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第十八部・麻衣と年越し 編
百合と薔薇
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茹でられたタラバガニに、佑が絶妙な火加減で焼いてくれたA5ランクの高級ステーキ。ローストビーフに高級寿司、斎藤が作ってくれたオードブルやサラダ。
ご馳走と言えば思い浮かぶ物がすべて並び、香澄は幸せな心地でそれらを食べていた。
双子たちは佑が解禁したとっておきのワインを堪能し、香澄も彼がこの日のために選んでおいてくれた、甘くて飲みやすい白ワインを飲んでいた。
麻衣は「ワインよりビールのほうが馴染みがある」と言って、近所のコンビニで買ってきた缶ビールを手酌し、マティアスは色々飲んでいる。
満腹になるまで食べたあと、全員で片付けをして、残った物は保存容器に入れる。
片付けは双子が「僕らは準備の時に、役に立ってなかったからやるね!」と引き受けてくれた。
その後、年越し蕎麦を食べ、真夜中すぎまでテレビを見て笑い転げる。
「そうだ! そう言えば明けましておめでとう! 麻衣」
「おめでとう! 香澄」
ダラダラと酒だけは飲み続けていた香澄は、麻衣に抱きついてちゅーっと頬にキスをする。
麻衣も同じように香澄の頬にちゅーっとキスをし、それを男四人が目を剥いて見ていた。
「……タスク、ドンマイ」
「女の子なだけ、見逃してやんなよ」
目を見開いたまま固まっている佑を、双子が慰める。
「おい、マティアス。物欲しそうな目をすんな」
「お前、本気になると目がバキバキになって怖いんだって」
マティアスも似た状態らしく、双子に突っ込まれていた。
「はぁ……。香澄、テレビが終わったから、そろそろ初詣に行く準備をするよ」
溜め息をついた佑が、疲れたように言う。
「はぁーい!」
香澄は陽気に返事をして、メイクするために席を立つ。
「麻衣、いこー」
「んー」
連れだってリビングから出て行く女性二人を見て、佑は溜め息をついて笑う。
それから「よし」と膝を叩き、自分も立った。
「アロ、クラ。ちょっと手伝ってくれないか?」
「ん? なに?」
佑は基本的に双子に頼み事をしないため、二人はキョトンとして目を瞬かせた。
**
「ええええええ……」
「わあああああ……」
香澄と麻衣は、鏡に映った自分を見て呆けた声を上げている。
というのも、準備をしようと部屋であれこれしていた時、佑に呼ばれたのだ。
和室に行くと桐箱が置かれてあり、「開けてみて」と言われる。
こわごわと開けると、中には振り袖が入っていた。
ほろ酔い気分が抜けて眠気も吹っ飛んだ香澄の隣で、同じように麻衣も硬直していた。
あばあばと言葉を出せずにいる二人に、佑は「用意したから、着てほしいな」と言い、そこまでされると着ざるを得ない。
肌襦袢、長襦袢を自分で着たあと、双子をアシスタントにした佑にきっちり着付けられる。
香澄はピンクの半襟に黒地に白い百合柄の着物。
帯揚げは白と黒の縞で、赤い帯も相まってモダンだ。
麻衣は紅白のストライプ地に紺色のバラ柄だ。帯はシックな茶系で、帯揚げの所にバラのコサージュがついている。
「み、御劔さん。あ、ああああ、ありがとうございます……!」
「わざわざ来てくれて、香澄を喜ばせてくれるんだから、思い出に残る元旦にしなきゃと思っただけだから、そんなに気にしないで」
「基本的に香澄のためなんですね。ブレない!」
わはは、と麻衣は笑い、頬をほんのり染めてもう一度鏡を見る。
「着物が汚れないようにケープしなよ。僕らがメイクしてあげる」
クラウスに言われ、二人ともキョトンと目を瞬かせる。
「いいんですか?」
「マイはカスミと顔立ちが違うから、メイクのしがいがあるね。楽しそう」
佑が何か言いたげな表情をするが、双子はシッシッと手で追い払う。
「どーせお前の事だから、自分の着物も用意してるんだろ。こっちはこっちで準備進めてるから、お前も着てこいよ」
「……分かった」
佑は溜め息をつき、大人しく去っていく。
場所は二階のリビングだったが、メイク道具がごっそりあるからという理由で、香澄の部屋に移動した。
椅子を持って来て麻衣と並んで座り、美容室のようなケープを掛けられる。
ご馳走と言えば思い浮かぶ物がすべて並び、香澄は幸せな心地でそれらを食べていた。
双子たちは佑が解禁したとっておきのワインを堪能し、香澄も彼がこの日のために選んでおいてくれた、甘くて飲みやすい白ワインを飲んでいた。
麻衣は「ワインよりビールのほうが馴染みがある」と言って、近所のコンビニで買ってきた缶ビールを手酌し、マティアスは色々飲んでいる。
満腹になるまで食べたあと、全員で片付けをして、残った物は保存容器に入れる。
片付けは双子が「僕らは準備の時に、役に立ってなかったからやるね!」と引き受けてくれた。
その後、年越し蕎麦を食べ、真夜中すぎまでテレビを見て笑い転げる。
「そうだ! そう言えば明けましておめでとう! 麻衣」
「おめでとう! 香澄」
ダラダラと酒だけは飲み続けていた香澄は、麻衣に抱きついてちゅーっと頬にキスをする。
麻衣も同じように香澄の頬にちゅーっとキスをし、それを男四人が目を剥いて見ていた。
「……タスク、ドンマイ」
「女の子なだけ、見逃してやんなよ」
目を見開いたまま固まっている佑を、双子が慰める。
「おい、マティアス。物欲しそうな目をすんな」
「お前、本気になると目がバキバキになって怖いんだって」
マティアスも似た状態らしく、双子に突っ込まれていた。
「はぁ……。香澄、テレビが終わったから、そろそろ初詣に行く準備をするよ」
溜め息をついた佑が、疲れたように言う。
「はぁーい!」
香澄は陽気に返事をして、メイクするために席を立つ。
「麻衣、いこー」
「んー」
連れだってリビングから出て行く女性二人を見て、佑は溜め息をついて笑う。
それから「よし」と膝を叩き、自分も立った。
「アロ、クラ。ちょっと手伝ってくれないか?」
「ん? なに?」
佑は基本的に双子に頼み事をしないため、二人はキョトンとして目を瞬かせた。
**
「ええええええ……」
「わあああああ……」
香澄と麻衣は、鏡に映った自分を見て呆けた声を上げている。
というのも、準備をしようと部屋であれこれしていた時、佑に呼ばれたのだ。
和室に行くと桐箱が置かれてあり、「開けてみて」と言われる。
こわごわと開けると、中には振り袖が入っていた。
ほろ酔い気分が抜けて眠気も吹っ飛んだ香澄の隣で、同じように麻衣も硬直していた。
あばあばと言葉を出せずにいる二人に、佑は「用意したから、着てほしいな」と言い、そこまでされると着ざるを得ない。
肌襦袢、長襦袢を自分で着たあと、双子をアシスタントにした佑にきっちり着付けられる。
香澄はピンクの半襟に黒地に白い百合柄の着物。
帯揚げは白と黒の縞で、赤い帯も相まってモダンだ。
麻衣は紅白のストライプ地に紺色のバラ柄だ。帯はシックな茶系で、帯揚げの所にバラのコサージュがついている。
「み、御劔さん。あ、ああああ、ありがとうございます……!」
「わざわざ来てくれて、香澄を喜ばせてくれるんだから、思い出に残る元旦にしなきゃと思っただけだから、そんなに気にしないで」
「基本的に香澄のためなんですね。ブレない!」
わはは、と麻衣は笑い、頬をほんのり染めてもう一度鏡を見る。
「着物が汚れないようにケープしなよ。僕らがメイクしてあげる」
クラウスに言われ、二人ともキョトンと目を瞬かせる。
「いいんですか?」
「マイはカスミと顔立ちが違うから、メイクのしがいがあるね。楽しそう」
佑が何か言いたげな表情をするが、双子はシッシッと手で追い払う。
「どーせお前の事だから、自分の着物も用意してるんだろ。こっちはこっちで準備進めてるから、お前も着てこいよ」
「……分かった」
佑は溜め息をつき、大人しく去っていく。
場所は二階のリビングだったが、メイク道具がごっそりあるからという理由で、香澄の部屋に移動した。
椅子を持って来て麻衣と並んで座り、美容室のようなケープを掛けられる。
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