手が御劔邸の前に車をつけていた。
「は、ハロー」
双子の運転手と護衛は全員外国人なので、麻衣は緊張しながら挨拶をする。
「!?」
その時、改めて理解した。
双子とマティアスも、運転手も護衛も、全員外国人男性だ。
クラウザー社の高級車に乗った、美形外国人に囲まれた紅一点が自分……。
(あああああああああああ……!!)
あまりに力不足で恥ずかしく、その場から遁走したくなったがもう遅い。
「どうした? マイ」
車に乗ったあと、マティアスが尋ねてくる。
ゆったり乗りたいからと、双子たちは別の車で、麻衣はマティアスと同じ車だ。
「い……いえ……。ナンデモ……」
「そうか?」
マティアスは少し微笑んでから窓の外を見て、感慨深そうに言う。
「日本の街は、クリスマスが終わるとすぐニューイヤーに切り替わるんだな」
「え? ドイツは違うんですか?」
「ドイツだと、クリスマスツリーがニューイヤーを越しても飾られてるな。あと、クリスマスの菓子が安売りされている」
「ふぅん、面白い……」
確かにクリスマスの菓子は不要になるだろうが、あからさまに安売りしているところは、あまり見ないかもしれない。
「カウントダウンでとにかく花火が上がりまくる。ネットで見た日本の花火大会のように情緒がある花火ではなく、派手に打ち上げまくる。煙で目の前が見えなくなるし、火薬臭い。……だから日本の和やかな年越しを体験して驚いた。ドイツには初売りというものもないな。一月二日から通常営業が始まる」
「なるほど……」
文化の違いに納得した麻衣は、思った事を尋ねた。
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