1,162 / 1,549
第十八部・麻衣と年越し 編
百合と薔薇
しおりを挟む
茹でられたタラバガニに、佑が絶妙な火加減で焼いてくれたA5ランクの高級ステーキ。ローストビーフに高級寿司、斎藤が作ってくれたオードブルやサラダ。
ご馳走と言えば思い浮かぶ物がすべて並び、香澄は幸せな心地でそれらを食べていた。
双子たちは佑が解禁したとっておきのワインを堪能し、香澄も彼がこの日のために選んでおいてくれた、甘くて飲みやすい白ワインを飲んでいた。
麻衣は「ワインよりビールのほうが馴染みがある」と言って、近所のコンビニで買ってきた缶ビールを手酌し、マティアスは色々飲んでいる。
満腹になるまで食べたあと、全員で片付けをして、残った物は保存容器に入れる。
片付けは双子が「僕らは準備の時に、役に立ってなかったからやるね!」と引き受けてくれた。
その後、年越し蕎麦を食べ、真夜中すぎまでテレビを見て笑い転げる。
「そうだ! そう言えば明けましておめでとう! 麻衣」
「おめでとう! 香澄」
ダラダラと酒だけは飲み続けていた香澄は、麻衣に抱きついてちゅーっと頬にキスをする。
麻衣も同じように香澄の頬にちゅーっとキスをし、それを男四人が目を剥いて見ていた。
「……タスク、ドンマイ」
「女の子なだけ、見逃してやんなよ」
目を見開いたまま固まっている佑を、双子が慰める。
「おい、マティアス。物欲しそうな目をすんな」
「お前、本気になると目がバキバキになって怖いんだって」
マティアスも似た状態らしく、双子に突っ込まれていた。
「はぁ……。香澄、テレビが終わったから、そろそろ初詣に行く準備をするよ」
溜め息をついた佑が、疲れたように言う。
「はぁーい!」
香澄は陽気に返事をして、メイクするために席を立つ。
「麻衣、いこー」
「んー」
連れだってリビングから出て行く女性二人を見て、佑は溜め息をついて笑う。
それから「よし」と膝を叩き、自分も立った。
「アロ、クラ。ちょっと手伝ってくれないか?」
「ん? なに?」
佑は基本的に双子に頼み事をしないため、二人はキョトンとして目を瞬かせた。
**
「ええええええ……」
「わあああああ……」
香澄と麻衣は、鏡に映った自分を見て呆けた声を上げている。
というのも、準備をしようと部屋であれこれしていた時、佑に呼ばれたのだ。
和室に行くと桐箱が置かれてあり、「開けてみて」と言われる。
こわごわと開けると、中には振り袖が入っていた。
ほろ酔い気分が抜けて眠気も吹っ飛んだ香澄の隣で、同じように麻衣も硬直していた。
あばあばと言葉を出せずにいる二人に、佑は「用意したから、着てほしいな」と言い、そこまでされると着ざるを得ない。
肌襦袢、長襦袢を自分で着たあと、双子をアシスタントにした佑にきっちり着付けられる。
香澄はピンクの半襟に黒地に白い百合柄の着物。
帯揚げは白と黒の縞で、赤い帯も相まってモダンだ。
麻衣は紅白のストライプ地に紺色のバラ柄だ。帯はシックな茶系で、帯揚げの所にバラのコサージュがついている。
「み、御劔さん。あ、ああああ、ありがとうございます……!」
「わざわざ来てくれて、香澄を喜ばせてくれるんだから、思い出に残る元旦にしなきゃと思っただけだから、そんなに気にしないで」
「基本的に香澄のためなんですね。ブレない!」
わはは、と麻衣は笑い、頬をほんのり染めてもう一度鏡を見る。
「着物が汚れないようにケープしなよ。僕らがメイクしてあげる」
クラウスに言われ、二人ともキョトンと目を瞬かせる。
「いいんですか?」
「マイはカスミと顔立ちが違うから、メイクのしがいがあるね。楽しそう」
佑が何か言いたげな表情をするが、双子はシッシッと手で追い払う。
「どーせお前の事だから、自分の着物も用意してるんだろ。こっちはこっちで準備進めてるから、お前も着てこいよ」
「……分かった」
佑は溜め息をつき、大人しく去っていく。
場所は二階のリビングだったが、メイク道具がごっそりあるからという理由で、香澄の部屋に移動した。
椅子を持って来て麻衣と並んで座り、美容室のようなケープを掛けられる。
ご馳走と言えば思い浮かぶ物がすべて並び、香澄は幸せな心地でそれらを食べていた。
双子たちは佑が解禁したとっておきのワインを堪能し、香澄も彼がこの日のために選んでおいてくれた、甘くて飲みやすい白ワインを飲んでいた。
麻衣は「ワインよりビールのほうが馴染みがある」と言って、近所のコンビニで買ってきた缶ビールを手酌し、マティアスは色々飲んでいる。
満腹になるまで食べたあと、全員で片付けをして、残った物は保存容器に入れる。
片付けは双子が「僕らは準備の時に、役に立ってなかったからやるね!」と引き受けてくれた。
その後、年越し蕎麦を食べ、真夜中すぎまでテレビを見て笑い転げる。
「そうだ! そう言えば明けましておめでとう! 麻衣」
「おめでとう! 香澄」
ダラダラと酒だけは飲み続けていた香澄は、麻衣に抱きついてちゅーっと頬にキスをする。
麻衣も同じように香澄の頬にちゅーっとキスをし、それを男四人が目を剥いて見ていた。
「……タスク、ドンマイ」
「女の子なだけ、見逃してやんなよ」
目を見開いたまま固まっている佑を、双子が慰める。
「おい、マティアス。物欲しそうな目をすんな」
「お前、本気になると目がバキバキになって怖いんだって」
マティアスも似た状態らしく、双子に突っ込まれていた。
「はぁ……。香澄、テレビが終わったから、そろそろ初詣に行く準備をするよ」
溜め息をついた佑が、疲れたように言う。
「はぁーい!」
香澄は陽気に返事をして、メイクするために席を立つ。
「麻衣、いこー」
「んー」
連れだってリビングから出て行く女性二人を見て、佑は溜め息をついて笑う。
それから「よし」と膝を叩き、自分も立った。
「アロ、クラ。ちょっと手伝ってくれないか?」
「ん? なに?」
佑は基本的に双子に頼み事をしないため、二人はキョトンとして目を瞬かせた。
**
「ええええええ……」
「わあああああ……」
香澄と麻衣は、鏡に映った自分を見て呆けた声を上げている。
というのも、準備をしようと部屋であれこれしていた時、佑に呼ばれたのだ。
和室に行くと桐箱が置かれてあり、「開けてみて」と言われる。
こわごわと開けると、中には振り袖が入っていた。
ほろ酔い気分が抜けて眠気も吹っ飛んだ香澄の隣で、同じように麻衣も硬直していた。
あばあばと言葉を出せずにいる二人に、佑は「用意したから、着てほしいな」と言い、そこまでされると着ざるを得ない。
肌襦袢、長襦袢を自分で着たあと、双子をアシスタントにした佑にきっちり着付けられる。
香澄はピンクの半襟に黒地に白い百合柄の着物。
帯揚げは白と黒の縞で、赤い帯も相まってモダンだ。
麻衣は紅白のストライプ地に紺色のバラ柄だ。帯はシックな茶系で、帯揚げの所にバラのコサージュがついている。
「み、御劔さん。あ、ああああ、ありがとうございます……!」
「わざわざ来てくれて、香澄を喜ばせてくれるんだから、思い出に残る元旦にしなきゃと思っただけだから、そんなに気にしないで」
「基本的に香澄のためなんですね。ブレない!」
わはは、と麻衣は笑い、頬をほんのり染めてもう一度鏡を見る。
「着物が汚れないようにケープしなよ。僕らがメイクしてあげる」
クラウスに言われ、二人ともキョトンと目を瞬かせる。
「いいんですか?」
「マイはカスミと顔立ちが違うから、メイクのしがいがあるね。楽しそう」
佑が何か言いたげな表情をするが、双子はシッシッと手で追い払う。
「どーせお前の事だから、自分の着物も用意してるんだろ。こっちはこっちで準備進めてるから、お前も着てこいよ」
「……分かった」
佑は溜め息をつき、大人しく去っていく。
場所は二階のリビングだったが、メイク道具がごっそりあるからという理由で、香澄の部屋に移動した。
椅子を持って来て麻衣と並んで座り、美容室のようなケープを掛けられる。
14
お気に入りに追加
2,546
あなたにおすすめの小説
『逃れられない淫らな三角関係』番外編 ヘルプラインを活用せよ!
臣桜
恋愛
『逃れられない淫らな三角関係』の番外編です。
やりとりのある特定の読者さまに向けた番外編(小冊子)です。
他にも色々あるのですが、差し障りのなさそうなものなので公開します。
(他の番外編は、リアルブランド名とかを出してしまっている配慮していないものなので、ここに載せるかは検討中)
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる