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第十八部・麻衣と年越し 編
なんで、こんなムカつくの ☆
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元旦からやっている店があるのか、さすが東京だなと思っていたのは束の間、マティアスと二人きりになったと理解し、どうしたらいいか分からなくなった。
夕食は「冷蔵庫にある物を自由に食べていい」と言われたが、家主がいないのに勝手に振る舞うのは申し訳ない。
それでもマティアスが「何か作ってほしい」としつこく言うので、何とかしなければと思った。
まだ元旦なので、おせち料理は二日、三日の朝にも食べるはずだ。
なので多少減っても構わなさそうな料理に目をつけて、筑前煮をリメイクしてカレーを作った。
それをパックご飯にかけ、即席カレーのできあがりだ。
マティアスは目を輝かせてカレーを写真に撮った。
そして大きなダイニングテーブルで二人の食事になる。
以外と会話には困らず、マティアスは話題を振ってくれた。
片付けも終わり、やる事がなくなってソワソワする。
香澄たちが帰ってくるのは二十一時すぎだと言うし、片付けが終わった時点でまだ十七時半だった。
困り切っていたところ、マティアスが「部屋で話をしよう」と言い、……ついていったのが間違いだった。
「ん……っ、んー!」
(苦しい!)
ベッドに押し倒されキスをされていた麻衣は、どんっとマティアスの背中を叩く。
覆い被さっていたマティアスは唇を舐め、今まで見せなかった妖艶な目で麻衣を見下ろす。
「嫌か?」
「嫌かって……」
(ファーストキスなのに!)
淡々と言う彼が信じられず、麻衣は目をまん丸にする。
「『キスしていいか?』と尋ねただろう」
「い、いいって言ったけど……。さ、最初からベロチューするの?」
ベッドに座っているマティアスに「こっちに来てほしい」と言われた時から、ある種の覚悟はしていた。
確かに「キスをしていいか?」と尋ねられ、承諾はした。
けれど唇が重なって「あっ、これがキス……」と思った瞬間、マティアスはそうするのが当たり前というように、舌を使って巧みなキスをしてきたのだ。
誰とも付き合った事のない麻衣は、〝慣れて〟いそうなキスに身勝手なショックを受けてしまった。
もう二十八歳にもなるのだから、初めてとはいえ冷静にキスできると思っていた。
緊張するだろうけど、いつもの冷静さを保ったままキスをされ、終わったあと照れ隠しに少し文句を言う……ぐらいのシュミレートはしていた。
――が、蓋を開けてみればこのざまだ。
「……好きな相手には舌を入れるだろう? ……触れるだけのキスが良かったのか?」
マティアスは驚いた顔をしていて、それがまたムカつく。
「~~~~っ……、ちょっと……、待って」
麻衣は怒鳴ってやりたい気持ちを抑え、ゴロンと寝返りを打って壁のほうを向き、大きな溜め息をついた。
(……彼は三十路なのに女性経験がない訳ないでしょ。キスだって沢山したに決まってる。セックスだって大勢と経験してて、うまいに決まってる。……初めての相手が童貞がいいなんて思わない。上手なほうがいいでしょ。……なのに、なんでこんなムカつくの……)
気持ちを落ち着かせるためにゆっくり息を吸い、細く長く吐いていく。
(そうじゃない。御劔さんの家でこんな事をするのは駄目だ。せめて家の外でやらないと)
考えを纏めようとしている間、背中側にマティアスがゴロンと横たわった
「マイ。一人で考える前に口に出して言ってくれ。突然背中を向けられても分からない。俺はマイの気持ちを知りたい。今何を考えているか共有して、二人で解決したい」
マティアスの腕が腹部にまわり、優しく抱き締めてくる。
引き締まっていないお腹を触られるのは、裸を見られるより恥ずかしい。
壁の方を向いているのを幸いに、麻衣は顔を歪めて赤面していた。
「マイ。キスをするのが嫌だったか?」
「……ううん」
――あぁ、〝面倒な女〟になっちゃったな。
麻衣は心の中で溜め息をつく。
今まで、恋愛漫画やドラマにいる、心と体が裏腹な「イヤイヤ女」をどこかバカにしていた。
『そうしていても、どうせ好きなんでしょ。素直になればストーリーがすんなり進むのに。恋愛モノって面倒臭い』
バカにしながらどこか楽しんでいる自分がいて、「はいはい」と上から目線で娯楽を消化していた。
本当は〝愛されているくせに我が儘を言う、可愛い女子への妬み〟があるのも自覚していた。
夕食は「冷蔵庫にある物を自由に食べていい」と言われたが、家主がいないのに勝手に振る舞うのは申し訳ない。
それでもマティアスが「何か作ってほしい」としつこく言うので、何とかしなければと思った。
まだ元旦なので、おせち料理は二日、三日の朝にも食べるはずだ。
なので多少減っても構わなさそうな料理に目をつけて、筑前煮をリメイクしてカレーを作った。
それをパックご飯にかけ、即席カレーのできあがりだ。
マティアスは目を輝かせてカレーを写真に撮った。
そして大きなダイニングテーブルで二人の食事になる。
以外と会話には困らず、マティアスは話題を振ってくれた。
片付けも終わり、やる事がなくなってソワソワする。
香澄たちが帰ってくるのは二十一時すぎだと言うし、片付けが終わった時点でまだ十七時半だった。
困り切っていたところ、マティアスが「部屋で話をしよう」と言い、……ついていったのが間違いだった。
「ん……っ、んー!」
(苦しい!)
ベッドに押し倒されキスをされていた麻衣は、どんっとマティアスの背中を叩く。
覆い被さっていたマティアスは唇を舐め、今まで見せなかった妖艶な目で麻衣を見下ろす。
「嫌か?」
「嫌かって……」
(ファーストキスなのに!)
淡々と言う彼が信じられず、麻衣は目をまん丸にする。
「『キスしていいか?』と尋ねただろう」
「い、いいって言ったけど……。さ、最初からベロチューするの?」
ベッドに座っているマティアスに「こっちに来てほしい」と言われた時から、ある種の覚悟はしていた。
確かに「キスをしていいか?」と尋ねられ、承諾はした。
けれど唇が重なって「あっ、これがキス……」と思った瞬間、マティアスはそうするのが当たり前というように、舌を使って巧みなキスをしてきたのだ。
誰とも付き合った事のない麻衣は、〝慣れて〟いそうなキスに身勝手なショックを受けてしまった。
もう二十八歳にもなるのだから、初めてとはいえ冷静にキスできると思っていた。
緊張するだろうけど、いつもの冷静さを保ったままキスをされ、終わったあと照れ隠しに少し文句を言う……ぐらいのシュミレートはしていた。
――が、蓋を開けてみればこのざまだ。
「……好きな相手には舌を入れるだろう? ……触れるだけのキスが良かったのか?」
マティアスは驚いた顔をしていて、それがまたムカつく。
「~~~~っ……、ちょっと……、待って」
麻衣は怒鳴ってやりたい気持ちを抑え、ゴロンと寝返りを打って壁のほうを向き、大きな溜め息をついた。
(……彼は三十路なのに女性経験がない訳ないでしょ。キスだって沢山したに決まってる。セックスだって大勢と経験してて、うまいに決まってる。……初めての相手が童貞がいいなんて思わない。上手なほうがいいでしょ。……なのに、なんでこんなムカつくの……)
気持ちを落ち着かせるためにゆっくり息を吸い、細く長く吐いていく。
(そうじゃない。御劔さんの家でこんな事をするのは駄目だ。せめて家の外でやらないと)
考えを纏めようとしている間、背中側にマティアスがゴロンと横たわった
「マイ。一人で考える前に口に出して言ってくれ。突然背中を向けられても分からない。俺はマイの気持ちを知りたい。今何を考えているか共有して、二人で解決したい」
マティアスの腕が腹部にまわり、優しく抱き締めてくる。
引き締まっていないお腹を触られるのは、裸を見られるより恥ずかしい。
壁の方を向いているのを幸いに、麻衣は顔を歪めて赤面していた。
「マイ。キスをするのが嫌だったか?」
「……ううん」
――あぁ、〝面倒な女〟になっちゃったな。
麻衣は心の中で溜め息をつく。
今まで、恋愛漫画やドラマにいる、心と体が裏腹な「イヤイヤ女」をどこかバカにしていた。
『そうしていても、どうせ好きなんでしょ。素直になればストーリーがすんなり進むのに。恋愛モノって面倒臭い』
バカにしながらどこか楽しんでいる自分がいて、「はいはい」と上から目線で娯楽を消化していた。
本当は〝愛されているくせに我が儘を言う、可愛い女子への妬み〟があるのも自覚していた。
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