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第十八部・麻衣と年越し 編
元旦の訪問
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「上がらせてもらってもいいかしら?」
「は、はい! 勿論です!」
その時、節子の声を聞いて双子が顔を覗かせた。
「あー! オーパ! オーマ!」
「オンケルとタンテも!」
双子はまずアドラーと節子とハグをし、「Frohes neues Jahr! Gut Gerutscht?」と挨拶をする。
(ん?)
ドイツ語の挨拶を聞いて、香澄は首を傾げた。
佑に尋ねようとしたが、彼は家族の相手をしていたので、遅れて現れたマティアスに尋ねた。
「今の挨拶、『あけましておめでとう』は分かるんですが、そのあとの『よく滑った?』って何ですか?」
「ああ、日本風に訳すると、『スムーズに何事もなく過ごしたか?』という意味になる。年末に『Gut Gerutscht』と別れ際に挨拶をする事も多い」
「はぁ……。『良いお年を』的な意味でしょうか」
「恐らく」
「やだ、マティアスもいたの?」
アンネが言い、マティアスは軽く会釈をする。
彼女は物言いたげな目で香澄とマティアスを見比べたが、大きな溜め息をついてから「まぁいいわ」と言った。
「お邪魔するわよ」
そう言うと、残り七人もどやどやと上がってきた。
(はっ、麻衣!)
香澄はリビングから恐る恐る覗いている親友に気付き、ササッとアンネの前に立つ。
「あ、あの! 今回は札幌から私の親友も来ているんです。岩本麻衣さんです。とってもいい子なので、どうぞ宜しくお願いします」
そう言って香澄が両手でサッと麻衣を示すと、彼女がおずおずと姿を現す。
「い、岩本麻衣です。初めまして。あけましておめでとうございます」
ぺこりと頭を下げた麻衣は、気の強そうな美魔女に美女たち、いかにも金持ちっぽい風貌の彼らに怯えていた。
が、それでもまっすぐに彼らの目を見て挨拶する。
「……ふぅん。お客さんがいたのね。私は御劔アンネ。宜しくね、お嬢さん」
美魔女は惚れ惚れするような微笑みを浮かべ、「香澄さん、コーヒーが飲みたいわ。ブラックね」とコートを脱ぎながらソファに向かった。
「は、はい!」
香澄は慌ててキッチンに駆け込み、正月ボケがシャキッと目覚めた心地で、コーヒーの準備を始めた。
「おじゃましまーす」
「まーす」
澪と翔は相変わらず自由な雰囲気だ。
翔に至っては双子とダンスを踊ったあとからの、「えいえいえいえいえい」と高速ハンドシェイクをしている。
キッチンで働く香澄のもとに、麻衣が避難してきた。
「……ねぇ、香澄。〝あれ〟がお義母さんになるの? それで〝あれ〟が義兄と義妹?」
彼女は隣でボソッと言う。
「う、うん。第一印象は強烈だけど、いい人たちだよ?」
「……ならいいんだけど。御劔さんと雰囲気が似てなくてびっくりしちゃった。美形なのは同じだけど……」
「あはは、最初はそう思うよね」
香澄はお湯を沸かす準備を始めたあと、冷凍庫からコーヒー豆を出して新しく挽いていく。
「ちょっと、紹介してくれる? あとから自己紹介はあると思うけど」
麻衣にコソコソと言われ、香澄は客人を紹介していく。
「老紳士はクラウザー社の会長さんのアドラーさん。着物姿のご夫人が、タケモトのお嬢様で、奥さんの節子さん」
「ひっ……」
高級車の代名詞であるクラウザーと、日本車の代表格の名前が出て、麻衣は息を呑む。
「優しそうな雰囲気の男性が長男の律さん。クラウザージャパンの社長さん。活発そうな雰囲気の男性が、佑さんの弟の翔さん。こちらもクラウザージャパンの役員さん」
「ウウ……」
麻衣がうなるのを聞いて、香澄は「分かる……。そうなるよね……」と深く同情した。
「モデルさんみたいな女性が、佑さんの妹の澪さん。『美人堂』で社員をしてるよ」
「あぁ~、綺麗だもんね……」
こちらも日本の化粧品会社として有名な会社名を聞き、麻衣は納得した声を出す。
「おっとりした雰囲気の女性が、律さんの奥さんの、陽菜さん。もともとは看護師さんだったみたいだけど、今はクラウザージャパンで手伝いをしているみたい」
「おおお……」
あの中では普通っぽいと思えた陽菜もかなりのステータスを持っていて、麻衣はまたうなる。
「は、はい! 勿論です!」
その時、節子の声を聞いて双子が顔を覗かせた。
「あー! オーパ! オーマ!」
「オンケルとタンテも!」
双子はまずアドラーと節子とハグをし、「Frohes neues Jahr! Gut Gerutscht?」と挨拶をする。
(ん?)
ドイツ語の挨拶を聞いて、香澄は首を傾げた。
佑に尋ねようとしたが、彼は家族の相手をしていたので、遅れて現れたマティアスに尋ねた。
「今の挨拶、『あけましておめでとう』は分かるんですが、そのあとの『よく滑った?』って何ですか?」
「ああ、日本風に訳すると、『スムーズに何事もなく過ごしたか?』という意味になる。年末に『Gut Gerutscht』と別れ際に挨拶をする事も多い」
「はぁ……。『良いお年を』的な意味でしょうか」
「恐らく」
「やだ、マティアスもいたの?」
アンネが言い、マティアスは軽く会釈をする。
彼女は物言いたげな目で香澄とマティアスを見比べたが、大きな溜め息をついてから「まぁいいわ」と言った。
「お邪魔するわよ」
そう言うと、残り七人もどやどやと上がってきた。
(はっ、麻衣!)
香澄はリビングから恐る恐る覗いている親友に気付き、ササッとアンネの前に立つ。
「あ、あの! 今回は札幌から私の親友も来ているんです。岩本麻衣さんです。とってもいい子なので、どうぞ宜しくお願いします」
そう言って香澄が両手でサッと麻衣を示すと、彼女がおずおずと姿を現す。
「い、岩本麻衣です。初めまして。あけましておめでとうございます」
ぺこりと頭を下げた麻衣は、気の強そうな美魔女に美女たち、いかにも金持ちっぽい風貌の彼らに怯えていた。
が、それでもまっすぐに彼らの目を見て挨拶する。
「……ふぅん。お客さんがいたのね。私は御劔アンネ。宜しくね、お嬢さん」
美魔女は惚れ惚れするような微笑みを浮かべ、「香澄さん、コーヒーが飲みたいわ。ブラックね」とコートを脱ぎながらソファに向かった。
「は、はい!」
香澄は慌ててキッチンに駆け込み、正月ボケがシャキッと目覚めた心地で、コーヒーの準備を始めた。
「おじゃましまーす」
「まーす」
澪と翔は相変わらず自由な雰囲気だ。
翔に至っては双子とダンスを踊ったあとからの、「えいえいえいえいえい」と高速ハンドシェイクをしている。
キッチンで働く香澄のもとに、麻衣が避難してきた。
「……ねぇ、香澄。〝あれ〟がお義母さんになるの? それで〝あれ〟が義兄と義妹?」
彼女は隣でボソッと言う。
「う、うん。第一印象は強烈だけど、いい人たちだよ?」
「……ならいいんだけど。御劔さんと雰囲気が似てなくてびっくりしちゃった。美形なのは同じだけど……」
「あはは、最初はそう思うよね」
香澄はお湯を沸かす準備を始めたあと、冷凍庫からコーヒー豆を出して新しく挽いていく。
「ちょっと、紹介してくれる? あとから自己紹介はあると思うけど」
麻衣にコソコソと言われ、香澄は客人を紹介していく。
「老紳士はクラウザー社の会長さんのアドラーさん。着物姿のご夫人が、タケモトのお嬢様で、奥さんの節子さん」
「ひっ……」
高級車の代名詞であるクラウザーと、日本車の代表格の名前が出て、麻衣は息を呑む。
「優しそうな雰囲気の男性が長男の律さん。クラウザージャパンの社長さん。活発そうな雰囲気の男性が、佑さんの弟の翔さん。こちらもクラウザージャパンの役員さん」
「ウウ……」
麻衣がうなるのを聞いて、香澄は「分かる……。そうなるよね……」と深く同情した。
「モデルさんみたいな女性が、佑さんの妹の澪さん。『美人堂』で社員をしてるよ」
「あぁ~、綺麗だもんね……」
こちらも日本の化粧品会社として有名な会社名を聞き、麻衣は納得した声を出す。
「おっとりした雰囲気の女性が、律さんの奥さんの、陽菜さん。もともとは看護師さんだったみたいだけど、今はクラウザージャパンで手伝いをしているみたい」
「おおお……」
あの中では普通っぽいと思えた陽菜もかなりのステータスを持っていて、麻衣はまたうなる。
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