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第十八部・麻衣と年越し 編
祖母と孫の攻防
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「俺はこの数日、マイと一緒に過ごして『いける』と確信している。これからも価値観の違いは見つかるだろうが、話し合えばやっていけると思っている」
頼もしい言葉を聞き、香澄は麻衣を肘でツンツンする。
「良かったね」
囁くと、親友は真っ赤になって俯いてしまった。
(可愛い~!)
それを見て香澄は悶えた。
「それで皆。話は変わるが、香澄から〝お返し〟があるそうだから聞いてくれ」
「!!」
だがいきなり佑がピアノの話をし、香澄はギョッとして彼を見た。
香澄の視線を無視して、佑はとてもいい笑顔で言葉を続ける。
「俺たちからも香澄と麻衣さんにお年玉をあげた訳だが、麻衣さんはお客さんだからいいとして、香澄は日頃の感謝もかねて〝お礼〟をしたいそうだ」
「えー? なになに?」
「受け取る! カスミからのお礼なら気になる!」
双子が食いつき、アドラーと節子は「そんなのいいのに……」という表情をしつつもニコニコしている。
「皆は知らないかもしれないが、香澄はピアノが弾けるんだ。『小さな演奏会を開いて、お礼にしよう』とさっき俺が提案した」
「まぁ、素敵ねぇ。いま聞かせてくれるの?」
節子がパァッと表情を輝かせ、少女のようにはしゃぐ。
(ううっ……)
節子の純粋な笑顔が胸に痛い。
が、佑は首を横に振った。
「だがさっき提案したばかりだから、まだ準備ができていない。ピアノの練習も毎日している訳ではないしブランクがある。だから一か月を目安にして、発表会を開けたらと思っている」
「「了解!」」
元気に返事をした双子は、すぐにスマホを開く。
残りの者も同様に、スマホを開いてスケジュールアプリを確認していた。
(ううううあああああ……!!)
香澄が両手で頭を抱えて悶絶している間、今度は麻衣が香澄に囁き、ツンツンと肘でつついてきた。
「頑張ってね」
「ゥゥゥ」
「うならない」
今度は膝をぺしんと叩かれ、香澄は口を閉じる。
決定してしまったものは仕方がないので、ひとまず可能な限り言い訳をする事にした。
「皆さん、プロのピアニストで耳が肥えていると思います。私が現役でピアノを弾いていたのは中学三年生までなので、本当に中級者です。お恥ずかしいですが、それで良ければ……ですが」
「私は音楽を聴くのは好きだけど、演奏や歌はからっきしだから、弾けるだけ尊敬するわ」
意外にも、まず反応したのはアンネだった。
「そうね。アンネは音楽の授業がとても苦手だったものね」
節子が生暖かい眼差しになり、アンネが「やめてよ、ムッティ」と溜め息をつく。
「澪も俺も音痴だもんな!」
翔が元気に言い、妹に「やめてよ!」と怒られている。
「律と佑は音痴が遺伝しなくて良かったわね」
節子が言い、香澄は「ん?」と彼を見る。
(そういえば、佑さんとカラオケに行った事ないや)
佑がクラシック好きなのは基本情報として、芸能人との付き合いでポップスの知識はあるのに鼻歌すらしないのに今気づいた。
「佑さんって歌うんですか?」
御劔家の家族に尋ねると、節子が答えた。
「あら、この子とっても歌がうまいのよ。聴いた事がなかった?」
「ありません」
チラッと佑を見ると、嫌そうな顔をしている。
「オーマ、今は俺の話題じゃないんですから」
だが節子は退かない。
「婚約者なのに香澄さんに歌を聞かせてないの?」
「歌手じゃないんですから、そうそう歌いません」
「三年ぐらい前、一緒にカラオケに行ったら沢山歌ってくれたじゃない」
「あの時はオーマの思いつきでカラオケに行ったのに、オーマは持ち歌がないから、俺が時間稼ぎをしたんじゃないですか」
どうやら佑も、この祖母には苦労しているらしい。
麻衣は隣で声を殺して笑い、囁いてくる。
「御劔さん、すっかり孫だね」
どうやら麻衣は、完全無欠ではない佑の一面が面白いらしい。
確かに有名人のプライベートは滅多に見られないので、レアだと思う気持ちは分かる。
「じゃあ今度皆でカラオケ行こっか」
アロイスがカラリと笑いながら提案した。
頼もしい言葉を聞き、香澄は麻衣を肘でツンツンする。
「良かったね」
囁くと、親友は真っ赤になって俯いてしまった。
(可愛い~!)
それを見て香澄は悶えた。
「それで皆。話は変わるが、香澄から〝お返し〟があるそうだから聞いてくれ」
「!!」
だがいきなり佑がピアノの話をし、香澄はギョッとして彼を見た。
香澄の視線を無視して、佑はとてもいい笑顔で言葉を続ける。
「俺たちからも香澄と麻衣さんにお年玉をあげた訳だが、麻衣さんはお客さんだからいいとして、香澄は日頃の感謝もかねて〝お礼〟をしたいそうだ」
「えー? なになに?」
「受け取る! カスミからのお礼なら気になる!」
双子が食いつき、アドラーと節子は「そんなのいいのに……」という表情をしつつもニコニコしている。
「皆は知らないかもしれないが、香澄はピアノが弾けるんだ。『小さな演奏会を開いて、お礼にしよう』とさっき俺が提案した」
「まぁ、素敵ねぇ。いま聞かせてくれるの?」
節子がパァッと表情を輝かせ、少女のようにはしゃぐ。
(ううっ……)
節子の純粋な笑顔が胸に痛い。
が、佑は首を横に振った。
「だがさっき提案したばかりだから、まだ準備ができていない。ピアノの練習も毎日している訳ではないしブランクがある。だから一か月を目安にして、発表会を開けたらと思っている」
「「了解!」」
元気に返事をした双子は、すぐにスマホを開く。
残りの者も同様に、スマホを開いてスケジュールアプリを確認していた。
(ううううあああああ……!!)
香澄が両手で頭を抱えて悶絶している間、今度は麻衣が香澄に囁き、ツンツンと肘でつついてきた。
「頑張ってね」
「ゥゥゥ」
「うならない」
今度は膝をぺしんと叩かれ、香澄は口を閉じる。
決定してしまったものは仕方がないので、ひとまず可能な限り言い訳をする事にした。
「皆さん、プロのピアニストで耳が肥えていると思います。私が現役でピアノを弾いていたのは中学三年生までなので、本当に中級者です。お恥ずかしいですが、それで良ければ……ですが」
「私は音楽を聴くのは好きだけど、演奏や歌はからっきしだから、弾けるだけ尊敬するわ」
意外にも、まず反応したのはアンネだった。
「そうね。アンネは音楽の授業がとても苦手だったものね」
節子が生暖かい眼差しになり、アンネが「やめてよ、ムッティ」と溜め息をつく。
「澪も俺も音痴だもんな!」
翔が元気に言い、妹に「やめてよ!」と怒られている。
「律と佑は音痴が遺伝しなくて良かったわね」
節子が言い、香澄は「ん?」と彼を見る。
(そういえば、佑さんとカラオケに行った事ないや)
佑がクラシック好きなのは基本情報として、芸能人との付き合いでポップスの知識はあるのに鼻歌すらしないのに今気づいた。
「佑さんって歌うんですか?」
御劔家の家族に尋ねると、節子が答えた。
「あら、この子とっても歌がうまいのよ。聴いた事がなかった?」
「ありません」
チラッと佑を見ると、嫌そうな顔をしている。
「オーマ、今は俺の話題じゃないんですから」
だが節子は退かない。
「婚約者なのに香澄さんに歌を聞かせてないの?」
「歌手じゃないんですから、そうそう歌いません」
「三年ぐらい前、一緒にカラオケに行ったら沢山歌ってくれたじゃない」
「あの時はオーマの思いつきでカラオケに行ったのに、オーマは持ち歌がないから、俺が時間稼ぎをしたんじゃないですか」
どうやら佑も、この祖母には苦労しているらしい。
麻衣は隣で声を殺して笑い、囁いてくる。
「御劔さん、すっかり孫だね」
どうやら麻衣は、完全無欠ではない佑の一面が面白いらしい。
確かに有名人のプライベートは滅多に見られないので、レアだと思う気持ちは分かる。
「じゃあ今度皆でカラオケ行こっか」
アロイスがカラリと笑いながら提案した。
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