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第十八部・麻衣と年越し 編
アンネから麻衣へのアドバイス
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「ドイツ人と付き合うつもりなら、幾つかアドバイスをしておくわ。日本人女性は『収入のある男が奢るほうがスマート』と思っているかもしれないけれど、一般的なドイツ人男性は男女平等と思っているわ。割り勘は当たり前よ」
そう言われ、麻衣は頷く。
「それは問題ないです。私、今まで男性にご馳走してもらって当たり前とか、考えた事ないので」
アンネも満足そうに頷く。
「あと、大体の子は十八歳ぐらいになったら自立するわ。だから家事能力も普通にある。そういう意味で『胃袋を掴む』とか、家事ができれば専業主婦として楽ができるという考えは通用しないと思うわ」
「はい。それも考えていません」
麻衣は今まで男性に甘えた覚えなどないので、スッキリとした表情で頷く。
「人によりだけど、比較的時間はきっちり守る国民性だと思うわ。その辺りは感覚が合うかもしれないわね」
(確かにアンネさんはルーズじゃないもんなぁ)
香澄はうんうんと頷く。
彼女は自由な性格ではあるが、約束は破らない。
結婚して日本で生活していたのもあるし、きっと衛や子供たちに合わせたところもあるのだろう。
ああ見えて割と「郷に入っては郷に従え」という考え方は持っている。
「あと、私を見て分かるでしょうけど、物事をハッキリ言う国民性だわ。言葉をオブラートに包まないの。意地悪で言っているのではなくて、考えた事をそのまま言うわね。だから『ノー』と言われたからといって、『嫌われているんじゃないか』と深読みする必要はないわ。香澄さんは『はい』『いいえ』を言うのが苦手みたいだけれど、意志をハッキリ示してくれれば、私たちも付き合いやすいわね」
「す、すみません……」
いきなり名前を出され、香澄はとっさに謝る。
だがすぐに「悪く言っているのではない」と理解し、「努力します」とアンネの目を見て言った。
「あと、麻衣さんに知っておいてほしいのだけれど。気にしていたらごめんなさい、と先に謝っておくわね」
佑の話では、アメリカ人などはまったく知らない者同士でも世間話をするそうだ。
と、それまで黙っていた佑がつけ加えた。
「アロクラはコミュニケーションの化け物に見えるが、仕事ではかなりクールにやってる。ただ、一般的なドイツ人より打ち解ける時間は短いかな」
不本意にも双子を褒めたのが面白かったのか、彼らはニヤニヤしている。
「あと、これは麻衣さんに知っておいてほしい。気にしているのなら失礼、と先に言っておくわね」
「は、はい」
改まって言われ、麻衣は少し背筋を伸ばす。
「私たちは人を外見……、体型や服装で判断しないわ。日本だとプラスサイズの女性がミニスカートを穿いていると、バカにされやすいでしょう? よく分からないけど、ロングスカートが流行しがちだし」
「……はい」
体型の事を言われていると理解し、麻衣は少し表情を強張らせて頷く。
「少なくとも私の周りには、他人の体型をバカにする人はいなかったわね。もしいたとしても、周りから冷たい目で見られるわ」
「はい」
「あと、北アジア人はブランド物に対する執着心が強いけど、機能性を重視するドイツ人とは少し価値観が合わないかもしれないわね」
「それも大丈夫です。特に興味がないので」
「それから、マティアスは日本の感覚に寄せているみたいだけど、基本的にドイツ人は『付き合おう』とか『結婚しよう』とか、告白してカップルになろうとしないわ」
言われて麻衣は、マティアスが相当努力している事に気づいたようだ。
麻衣が申し訳なさそうにマティアスを見ると、彼は微笑んで彼女を見つめ返す。
(マティアスさん、本気なんだなぁ)
香澄はそんな二人の様子を見て、ますます応援したくなる。
その時、マティアスが口を開いた。
「確かに日本的な考えに寄せているところはあるが、無理はしていない。マイは気にしなくていい」
そう言われ、麻衣は少し安心したように息をつく。
「まぁ、タンテの言うドイツ人の特徴は、ステレオタイプだね。それぞれ個性があるし、一概に〝ドイツ人は〟って大きい主語では言い切れないものがある」
クラウスが言い、マティアスを意味ありげに見る。
そう言われ、麻衣は頷く。
「それは問題ないです。私、今まで男性にご馳走してもらって当たり前とか、考えた事ないので」
アンネも満足そうに頷く。
「あと、大体の子は十八歳ぐらいになったら自立するわ。だから家事能力も普通にある。そういう意味で『胃袋を掴む』とか、家事ができれば専業主婦として楽ができるという考えは通用しないと思うわ」
「はい。それも考えていません」
麻衣は今まで男性に甘えた覚えなどないので、スッキリとした表情で頷く。
「人によりだけど、比較的時間はきっちり守る国民性だと思うわ。その辺りは感覚が合うかもしれないわね」
(確かにアンネさんはルーズじゃないもんなぁ)
香澄はうんうんと頷く。
彼女は自由な性格ではあるが、約束は破らない。
結婚して日本で生活していたのもあるし、きっと衛や子供たちに合わせたところもあるのだろう。
ああ見えて割と「郷に入っては郷に従え」という考え方は持っている。
「あと、私を見て分かるでしょうけど、物事をハッキリ言う国民性だわ。言葉をオブラートに包まないの。意地悪で言っているのではなくて、考えた事をそのまま言うわね。だから『ノー』と言われたからといって、『嫌われているんじゃないか』と深読みする必要はないわ。香澄さんは『はい』『いいえ』を言うのが苦手みたいだけれど、意志をハッキリ示してくれれば、私たちも付き合いやすいわね」
「す、すみません……」
いきなり名前を出され、香澄はとっさに謝る。
だがすぐに「悪く言っているのではない」と理解し、「努力します」とアンネの目を見て言った。
「あと、麻衣さんに知っておいてほしいのだけれど。気にしていたらごめんなさい、と先に謝っておくわね」
佑の話では、アメリカ人などはまったく知らない者同士でも世間話をするそうだ。
と、それまで黙っていた佑がつけ加えた。
「アロクラはコミュニケーションの化け物に見えるが、仕事ではかなりクールにやってる。ただ、一般的なドイツ人より打ち解ける時間は短いかな」
不本意にも双子を褒めたのが面白かったのか、彼らはニヤニヤしている。
「あと、これは麻衣さんに知っておいてほしい。気にしているのなら失礼、と先に言っておくわね」
「は、はい」
改まって言われ、麻衣は少し背筋を伸ばす。
「私たちは人を外見……、体型や服装で判断しないわ。日本だとプラスサイズの女性がミニスカートを穿いていると、バカにされやすいでしょう? よく分からないけど、ロングスカートが流行しがちだし」
「……はい」
体型の事を言われていると理解し、麻衣は少し表情を強張らせて頷く。
「少なくとも私の周りには、他人の体型をバカにする人はいなかったわね。もしいたとしても、周りから冷たい目で見られるわ」
「はい」
「あと、北アジア人はブランド物に対する執着心が強いけど、機能性を重視するドイツ人とは少し価値観が合わないかもしれないわね」
「それも大丈夫です。特に興味がないので」
「それから、マティアスは日本の感覚に寄せているみたいだけど、基本的にドイツ人は『付き合おう』とか『結婚しよう』とか、告白してカップルになろうとしないわ」
言われて麻衣は、マティアスが相当努力している事に気づいたようだ。
麻衣が申し訳なさそうにマティアスを見ると、彼は微笑んで彼女を見つめ返す。
(マティアスさん、本気なんだなぁ)
香澄はそんな二人の様子を見て、ますます応援したくなる。
その時、マティアスが口を開いた。
「確かに日本的な考えに寄せているところはあるが、無理はしていない。マイは気にしなくていい」
そう言われ、麻衣は少し安心したように息をつく。
「まぁ、タンテの言うドイツ人の特徴は、ステレオタイプだね。それぞれ個性があるし、一概に〝ドイツ人は〟って大きい主語では言い切れないものがある」
クラウスが言い、マティアスを意味ありげに見る。
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