【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

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第十八部・麻衣と年越し 編

お年玉

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(ん……? 何だろう?)

 そう思っていると、アドラーがスーツのポケットに手を入れ、『おとしだま』と達筆で書かれた祝儀袋を手渡してきた。

「えっ? ……えっ?」

 ずっしりとしたそれは、佑たちから渡された物より厚みがある。

「佑は受け取ってくれないから、香澄さんが受け取ってくれ。私もお年玉をあげたいんだ。頼む」

 コソコソと小声で言うアドラーの背中に、佑が低い声をかける。

「……オーパ。香澄に何をしている?」

「いや、何でもない。香澄さん、隠して」

 言葉の後半は香澄に向かって小声で言い、アドラーは香澄に背を向け時間を作ってからソファに戻って行く。
 が、香澄は自宅なのでバッグも何も持っておらず、大きな祝儀袋を隠す事もできない。

「…………お年玉か」

 焦りに焦った香澄の手にある物を見て佑が溜め息をつき、アドラーが「お年玉ぐらいいいだろう」と文句を言う。

「オーパはやっぱり僕たちのオーパだね。やる事が一緒!」

 クラウスがケタケタ笑い、コーヒーに口を付ける。

「あんた達もあげたの? 私からもあるわ。香澄さん、いらっしゃい」

 ソファに座って脚を組んだまま、アンネが香澄を呼びつけた。
 彼女の手にはやはりポチ袋があり、香澄はどうしたらいいか分からないまま、その場でウロウロしだす。

 そんな彼女を、麻衣が気の毒そうに見ている。

「ちょっと待ってくれ。香澄が困っているだろう。今日、香澄にお年玉を持って来た人は他にいるのか?」

 佑が自分の事を棚に上げて溜め息をつき、挙手を募る。

 その質問に対して手を上げたのは、衛、律、翔だ。

(んううううううっっ!!)

 香澄は内心うなり声を上げる。
 節子は手を上げていないので、まだ救いがある。

「私は多すぎる現金は困るだろうから、お年玉は持って来ていないわ」

(良かった……)

 ホッとした時、節子が「香澄さん、ちょっと来て?」と手招きをした。

「な、何でしょう?」

 香澄はトコトコと節子に近付く。
 すると、彼女は着物をリメイクしたバッグから、小箱を取りだして香澄に渡してくる。

「え……と」

「開けてみて?」

 言われるがままに藤色のリボンがかかった黒い箱を開けると、中からビロードのアクセサリーケースが出てきた。

(うっ……)

 恐る恐る開けてみると、中から親指の爪ほどはあるのではという、ダイヤモンドのペンダントが出てきた。

「私が若い頃につけていた物なんだけれど、受け取って頂戴。今の私がつけるには派手すぎるから、若い人につけてほしいの。新しく買った物じゃないから、気にしないでね」

(そういう問題じゃありませーーーーん!!)

 心の中で盛大に突っ込むも、節子相手に口に出せる訳がない。

 目をまん丸にして物言いたげにしている香澄を見て、佑は溜め息をつき、麻衣はダイヤモンドの巨大さに固まっている。

 マティアスが我関せずどら焼きをつつき、双子がケラケラ笑っているのはいつもの事だ。

「もし他の石が好きだったらいつでも言ってね? 私のお古で良ければ、色々あるから。お古って言っても、宝石は昔の物のほうが質がいい場合もあるのよ」

「あぁ、うぅ、はい……」

 香澄は不明瞭な返事をしながら、以前にアンネたちから聞いた、若い頃の節子の武勇伝(?)を思いだした。

 節子を女神のように崇拝し、「何があっても貴女の事は恨みません」と言って、一方的に貢ぎ物をする信者のような男性が多くいたそうだ。

 その結果、彼女の手元には宝石店でも開けそうなほどのアクセサリーが、いまだ多くあるとか。

「香澄さん、はい」

 アンネに呼ばれてハッとそちらを見ると、彼女がポチ袋を差し出している。

「あ……、ありがとうございます……」

 受け取ったポチ袋は、確かに厚みがある。

「はい、香澄さん。僕からも」

 衛に手渡されたポチ袋は一般的な厚みで、ホッと胸を撫で下ろした。

 とはいえ、好意の表れであるお年玉を受け取っておいて、その手触りで中身を判断して何らかの感情を持ってしまう自分が情けない。










 ※ すみません、ムーンさんアルファさん共通で、『やる後悔より、やらない後悔』のあとに入る一話を抜かしてしまっていました。『合法で金を渡していい日』の前に『あけましておめでとう』が入りました。宜しくお願い致します。
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