【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
1,179 / 1,559
第十八部・麻衣と年越し 編

親友に相談

しおりを挟む
 麻衣は一瞬ポカンとした顔をしていたが、「何か話があるんだな」と察したらしく、「あぁ、アレね」と立ち上がった。

「すみません。少し席を外しますね。すぐ戻ってきます」

 ペコリと会釈をしても、特に誰も何も言わず、会話に花を咲かせている。
 そのまま香澄はススス……とリビングダイニングを出て、玄関ホールにある靴を履くためのソファまで行った。

「アレってなに?」

 追いかけてきた麻衣が尋ねてくる。

「……いや。……ど、どうする? お年玉あんなにもらっちゃって……」

 そう言うと、麻衣は「あぁ」と何度か頷いた。

「香澄がもらった額、えぐいもんね」

 佑たちからもらったお年玉も、まだ中身を確認していない。
 それでも厚みが異常だ。

 学生時代まで親戚からお年玉をもらっていたとして、最高額は一万円だ。

 その一万円だって、働くようになってからどれぐらい価値があるか分かったつもりだ。

 正直、何万円、へたをすれば何十万、何百万のお金をポンともらっても、どうしたらいいか分からない。

 アドラーたちからの〝詫び金〟として口座に入った金も、怖くて口座を見ていなく、放ったらかしにしてある。

(あの人たち、日常的に巨額のお金を動かしているから、一般人が大金をもらった時の心情とか、多分考えられないんだろうなぁ……)

 頭が痛いと言わんばかりに両手で頭を抱える香澄に、麻衣が「どんまい」と声を掛ける。

「何かお礼できないかな……」

「でも正直、へたにお礼しようものなら、プライドを傷付けそうでない?」

 麻衣が言い、香澄は「あぁ……」と深く頷く。

 実の息子からのお年玉に対しても「恥」と言い切ったアンネは、心身共に自立した女性だ。

 他の人たちも、施す側の人間であって、施される人ではない。

「感謝の気持ち」や「お礼」でも、「そんなつもりじゃない」と言われそうだ。

 アンネや澪なら、怒らせてしまいかねない。

 節子は「お礼なんて考えなくてもいいのよ。強いて言うならひ孫を見せてちょうだい」と言いそうだし、アドラーに至っては「そんなに感謝してくれるなら、もっと何かしよう」と思いそうだ。

 第一にして、佑が佑だ。

 香澄の誕生日にあの度を超したプレゼントを用意した、金銭感覚のネジが三つほど外れている人を相手に、〝一般常識〟を当てはめるのが間違えている。

「……いや、金銭感覚がズレた人たちが親戚になるとしても、私は私の感覚を守りたい訳で……」

 ブツブツと呟く香澄は、不意に親友の顔を見る。

「麻衣は? 何かお礼を考えてる?」

「いやぁ……、正直、特に。お年玉のお礼って何か変でしょ。とりあえず御劔さんと残りの三人には、バレンタインに感謝のメッセージとチョコをあげるぐらいは考えてるよ。勿論あれだけの金額だから、デパートで売ってる何千円もする奴」

「な、なるほど」

 その案もあったか、と香澄は頷く。

「それにさ、〝感謝の気持ち〟を伝えたなら、しつこく〝お礼〟をしなくていいんじゃないかな?」

「そっかな……」

「だって、申し訳なさそうにしてると、向こうだって嫌な気分になるんじゃない? 『軽い気持ちであげたのに、困らせちゃった』って。せっかくいい気分でお年玉やプレゼントをくれたのに、逆に悪いじゃん」

「そうだね」

 いつも香澄が恐縮しまくっている問題を、麻衣はすんなりと受け止めている。

「そりゃお年玉もクリスマスプレゼントも、普通なら考えられない高額な物で驚いてる。でもあっちはそれが〝普通〟なんでしょ? 私たちが自分で買える贈り物をしたのと、同じ感覚なんだと思う」

「うん……」

「『贈り物をスマートに受け取ってくれると嬉しい』って言われてるんでしょ? 慣れるのは難しいかもだけど、御劔さんと結婚するなら、もっとドンと構えたほうがいいんじゃない?」

「そっか……。うん……」

 親友の意見は、焦りに焦っていた香澄の思考を落ち着かせてくれる。
 ふぅ、と息をつくと香澄はクシャッと笑った。

「麻衣って凄いね。私のほうが佑さんたちと一緒にいる時間が長いのに、麻衣のほうがずっと落ち着いてる」

「そう? 私は赤の他人だからかな。マティアスさんと付き合うって言っても、香澄みたいにChief Everyの社長と結婚したり、クラウザー社の会長と親戚になる訳じゃない。こうやって知り合いにはなれたけど、あくまで他人だから冷静でいられるんだと思う」

 彼女は落ち着いたままで、それも流石だ。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

忘れたとは言わせない。〜エリートドクターと再会したら、溺愛が始まりました〜

青花美来
恋愛
「……三年前、一緒に寝た間柄だろ?」 三年前のあの一夜のことは、もう過去のことのはずなのに。 一夜の過ちとして、もう忘れたはずなのに。 「忘れたとは言わせねぇぞ?」 偶然再会したら、心も身体も翻弄されてしまって。 「……今度こそ、逃がすつもりも離すつもりもねぇから」 その溺愛からは、もう逃れられない。 *第16回恋愛小説大賞奨励賞受賞しました*

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

処理中です...