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第十八部・麻衣と年越し 編
中華ランチ
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「住めばいいじゃないですか。家ぐらいポーンと買えないんですか?」
煽るような麻衣の言葉を聞き、アロイスがぶーたれた。
「買ったよー。東京と大阪にマンション買ったでしょ? 札幌にも家買ったでしょ? 次は京都か沖縄か……って思ってる」
冗談で言ったのにすでに買ってあると知り、麻衣は目を丸くしている。
「でもさぁ。僕らの仕事って、服のデザインだけなら世界中どこでもできるけど、それをパタンナーに伝えて形にしていかなきゃなんないじゃん? その前にイメージ通りの生地とか探すでしょ? 刺繍とか手作業の物ってクソほど時間かかるし、それを細かく監修していかなきゃいけないわけ」
「ショーができればそれで終わりじゃなくて、世界中の店舗で売るための販売戦略、アシスタントデザイナーの育成、工場に送る仕様書作るでしょ? サンプル確認して販売価格の設定とか、まだ未発表だけどファッション以外のブランドを作るための、水面下の作業とか……」
「……日本で年越ししてる場合じゃないでしょう」
麻衣にボソッと突っ込まれ、双子は顔を見合わせて肩をすくめる。
「だって日本大好きだし、タスクをからか……タスクとカスミに会いに来たいしー」
「おい、クラウス。今ナチュラルに『からかいに』って言おうとしただろ」
「言ってないよー。ホラ、飲み物きたから乾杯しようよ」
テーブルの上にオーダーしたドリンクが並び、アロイスとクラウスがすぐさまワイングラスを掲げる。
「はい、乾杯!」
互いのグラスにグラスを合わせている時、香澄はハッとして隣の麻衣の目をしっかり見る。
「え? 何?」
「い、いいから! 乾杯の時は相手の目をしっかり見るの。ドイツ流!」
「はぁ……」
言われて麻衣は挨拶をする感じで全員の目を見たあと、ぐいーっとビールを呷る。
「おー! いい飲みっぷり!」
香澄もサンザシのサングリアをコクコクと飲んだあと、甘酸っぱい吐息をついて麻衣に耳打ちした。
「ドイツ式の乾杯ってね。相手の目をしっかり見ないと、向こう七年いいエッチができないんだって」
「ぶっっ!!」
二口目を飲もうとした麻衣が激しく噴き、香澄は「ごめんごめん」と慌てておしぼりで麻衣の口元を拭く。
「……マジ?」
「まじ」
目を丸くして赤面した麻衣に、香澄はこっくりと頷いてみせた。
テーブルには前菜の盛り合わせに、クラゲや冷菜、鴨肉などがある。
そのあとはプリプリの海老蒸し餃子に小龍包、フカヒレ入りスープが出たあと、特別注文したフカヒレの姿煮が出た。
「すごーい! 憧れてたんだよねぇ!」
麻衣が歓声を上げ、香澄も彼女と一緒に美しいフォルムを描いたフカヒレを記念撮影する。
そのあとは炒め物が続いたあと、北京ダックが出てまた女性陣のテンションが上がる。
最後は外はカリッ、中はジューシーに揚げた豚肉に、濃厚な黒酢あんかけをまぶした酢豚が出て、炒飯、デザートとなった。
デザートも特別扱いしてもらい、杏仁豆腐やマンゴープリン、燕の巣のココナツミルクなどを「うまい、うまい」と頂いた。
佑は「オーナーにお礼を言ってくる」と席を立ち、残り全員で温かいジャスミン茶をちびちびと頂く。
「カスミ、マイ、満足した?」
「はい! お腹一杯です」
「フカヒレや燕の巣とか食べたの、生まれて初めてです」
麻衣が初めてと言うので、食べ慣れている双子は興味津々で感想を尋ねる。
「どうだった? やっぱり『美味しい』って思った?」
「ん? うーん……。素直に言うと、味付けはとっても美味しいんですが、やっぱり珍味な扱いだけあって、食感が独特ですね。慣れていないのが一番大きい理由だと思いますが」
麻衣の意見に、香澄はホッとして同意する。
「やっぱりそうなるよね、私も。『美味しいなぁ』って思うけど、次に『フカヒレとステーキ、どっちが食べたい?』って言われたら、ステーキ選んじゃうかな」
勿論すべて美味しかったし、ご馳走だと思っている。
この店は素敵な高級店だし、奢ってくれる佑にも感謝している。
ただ、素直な感想としてフカヒレや燕の巣はどうだった? と聞かれると、こういう答えになってしまう。
「オッケー、カスミもマイも肉ね」
「そ、そうじゃなくてですね」
すぐ〝次〟に取り付けようとする双子に、香澄は呆れた声をだす。
「私は札幌帰りますから、次にいつ会えるか分かりませんけどね」
麻衣はにっこり笑い、双子のターゲットを香澄に向ける。
煽るような麻衣の言葉を聞き、アロイスがぶーたれた。
「買ったよー。東京と大阪にマンション買ったでしょ? 札幌にも家買ったでしょ? 次は京都か沖縄か……って思ってる」
冗談で言ったのにすでに買ってあると知り、麻衣は目を丸くしている。
「でもさぁ。僕らの仕事って、服のデザインだけなら世界中どこでもできるけど、それをパタンナーに伝えて形にしていかなきゃなんないじゃん? その前にイメージ通りの生地とか探すでしょ? 刺繍とか手作業の物ってクソほど時間かかるし、それを細かく監修していかなきゃいけないわけ」
「ショーができればそれで終わりじゃなくて、世界中の店舗で売るための販売戦略、アシスタントデザイナーの育成、工場に送る仕様書作るでしょ? サンプル確認して販売価格の設定とか、まだ未発表だけどファッション以外のブランドを作るための、水面下の作業とか……」
「……日本で年越ししてる場合じゃないでしょう」
麻衣にボソッと突っ込まれ、双子は顔を見合わせて肩をすくめる。
「だって日本大好きだし、タスクをからか……タスクとカスミに会いに来たいしー」
「おい、クラウス。今ナチュラルに『からかいに』って言おうとしただろ」
「言ってないよー。ホラ、飲み物きたから乾杯しようよ」
テーブルの上にオーダーしたドリンクが並び、アロイスとクラウスがすぐさまワイングラスを掲げる。
「はい、乾杯!」
互いのグラスにグラスを合わせている時、香澄はハッとして隣の麻衣の目をしっかり見る。
「え? 何?」
「い、いいから! 乾杯の時は相手の目をしっかり見るの。ドイツ流!」
「はぁ……」
言われて麻衣は挨拶をする感じで全員の目を見たあと、ぐいーっとビールを呷る。
「おー! いい飲みっぷり!」
香澄もサンザシのサングリアをコクコクと飲んだあと、甘酸っぱい吐息をついて麻衣に耳打ちした。
「ドイツ式の乾杯ってね。相手の目をしっかり見ないと、向こう七年いいエッチができないんだって」
「ぶっっ!!」
二口目を飲もうとした麻衣が激しく噴き、香澄は「ごめんごめん」と慌てておしぼりで麻衣の口元を拭く。
「……マジ?」
「まじ」
目を丸くして赤面した麻衣に、香澄はこっくりと頷いてみせた。
テーブルには前菜の盛り合わせに、クラゲや冷菜、鴨肉などがある。
そのあとはプリプリの海老蒸し餃子に小龍包、フカヒレ入りスープが出たあと、特別注文したフカヒレの姿煮が出た。
「すごーい! 憧れてたんだよねぇ!」
麻衣が歓声を上げ、香澄も彼女と一緒に美しいフォルムを描いたフカヒレを記念撮影する。
そのあとは炒め物が続いたあと、北京ダックが出てまた女性陣のテンションが上がる。
最後は外はカリッ、中はジューシーに揚げた豚肉に、濃厚な黒酢あんかけをまぶした酢豚が出て、炒飯、デザートとなった。
デザートも特別扱いしてもらい、杏仁豆腐やマンゴープリン、燕の巣のココナツミルクなどを「うまい、うまい」と頂いた。
佑は「オーナーにお礼を言ってくる」と席を立ち、残り全員で温かいジャスミン茶をちびちびと頂く。
「カスミ、マイ、満足した?」
「はい! お腹一杯です」
「フカヒレや燕の巣とか食べたの、生まれて初めてです」
麻衣が初めてと言うので、食べ慣れている双子は興味津々で感想を尋ねる。
「どうだった? やっぱり『美味しい』って思った?」
「ん? うーん……。素直に言うと、味付けはとっても美味しいんですが、やっぱり珍味な扱いだけあって、食感が独特ですね。慣れていないのが一番大きい理由だと思いますが」
麻衣の意見に、香澄はホッとして同意する。
「やっぱりそうなるよね、私も。『美味しいなぁ』って思うけど、次に『フカヒレとステーキ、どっちが食べたい?』って言われたら、ステーキ選んじゃうかな」
勿論すべて美味しかったし、ご馳走だと思っている。
この店は素敵な高級店だし、奢ってくれる佑にも感謝している。
ただ、素直な感想としてフカヒレや燕の巣はどうだった? と聞かれると、こういう答えになってしまう。
「オッケー、カスミもマイも肉ね」
「そ、そうじゃなくてですね」
すぐ〝次〟に取り付けようとする双子に、香澄は呆れた声をだす。
「私は札幌帰りますから、次にいつ会えるか分かりませんけどね」
麻衣はにっこり笑い、双子のターゲットを香澄に向ける。
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