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第十八部・麻衣と年越し 編
やらない後悔より、やってからの後悔
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「気持ち良かった?」
「ん……っ、――――ん」
「もう唇を開けてもいいよ」
そう言って佑は香澄の唇に指を這わせ、そのあわいに指を差し込んできた。
「ん……、ぁ」
口の中に指を入れられ、舌を撫でられる。
たったそれだけの事なのに、絶頂したあとの体は鋭敏に快楽を拾い、ゾクゾクと体を震わせる。
唾液を嚥下した香澄は、佑の指を咥える。
彼は香澄の口内をぐちゅっと掻き混ぜたあと、指を引き抜いた。
「俺は偉いから、あと一週間弱ぐらい待てるからな」
佑ははね除けた羽根布団を被り直し、後ろから香澄を抱き締めて囁く。
「その代わり、全員帰ったらすぐ抱く」
「っ…………」
宣言され、香澄はジワッ……と赤面した。
胸の高鳴りがバレないか焦ったあまり、さらにドギマギする。
恥ずかしいのを誤魔化すため、香澄は言葉で抵抗した。
「た、……佑さんは、性欲が強すぎると思います」
「香澄もだよな? 嫌なら『嫌』って言えばいいのに、結局流されて達きまくってる」
意地悪を言われ、香澄はムッとして寝返りを打つと、佑の腕をギュッと抱く。
「知らない。手を出してきたのは佑さんのくせに」
「出したよ? こんな美味しそうなうさぎが目の前にいて、手を出さないほうがどうかしてる」
佑は楽しそうに微笑む。
香澄を愛する事をためらわない彼に、何を言っても通じない。
敗北を感じた香澄は、「うー……」と小さくうなる。
「抱き締めさせて」
言われておずおずと彼の腕を解放すると、むぎゅっと抱き締められた。
両手で背中やお尻を撫でられ、首元ですーはーと匂いを嗅がれる。
「いい匂いで手触りがよくて、撫でたら可愛い声で鳴く。最高の生き物だなぁ」
佑はしみじみと言ってから、香澄の頬にちゅっちゅっとキスをし、頭を撫でてまたキスをする。
「あぁ、今年一年、香澄と一緒にいられて良かった」
心底というふうに言われ、一年前を思いだす。
十一月に彼と出会って、一月には東京に越した。
不安は今より大きく、今ほどべったりではなく、少し他人行儀だった。
寝室はそれぞれ別だったので、当たり前にお互いの部屋で寝ていたし、今のように同じベッドで寝て当然という感覚ではなかった。
事故に遭って夏には大変な思いをして、怒濤の一年を終えた。
「一年、あっという間だったね」
「そうだな。香澄といると毎日が楽しくて、あっという間だった」
楽しいだけでは済まされない時期もあったが、彼はあえてそこに触れなかった。
「腰の重い自分が、まさか東京で暮らすなんて思わなかった」
「札幌にいたかった?」
「んー、ちょっと違うかな。喰わず嫌いみたいな感じ。やってみないと分からないのに、『大変だから』って決めつけて動かないでいた。確かにあのまま札幌にいたら、精神的に安定した生活を送っていたと思う。そこそこ波のある毎日ながらも、今に比べると大きな喜びも障害もなかったんじゃないかな。それに、ここまで人を好きになる事もなかった」
彼女の言葉を聞き、佑は額にキスをしてくる。
香澄は彼に微笑みかけ、続きを口にした。
「先人が『やらない後悔より、やってからの後悔のほうがずっといい』って言っていたのが、やっと分かった気がする。本当は佑さんの手を取って後悔した事もあった。こんな目に遭いたくないって思う事もあった」
佑は黙ったまま、香澄を抱いた手で優しく背中を撫でた。
「でもどんな道を選んでも後悔はする。それに後悔した事だって、佑さんがいるだけで全部幸せに塗り替えられてしまうの。どんなつらい事があっても、佑さんが私の味方でいてくれて、側で愛してくれる。……これ以上の幸せはないよ」
「後悔した事もあった」と聞いて、佑は不安そうな顔をした。
だが香澄の言葉を最後まで聞いて、吐息をつきつつ微笑む。
そんな彼を励ますように、香澄は自分の決意を口にした。
「この手を取った以上、最後までお供します。必要としてくれる限り、必要としなくなっても側にいたい」
彼女の言葉を聞き、佑はクシャッと破顔した。
「必要としない時なんてないよ」
そして甘い声音で囁き、キスをして額と額をつける。
「あと半年で、俺のお嫁さんになってくれると思うと、嬉しくて堪らない」
「私も。苗字が御劔になれるの嬉しい。格好いいよね。みつるぎ、って」
そう言って香澄は指で空中に漢字を書いてみせる。
そんな彼女に、佑はポツンと昔話をした。
「小さい頃は難しくて自分の苗字が嫌いだったな」
「ん……っ、――――ん」
「もう唇を開けてもいいよ」
そう言って佑は香澄の唇に指を這わせ、そのあわいに指を差し込んできた。
「ん……、ぁ」
口の中に指を入れられ、舌を撫でられる。
たったそれだけの事なのに、絶頂したあとの体は鋭敏に快楽を拾い、ゾクゾクと体を震わせる。
唾液を嚥下した香澄は、佑の指を咥える。
彼は香澄の口内をぐちゅっと掻き混ぜたあと、指を引き抜いた。
「俺は偉いから、あと一週間弱ぐらい待てるからな」
佑ははね除けた羽根布団を被り直し、後ろから香澄を抱き締めて囁く。
「その代わり、全員帰ったらすぐ抱く」
「っ…………」
宣言され、香澄はジワッ……と赤面した。
胸の高鳴りがバレないか焦ったあまり、さらにドギマギする。
恥ずかしいのを誤魔化すため、香澄は言葉で抵抗した。
「た、……佑さんは、性欲が強すぎると思います」
「香澄もだよな? 嫌なら『嫌』って言えばいいのに、結局流されて達きまくってる」
意地悪を言われ、香澄はムッとして寝返りを打つと、佑の腕をギュッと抱く。
「知らない。手を出してきたのは佑さんのくせに」
「出したよ? こんな美味しそうなうさぎが目の前にいて、手を出さないほうがどうかしてる」
佑は楽しそうに微笑む。
香澄を愛する事をためらわない彼に、何を言っても通じない。
敗北を感じた香澄は、「うー……」と小さくうなる。
「抱き締めさせて」
言われておずおずと彼の腕を解放すると、むぎゅっと抱き締められた。
両手で背中やお尻を撫でられ、首元ですーはーと匂いを嗅がれる。
「いい匂いで手触りがよくて、撫でたら可愛い声で鳴く。最高の生き物だなぁ」
佑はしみじみと言ってから、香澄の頬にちゅっちゅっとキスをし、頭を撫でてまたキスをする。
「あぁ、今年一年、香澄と一緒にいられて良かった」
心底というふうに言われ、一年前を思いだす。
十一月に彼と出会って、一月には東京に越した。
不安は今より大きく、今ほどべったりではなく、少し他人行儀だった。
寝室はそれぞれ別だったので、当たり前にお互いの部屋で寝ていたし、今のように同じベッドで寝て当然という感覚ではなかった。
事故に遭って夏には大変な思いをして、怒濤の一年を終えた。
「一年、あっという間だったね」
「そうだな。香澄といると毎日が楽しくて、あっという間だった」
楽しいだけでは済まされない時期もあったが、彼はあえてそこに触れなかった。
「腰の重い自分が、まさか東京で暮らすなんて思わなかった」
「札幌にいたかった?」
「んー、ちょっと違うかな。喰わず嫌いみたいな感じ。やってみないと分からないのに、『大変だから』って決めつけて動かないでいた。確かにあのまま札幌にいたら、精神的に安定した生活を送っていたと思う。そこそこ波のある毎日ながらも、今に比べると大きな喜びも障害もなかったんじゃないかな。それに、ここまで人を好きになる事もなかった」
彼女の言葉を聞き、佑は額にキスをしてくる。
香澄は彼に微笑みかけ、続きを口にした。
「先人が『やらない後悔より、やってからの後悔のほうがずっといい』って言っていたのが、やっと分かった気がする。本当は佑さんの手を取って後悔した事もあった。こんな目に遭いたくないって思う事もあった」
佑は黙ったまま、香澄を抱いた手で優しく背中を撫でた。
「でもどんな道を選んでも後悔はする。それに後悔した事だって、佑さんがいるだけで全部幸せに塗り替えられてしまうの。どんなつらい事があっても、佑さんが私の味方でいてくれて、側で愛してくれる。……これ以上の幸せはないよ」
「後悔した事もあった」と聞いて、佑は不安そうな顔をした。
だが香澄の言葉を最後まで聞いて、吐息をつきつつ微笑む。
そんな彼を励ますように、香澄は自分の決意を口にした。
「この手を取った以上、最後までお供します。必要としてくれる限り、必要としなくなっても側にいたい」
彼女の言葉を聞き、佑はクシャッと破顔した。
「必要としない時なんてないよ」
そして甘い声音で囁き、キスをして額と額をつける。
「あと半年で、俺のお嫁さんになってくれると思うと、嬉しくて堪らない」
「私も。苗字が御劔になれるの嬉しい。格好いいよね。みつるぎ、って」
そう言って香澄は指で空中に漢字を書いてみせる。
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「小さい頃は難しくて自分の苗字が嫌いだったな」
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